◆Chapter 2-36 死者の行進 〈後編〉
※この話は、3分割した36話の終盤となります。
まだの方は下のリンクから先に前半部分をお楽しみ頂ければと思いますヾ(๑╹◡╹)ノ"
イェアメリスたちが帝国軍陣地で死者の行進と鉢合わせていたころ、縛めを解いたブラッキーとアルフレドは氷室からの脱出を決行しようとしていた。
その矢先、山賊を率いたローブ姿の男たちが大勢現れ、彼女たちは慌てて死体の山の中に再び身を潜める。現れた一団を率いているのは、他ならぬエランディルであった。
彼の部下だろうか。サルモールではないが、エランディルは死霊術師と思しき2人のローブ姿を伴っていた。ブラッキーとアルフレドは死体の山に混じって、死んだふりをしながら観察することにした。
「あのバカな皇帝どもに頭を下げるのは腹に据えかねたが、それもまた喜劇の一部としてみれば溜飲も下がるというもの。今頃連中は死の晩餐を楽しんでおろう」
死霊術師たちと愉し気に話す姿は邪悪そのもの。部下の術師はみな仮面をつけていて顔は見えない。彼らはスカイリム近隣の悪事に加担していたそれぞれ名のある魔導士たちであるが、名が知られている分、互いの利害が衝突する事もある。仮面はそこから生じる面倒ごとを嫌ったエランディルが、個性を消すために着けさせているものであった。
エランディルは精神的に不安定な男だとイェアメリスは言っていた。果たして死霊術師たちを束ねるだけの力があるのだろうか。とてもそうは思えなかったが、とにかく見極めなければならない。ブラッキーは観察を続けた。
「クフフ、それにしてもイェアメリス達は道化よな。今さらこのマーラの目の池に来たとて手遅れだというのに」
「誰でございますか、そのイェアメリスというのは」
配下が尋ねる。顔が見えない分、余計不気味だ。
「吾に盾突く不届きな女吸血鬼だ」
姉の名前が出て、ブラッキーとアルフレドは顔を見合わせた。
「あ奴が帝国軍に現れたのは予想外だった。捕縛されておったが用心しておくに越したことはない」
まさか姉の行き先を宿敵から聞くとは思わなかったが、先に帝国軍を訪れたのだろうか。しかし捕縛されたとは?
吸血鬼であることが騒ぎを引き起こしてしまったのだろうか。想像が発散しそうになる中、彼女はエランディルの話に集中しようと耳を澄ませた。
「もうこのあたりは帝国軍の支配地だ。本陣にイェアメリスが居たと言うことは、この場所に帝国軍が現れるのも時間の問題だろう」
一緒に来た山賊たちがザワザワし始める。彼らは頭であるグーンラウグにきり捨てられ、自活もできなくなったはぐれ者たちだった。帝国軍に捕まっても糧食の負担を減らすためにその場で処刑か、良くて鉱山での強制労働ぐらいが関の山だ。食わせて貰えるならば死霊術師であろうとついてゆくしかない。
「とはいえ、あの有り様では来たくても来れぬかもなぁ・・・帝国軍などついでに過ぎぬ。本番はこれから、頃合いだ!」
エランディルは氷室の踊り場に立つと、山賊たちに向き直る。そして演説するように口を開いた。「我が計画もいよいよ大詰め。諸君等には感謝している。これから最後の仕上げに入るが、その前に特別な報酬を与えよう」
「おお!」
期待する山賊たちにエランディルはひと呼吸待って続けた。
「よく働いてくれた諸君等は、列に並ぶ栄誉に浴することになる」
「列?」
「どういう事だ?」
口々に疑問を呈した山賊たちは、雇い主を問い詰めようとして自分の身体が動かないことに気が付いた。呪文によるマヒか・・・驚いてエランディルを見る。
「生きているマン(人間)も死んでいるマン(人間)も聞くがよい。これより貴様たちは変異を遂げ、浄化の先兵となるのだ。神の末裔たるアイレイドの吾に従い、この地を穢すノルドの象徴に火を放ち、滅ぼすのだ。既に先発の同志たちは位置について居る。すべからく諸君等も後を追い、彼らの力とならねばならぬ!」
何を言われているのか理解できずに、山賊たちの間に動揺が広がった。その様子を斜めに見ながらエランディルはひとり、悦に入った様に喉を鳴らした。
彼の手が玩んでいる杖、その先端を飾るドクロの口蓋が呼応する様にカタカタと鳴る。
仮面の死霊術師、カスタブ砦で彼の配下に加わった一人がそれを目にとめた。
「閣下、その杖は?」
「うむ、ナイトコーラー聖堂という寺院で、吾と紛らわしい名の司祭がおってな。その持ち物だ」
エランディルはおもちゃを見せびらかす子供のように、不気味な髑髏の付いた杖を掲げた。
「高貴なる"エル(el)"の文字を名に使うことが許されるのは吾ら純潔のアルトマーのみ。ダンマー如きが使って良いわけがない。・・・であるから粛清してきた。今は吾の物だ」
「は、はぁ・・・」
いささか面食らった様子の死霊術師に、エランディルは言った。
「名は大事だぞ。体を現す。そう・・・王族でもないのに”イェ(ye)”を名乗るイェアメリスなども許しがたい」
思い出したように彼は部下を見た。
「貴様は大丈夫であろうな?」
「は、はい。私は大丈夫です。バウラー(baw)ですから」
「バウラー、下賤の名か。・・・だがよい、出自に関わらず有能な者は有能だ。吾はそなたが役に立つことを知っている」
「恐縮にございます」
「この杖、司祭は堕落の髑髏とか呼んでおった。女神ヴァーミルナ由来の物であるから、後でゆっくりと効果検証をしようと思ってな。面白いぞ。折角だからこの場で片鱗を見せてやろう・・・」
そう言うとエランディルは山賊人足たちの前に立ち、一人ずつその目を覗き込みはじめた。
「んん~。君にするか」
そう言ってドクロの杖を女山賊にかざす。
「おおっ! これは・・・」
杖のドクロがが不気味に光ると、次の瞬間何もなかったところに人が出現した。
バウラーが驚くのも無理はない。なんとその山賊と全く同じ姿形をした女が現れたのだ。
召喚魔法などではない、そこにいる女山賊の全くのコピーであった。
エランディルも目を輝かせている。
「素晴らしい! アリノールの書庫で見た聖遺物(アーティファクト)その物ではないか。これを使いこなせと。まさに吾にふさわしい女神の贈り物よ!」
言うとエランディルは現れたコピーに短剣を渡した。
並ばされた人足たちは表情を引きつらせて逃げようとするが、金縛りに遭ったまま動けない。
無表情なコピーはイヤイヤする人足たちに歩み寄ると、機械的にその首を掻き切り始めた。
最初の犠牲者の首が、そして隣の男の首、そしてその隣も。命を奪われるという運命が順番に回ってくるのを待つことしか出来ない山賊の人足たちは、恐怖に引きつったまま為す術もなく死体の山に加わっていった。
飛び散る鮮血と悲鳴は五人分続き、最後に一人を残したところで、コピーは消え失せた。
「ふむ。意外と短いな。女神への供物が足りなかったか。まぁいい。これの研究は後だ、ノルド共を滅ぼしてからゆっくりと楽しもう」
エランディルは杖をしまうと、最後の一人にゆっくりと近づいた。
最後に残った男はエランディルにのぞき込まれると必死に目をそらそうとした。しかし麻痺のために動くことができない。
「いや済まない、待たせたね」
青い顔をしたアルトマーの目が不気味に輝くと、急に電気にでも当たったかのように男の体は一瞬ビクンと脈打ち、そして膝砕けになって崩れ落ちた。男は鼻から血を流して恐怖の表情を浮かべている。如何なる魔術を使ったのか、彼は触れずして男の心臓を握りつぶしたのだ。
入場してきた人間のほとんどが死に、残されたのは彼と2人の死霊術師だけとなった。
いや、死体の山に潜んだブラッキーたちも生きている。彼女たちはこのまま気付かれぬよう、それぞれの神に祈ることしか出来なかった。
姉はエランディルのことを魔術の達人だと言っていた。そして今は取り巻きの死霊術師たちもいる。こんな状態で見つかってはお終いだ。ブラッキー達は死体にまみれてより一層息をひそめるのだった。
「さぁ、これで準備は整った!」
「表の警備をさせているサマーセット・シャドウズは如何致しますか?」
側近バウラーが尋ねる。
「うむ、彼らは落ちぶれたとは言え我等が同胞アルトマーだ。分け隔てなくランドフォールを享受する権利がある。金品はもう充分渡してあるから取り敢えず契約は終了だとだけ伝えておけ」
そしてエランディルは告げた。
「バウラー。吾はこれから作戦の最終段階に入る。そして・・・これは本件とは関係ないが、貴様には作戦を離れ別の仕事を言いつける」頷く部下に青白いアルトマーは続けた。「いま帝国軍は混乱のさなかにある。そこでイェアメリスを捕らえよ。おそらく・・・本陣裏手の井戸の中で焼け死んでいるであろうが」
「死んでいる・・・のですか?」
「ああ、だから死霊術師である貴様を遣わすのだ。処置には長けていよう?」不安そうな部下に、青白いアルトマーは付け加えた「ああそうだ。死体で構わん。灰になっているかもしれぬので保存には気をつけよ。肉体で残っている部位や器官はそれ以上極力傷を付けぬように。回収出来たらイーストマーチの拠点まで連絡を寄越せ。その風体は・・・」
エランディルはその後、微に入り細にわたりイェアメリスの特徴を説明した。
「畏まりました」
「クク・・・イェアメリス。あやつを修復した剥製を愛でながら作戦完了の酒を味わうのはさぞ美味かろうなぁ・・・」
すべての山賊が死に絶えた氷室の中、エランディルの高笑いが反響する。
踊り場から降りたお付きの死霊術師が呪文を唱え始めると、10体ものスケルトンがその場に現れた。
「既に先発の同志たちは位置についてる。さぁ、第二陣の作業を始めよ。死者の行進と洒落込もうではないか!」
狂気のアルトマーの言葉を合図としたように、スケルトンは立ち上がると死体を一体ずつ引きずり出しはじめる。
そしてそれを氷室の奥にある荷車に黙々と載せ始めた。
(うえっ、なんだこれ!)
半年前ソリチュードの地下、東帝都社の地下蒸気室で見た光景。ブラッキーはヨキアムが行っていたテロ犠牲者の処理光景を思い出してしまった。
吐き気を催し思わずえづく音を立ててしまったが、死体が運ばれる音のほうがぐちゃぐちゃと響いており、それに紛れ気づかれずに済んだのはせめてもの幸運だった。
スケルトン達に作業指示を出し終わった死霊術師が一礼すると、エランディルは満足そうに頷いて歩き始める。
「ククク・・・死んだマンだけが良いマンだ。ハハハ・・・!」
そして配下の死霊術師を伴い、狂気のアルトマーは氷室の奥、何処に繋がるのか定かでない通路に姿を消していった。
しばらくして静寂の中、死体に潜っていた二人は這い出してきた。腐臭がきついが、今見てしまった光景が鮮烈すぎて、他の感覚が麻痺してしまっていた。
「もう戻ってこないよな?」
「う、うん。ずいぶん遠くまで行ったと、思う」
「この連中、動けないまま死んでいった。それに、複製みたいなのが殺して回っていたが・・・ブラッキー、お前の持ってる杖もすごいが、あれはいったい何なんだ?!」
「ボクに聞かないでよ!」
アルフレドは今見たことを何とか言葉にしようと口に出したが、理解の範囲を超えてる。それはブラッキーも同じであった。
「やばいやばいやばい・・・。あいつ、狂ってるよ!」
二人は新たに貯蔵庫に加わった山賊たちの成れの果てを見ながら、呆然と立ちすくんだ。自分たちを捕まえた方の山賊人足が、今は逆に足元に死体となって転がっている。頭を切り替えなくてはおかしくなってしまいそうだ。
「こいつらには気の毒だが、お陰で助かったな」
エランディルは山賊相手にアーティファクトを試すのに夢中で、潜んで様子を伺っている二人には気付かず行ってしまった。脱出途中ではち合っていたら、決して無事にはすまなかっただろう。
ブラッキーは青ざめた顔でアルフレドを見上げた。
「あいつ、ねぇちゃんが焼け死んでるって・・・」
「メリスちゃん吸血鬼だろ。そう簡単に死んだりは」
「でも、血飲んでなかったし・・・」そういうブラッキーは自分の声が震えていることに気がついた。寒さのせいではない。”すれ違う妹”という言葉が心の中に重くのしかかってくる。そんな言葉を自分に向かって言った存在を恨んでやりたかったが、少女はそれを誰に言われたのか覚えていなかった。
「また姉ちゃんとすれ違いを・・・今度は生死によって分かたれるなんて・・・」
思わず口に出してしまうと、アルフレドに叱られてしまう。
「まだそうと決まったわけじゃない!」
「でも・・・」
「あいつら、陣地のことを口にしてた」
アルフレドは実は内心ブラッキーと同じぐらい動揺していたが、それでも自分までパニックになってしまっては危険な状況になる。そう任じて鋼の精神力で冷静を装っていた。丸一日ここに潜んで得られた情報を淡々と羅列してゆく。
「本陣ってのは帝国軍しかない」
「ねぇちゃん何でまたそんなところに・・・」
「ウルフリックと帝国軍、両方に働きかけるって言ってたから。ここに来なかったということは、自ら向かったんだと思う」
「にいさんも、怖いの?」ここに入れられている間にイェアメリスがもう失われているかもしれないという恐怖。アルフレドも不安で語尾が震えている。
「馬鹿言うな、これは寒さのせいだ。茶化すなよ」
この傭兵はエリクやケイドとは違い面倒を見てやる必要のない、逆にむしろ頼れる兄のような存在であった。ブラッキーが背中を預けるに足ると認識している数少ない相手だ。しかしその頼りがいが逆に今は辛かった。駆け出しのエリクみたいな弟分がいる時少女は強くなれた。だがここでは自分が一番弱く感じられる。支えが欲しくてたまらなくなる。
少女が小さく震えながら何かに耐えている。アルフレドは泣きそうなブラッキーの肩を強く掴んだ。「メリスちゃんは生きてる!」
少女は根拠のないその励ましを有りがたく受け入れた。そして空元気を振り絞る。
「ねぇちゃんも打ち合わせた通り、自分の仕事をしようとしているんだね」
「間違いない。だって呪いの時もそうだっただろ」アルフレドの口調が強まる。
黄色の書の呪いに侵されていた時、イェアメリスは死の瞬間まで先のことを考え続けていた。あれは性分。彼女はしぶといのだ。今回もそうに違いない。
「じゃぁ急いで地上に戻らなきゃ。ねぇちゃんは、ボクがいないと駄目なんだ!」
「ああ、こっちもちゃんと、やることやらないとな」
アルフレドはそういうと、踊り場に立って死者の山を見渡した。視界の端ではスケルトンたちが、死体を台車に積んでは運び出している。エランディルの進んでいった奥に向かって。
「あの奥には何があるんだろう?」
「通路か・・・追いたいのはやまやまだが、俺たち二人じゃ分が悪いだろうな」
ブラッキーは頷いた。
分かれるときに、はぐれても互いを探そうとせず、それぞれが自分の役割を全うする、そう確認しあった。しかしそれはむざむざ危険に突っ込んでゆくと言うことではない。今は柔軟に対応すべき時だ。
相手は魔術使い。警戒もしているだろう。悔しい気持ちもあるが、せっかく見つからずに済んだのだ。それに姉のあんな話も聞かされてはじっとしていられない。ここは仲間との合流を優先すべき、二人はそう判断した。
ブラッキーは呼吸を整えると、ようやく気を取り直した。
目の前にはスケルトンの群。やるべきことが決まると、アドレナリンが噴出してくる。もう寒さなど気にならない。
「まずは死体を片付けちゃおう。これが残っているとあの化け物たちの材料にされてしまうんでしょ」
「そうだ」
アルフレドは先に命を落とした哀れな帝国兵から剣を取ると、作業を続けるスケルトンをさっそく破壊しはじめた。
スケルトンは反撃してくるでもなく、為す術もなくこわされてゆく。二人の生者には気付いていない、というより、特定の作業をするためだけの動作しかしない、自動人形のような死霊術なのかも知れなかった。
「さぁ片付いた! 上に行こう。 ・・・あ、ところでハクセイってなに?」
「聞かない方がいいと思うぞ・・・」
人間の剥製を想像して気分が悪くなりかけた傭兵は言葉を濁すと、ブラッキーを追い立てるように氷室を後にした。
氷室への落とし蓋が隠されている鉄格子から這い出すと、地下水の溜まった洞窟に出る。地上につながる地下一階だ。
スケルトンによる死者の搬出は阻止できた。次は死体を焼く火種を探さねばならない。
放棄された樽や箱などが散乱しているところを見ると、元は倉庫か何か、別の用途に使われていたと思われる。ところどころ柱で補強されたり、足場の悪いところに渡し板が張られたりしており、それもかなり磨り減っていた。
エランディルに殺されてしまったからか、もう見張りの姿は居ない。
ごく低温の氷室に収められた死体を焼却するには相当な火力が必要だ。
大学などでよく使われている燃える水みたいな物があれば早いが、残念ながらこんな田舎の山賊溜まりには焚火の燃えカスぐらいしか火の気はない。
何か別の手を考えなければならなかった。二人は地上に出てそれを調達することにした。
「油断するなよ。地上はどうなっているか分からないぞ」
「だいじょうぶ。今度は不意を打つほうだからね!」
地上への落とし蓋をアルフレドが勢いよく跳ね上げると、ブラッキーは即座に飛び出した。
思った通り見張りがいた。驚くサマーセット・シャドウズの男にナイフを投げつける。
顔面に突き立って悲鳴を上げる男を思い切り殴り飛ばすと、ブラッキーは油断なく周囲を観察した。
ここはマーラの目の池の中央に浮かぶ小島だ。周囲を水に囲まれているとはいえ、飛び道具を使われたらたまらない。小島のはずれにもう一人見張りが居り、今の音を聞きつけてきょろきょろしている。忍び寄って思いっきり重メイスを叩きつけると、その見張りも動かなくなった。
「たんこぶのお返しだよ」
少女はの自分の後頭部をさすりながら、倒した見張りを蹴り転がした。そしてアルフレドが上がってくるのに手を貸す。
他にいないかと警戒するが、入り口の2人だけだったようだ。夕方の空気が気持ちいい。二人は氷室で染みついた腐臭を消し去ろうとばかり大きく伸びをした。
そうしてしばらくイーストマーチの寒風に身を任せていると、二人の戦士は轟き、いや、鬨の声のようなものを聞いた。遂に北伐軍とストームクロークの激突が始まったのだろうか? 地上は地上で別の騒がしさに包まれていた。
「なんだろ、あれ?」
「火事か?!」
辺りを見回すと、川を挟んだ麓の帝国軍陣地の辺りで火の手が上がっており、鬨の声だと思ったのは悲鳴と怒号が風に乗って聞こえていたものだった。日没前の時間を狙ってのストームクロークの奇襲、帝国軍が攻撃を受けているのだろうか?
「マラキャスにかけて、夕飯にしちゃ盛大に騒いでるよね」
「バカッ、どう見ても夕飯じゃないだろ」
中央の島からでは距離がありすぎて、目を凝らしてもよく見えない。ブラッキーはもどかしそうに背伸びをしている。それを見て背の高いアルフレドは、少女を肩車して観察させた。
「ブラッキー、これで見えるか?」
そして彼女が見たのは、姉が恐れていた光景であった。帝国軍陣地の炎の中に揺らめく影がいくつも見える。そして時折爆発が発生し、そのたびに悲鳴が上がっている。
「たたたいへんだよ・・・アルフのにいさん、陣地が燃えてるよ! 人がいっぱい倒れてる!」
彼女たちが居るホワイト川西岸の丘陵棚から見て、東側の一帯は煙と炎に包まれていた。
肩車から降りると、二人は岸に渡ろうと小舟を探した。山賊たちは頻繁に岸と島を行き来していたらしい。小舟はすぐに見つかったが流されかけている。もやいのロープは杜撰に巻き付けてあるだけで、少女達は腰まで水に浸かって舟をたぐり寄せなくてはならなかった。
まずは死体を燃やし尽くす火種、そして姉を探しに行くにはこの対岸の火事に向かって突っ込んでいかなければならない。アルフレドの漕ぐ舟の上でやることを思い浮かべて気持ちを新たにしていると、少女は数人の集団が坂を登り、池の対岸にいることに気が付いた。
ブラッキーは目を疑った。
そしてその目には涙が溢れだした。
・・・
「おいおい、マジかよ。シェオゴラスもびっくりだぜ、これは」
短剣を手にしたグーンラウグが武者震いをするが、その声はうわずっている。
マルペンを葬ったイェアメリスたちは、陣地中に広まった死者の行進の中で孤立していた。
野営地のあちらこちらで呻き声が上がり、混乱が更なる混乱を呼ぶ。
アッシュ・スポーンはそこら中に湧いており、まだ生きているものを見つけては殺しにかかっていた。
そこかしこに火の手も上がり、北伐軍はもはや組織としての統制が失われつつあった。
「これがすべて・・・兵士、だった・・・」
分かってはいたものの、実際に目の当たりにすると言葉を失う。イェアメリスは少しよろめいてアスヴァレンに支えられた。
「なんだあれは! ストームクロークの魔術か?!」
「化け物だ・・・化け物がでた。助けてくれっ!」
地獄絵図を現実で表現したとしたらこうなるのだろう、そんな光景が広がっている。
「隊列を崩すな! 槍で突けば倒せるぞ!」
ところどころで無事だったものが寄り集まり、散発的な反撃に転じている様子も見られる。しかし彼らが相対するものは、ほんの数瞬前まで共に戦地を過ごした仲間なのだ。槍の穂先が鈍らないわけがない。
目の前に現れた人影はどこの隊の者だったか。ベアトリクスはもう何体目か分からなくなり、考えることをやめていた。
イェアメリスに襲いかかったアッシュ・スポーンを横から機械的に切り捨てる。
「くそっ、やつら、こんな・・・」
女隊長は言葉にならない怒りを吐き出した。
少し離れた所で戦槌をふるいながらテルミンが怒鳴る。
「あたいが心配する義理じゃないけどよ、お偉いさん方、新しい皇帝は大丈夫なのか?」
本陣はどうなったのだろうか。皇帝は?
皇妃とインガンは無事にたどり着いたのか。仮に二人が無事だとしても、この惨状を見ては希望など湧き上がってこない。
「皇妃が行ったから大丈夫だと思うしかねぇ。間に合ってさえいればな。・・・だが司令部が無傷でも軍がこれじゃぁ」
エランディルの仕組んだ卑劣なテロは、想像以上の効果を発揮していた。
「マルペンの親父も居なくなっちまったし。タイロニの爺さんは無事だよな・・・」
少し弱気な独り言を吐く女騎士に、テルミンは肩を並べた。
「どうする? うわっと」
襲われるのをいなして切り返した彼女も息が荒い。この重戦車のような二人の女戦士が居るからこそ、イェアメリスたちはアッシュ・スポーンのただ中で持ちこたえられていた。しかしそれもいつまでも保つわけではない。マルボーンも短剣を構えてはいるが正直戦力にならない。グーンラウグはそこそこ、ボハンは体格も良く健闘していたがいかんせん相手は化け物なうえに数にきりが無い。急いでこの場を脱出する必要があった。
「逃げようぜ!」テルミンが怒鳴ると、イェアメリスは立ち止まって逡巡した。
「でも!」
彼女はこの陣地の惨状を放っておくのかと訴えた。自分でも十分過ぎるほど分かっている。しかし彼女は言葉として誰かに結論を示して欲しかったのだ。
テルミンがどう答えようかと逡巡していると、助け船が差し伸べられた。
「こうなってしまったら、ここで出来ることはもう無い。帝国軍のことは帝国軍に任せるしかあるまい」流石に彼はイェアメリスのことをよく分かっていた。
イェアメリスは気持ちに整理を付けるように頭を振ると頷いた。彼の言うとおり、ここではもう何も出来ない。
「突貫するぞ!」
アスヴァレンが新たに立ちはだかった一体に酸を浴びせる。白煙を上げながら崩れ落ちるアッシュ・スポーンを踏み付けると、彼はこちらに来いと仲間達に声をかける。それに続いて退路を確保しながら女騎士が怒鳴り返した。
「あんた、皇妃たちにも渡してたが、その酸すげぇ効いてるな」
「そうだ。だがこの数に対抗するには全く足りん」
彼の言うとおり、道を切り開くので精一杯だった。
「そうは言うが随分と準備がいい。何と戦うのか最初から分かってたんだな」
「ああ。これまで何度もあいつらとは遭遇してきたからな」
ラゼラン船長の船の中で、彼らは時間さえあれば酸を調合していた。使うような事態にはなって欲しくなかったが、その期待は裏切られてしまった。
そしてベアトリクスにはもう一つ感心する事があった。イェアメリスである。エルフの娘は器用に細剣を使い、闘技場仕込みのステップに吸血鬼の力を上乗せさせて、化け物を貫き通していた。マルボーンと同じで役に立たないかと思っていたがテルミンやアスヴァレンに並び、十分戦力として戦えている。
「それにしても、イェアメリス。お前思ったよりもやるな。闘技場って言ってたのもあながちウソじゃねぇみたいだ」
闘技場では彼女のような女戦士は与し易いと侮られて、で常に標的にされ続けてきた。乱戦での戦い方に慣れているのにはそう言った理由があるが、ベアトリクスにはうかがい知れぬ一面であった。
「ところで、酸以外に弱点はねぇのか?」
「これと言っては無いわ。でも恐怖さえ克服できればただの重装歩兵みたいなものだって、セロおじさんは言ってた。あと、火炎を使う個体もいるから気をつけて・・・」
「セロ、誰だそりゃ。恐怖を克服、ねぇ・・・」
帝国軍の女隊長は剣を振るいながら器用に肩をすくめた。「それが出来てりゃ、今ごろこんなにはなってないと思うぜ」
不意打ちとは言え、帝国軍は逃げ惑っており、未だ立て直しは中途半端だ。「元は同胞だ。相手にするにはちぃとばかしイヤな思いをさせられんな・・・で、どっちだ?」
「このまままっすぐ、池に行きましょ!」
いま立っている丘を下ればホワイト川に行き当たる。アッシュ・スポーンが川を渡れるのかは解らない、しかしいま帝国の陣地から遠ざかろうとしたらそれが一番近かった。そこを渡ればイーストマーチの西端一帯を占める山岳地帯だ。当初の目的地にしていたマーラの目の池の方角だ。
「何度も聞かされてるが、そこに何がある。当てはあるのか?」
「今となってはどれだけ意味があるか分からないけど、エランディルが拠点にしていたのなら痕跡があるはず。それに、とにかく先に向かった仲間と合流しないと」
怒鳴り合いながら、一行は鏃となって帝国軍陣地を突っ切る。
川の東岸からウィッチミスト・グローブの手前まで、帝国軍の陣地はロルカーンの涙を摂取した変異者たちによって蹂躙され尽くしていた。
その中を突破したイェアメリスたちは、ホワイト川にかけられた石の小橋を渡り切るとようやく一息ついた。
そしてすぐに上り坂に取り掛かる。マーラの目の池を目指し、ここからは林の隙間を通り抜けながらの登り坂だ。
日没近くになると、後にしてきた陣地では死者の行進が徐々に収まり始めた。アッシュ・スポーンたちは崩壊を始めている。ソルスセイム本島のアッシュ・スポーンと違い、無理やり人工的に生み出されたこの化け物は長い時間身体を維持することができない。
殺されかかっていた兵士たちは安堵の涙を流し、そして友であった者を倒してしまった兵士はまた別の悲しみの涙を流した。アッシュ・スポーンが自壊するときに放つ炎が時折明るく瞬いては消えてゆく、その一つ一つがはるか異国の兵士の燃やす魂の光だった。斜面の途中で振り返ったイェアメリスは、何とも言えない脱力感と共に最後の光が消えるまで見つめ続けるのをやめなかった。
それが終わると、あたりは静寂に包まれた。
遠くから眺める彼女たちに正確な数字は分からなかったが、それでも北伐軍が受けた痛手は相当なものであった。
実際、三個軍団のうちひとつは完全に失われ。残りも無傷な部隊は半数に満たないというありさま。エランディルがついでと言った帝国軍の中核破壊は、十分すぎる成果をあげたのであった。
彼女たちの進むイーストマーチ西斜面は北伐軍勢力圏の北限で、少し北にはこれから攻められるはずだったモルブンスカーの砦もある。砦の彼らにも対岸の帝国軍陣地の騒ぎは見えていたはずだが、ストームクロークはひっそりと構えたまま動かず、騒ぎに呼応する気配を見せなかった。
仮面の一団やガルマルが口を濁した切り札など、怪しげな不確定要素はいくつもあったが、この騒ぎは彼らにも与り知らぬ事態であったようだ。
事件がストームクロークと無関係であることが思わぬところで証明される形となった。
「それにしてもひでぇな。ジェラール山脈越えてどれだけ国に帰れるか、って感じになってきちまった」
ベアトリクスが珍しく、少し疲れたような声を出した。「イェアメリス。結局お前が言ってたことがすべて正しかったんだな。どうせすぐにみんな殺されちまうってのは、このことを言ってたんだろ」
「ええ、的中しても嬉しくないけどね」
イェアメリスは重い足を進めながら、今まで経てきたことを反芻するように紐解いていった。
上級王の暗殺にはじまり、ポテマの死者が溢れかえるというソリチュードが受けた二度の災難。その後起きた皇帝の従姉妹の事故死。年が明けてからはサルモール王族が闘技場から誘拐され、従兄妹の弔問に訪れていたシロディールの皇帝が毒殺されてしまう。北伐軍が現れる前にスカイリムを襲った事件の数々は枚挙に暇がなかった。そしてその影で進められてきたサルモールの陰謀・・・。
帝国軍の女隊長は肩をすくめると地面に唾を吐いた。「滅茶苦茶だ。こんな話、あの若造皇帝でなくても信じろってのは無理があると思わねぇか」
「でも全て本当なの!」
「わかってる! わーかってるって! お前説明下手だろ、軍隊向きじゃねぇな。情報は取捨選択して伝えねぇと響かねぇぜ」
「むぐっ・・・よ、よく言われるわ」
「だが大体分かった。この一連の出来事は帝国軍とストームクロークを大幅に数減らしするためにサルモールが仕組んだってことだな。サルモールだ。サルモール。消去法であいつらしか居ねえ。間違ってても構わねぇ。サルモールってことでいい」
テルミン以上に荒っぽいが、それでも一抹の真理を突いているとイェアメリスは思った。
「どこまでが本当かは知らねぇ、だがマルペンの親父たちはオレの目の前で化けものになっちまった。あんなもの見ちまったからな。たしかに戦争どころじゃねぇ」
イェアメリスは力強く頷いた。ぶっきらぼうで、そして味方でもない帝国軍の人間だが、このベアトリクスは理解者になってくれる。初対面の相手にも拘わらず、無謀にもすべてを打ち明けた直感は、間違っていなかった。
イェアメリスはふと、横を歩くもう一人の女戦士、テルミンが何度も背後を振り返っていることに気がついた。そうだ、後にしてきた彼女の村は帝国軍陣地の反対側だった。
「妹さんや、イドラフさん、テスラさんたち・・・カイネスグローブは大丈夫かしら」
「随分こっち側で起きたようだし、村までは及んでないと思いたいね」
向こうのことはイドラフとテスラに任せるしかない。女戦士は自分に言い聞かせるように言うと、ちらりとベアトリクスを見て付け加えた。
「離れているのは僅かの距離かも知れねぇけど、その差はでけぇ。これが、あんたたち帝国が捨てたタロスのご加護ってやつだなきっと」
「フン、悔しいが返す言葉もねぇよ」
「でもこれで、帝国とストームクロークの戦いは止まるんじゃ・・・」
「いや、それはねぇな」
ベアトリクスは即、却下してのけた。
「あれだけ犠牲を出しておいて、まだやろうというの!」
「このままは帰れねぇよ。今回の遠征自体が示威行為なんだ。だから意地でもウインドヘルムは潰すと思うぜ」女騎士は、何もせずに帰れば帝国軍の弱体化をサルモール含めた世界に喧伝するだけだという。
「テルミンは?」
イェアメリスは助けを求めるようにもう一人の女戦士に尋ねたが、そちらの答えも同じであった。
「多分こいつの言うとおりだと思うぜ。ここでの事件が伝わりでもしたら、ガルマルじじいたち逆に勇躍するだろうな」
「そんな・・・」
女戦士は青い眼帯をこすると、その話は終わりだとばかりに話題を変えた。
「それより、なぁ、あの化け物たち。メリスを追っかけてるときに出くわした奴と同じだよな? そこのグーンラウグとか言うおっさんが連れてた変な山賊女が使ってた薬。あれはロルカーンの涙の実験だったんだな」
「おいおい、確かに依頼を受けて同行してたが、俺は身内だと思ったことは一度もねぇぜ」
「あの女は山賊ではない。狂った魔女、エランディルの協力者だ」
グーンラウグは慌てて否定してみせ、酸の残りを確認していたアスヴァレンが訂正する。イェアメリスもそれに付け加えた。
「そして、あたしのお母さんと同じ、ネロスおじいさんの弟子だったひと。あんな人じゃなかったはずなのだけど・・・」
「偶然にしちゃぁ良く出来てる。なんだか因縁深そうだね」
「そしてオメェ等はエランディルを追ってるってわけか」
ベアトリクスは無意識に装備の調子を整えている。この辺りは軍人が染みついている仕草だ。
「ああ、奴らは薬の調整と称して実験を繰り返してきた。情勢が不安定で、内戦による死者も事欠かないスカイリム周辺は都合がよかったんだろう。俺とこのメリスは意図せず、その片棒を担ぐ罪を犯してしまった」イェアメリスは知らずに材料を集め薬の完成に協力し、アスヴァレンはその実験で街を滅ぼしてしまった。
話しながらも足だけは動かし続ける一行の視線の先、ようやくマーラの目の池が見え隠れし始める。火山性溶岩地帯の丘陵部と違い、このイーストマーチの西端は雪と緑が山を飾る、スカイリムの代表的な景色に近かった。
イェアメリスはグーンラウグたちに話しかけた。あの騒ぎの中では勝手に動いても命を落とすだけ、そう判断したのだろうが、いまのところ元山賊たちはおとなしく着いてきている。良いか悪いかは別にして、自分たちを自由にしてくれる切っ掛けを作った彼女に悪い感情は抱いていないようだ。
「そういえば、あなたはどうやって捕まったの? たしか商人に化けた山賊とか言われてたわよね」
「そのまんまだよ。密告があってな」
グーンラウグはひげを撫でると、遠く南、リフテンのほうを見やった。「まぁそれ自体は仕方ねぇ、事実だし。そう、オレとこの無口なボハンは山賊だ。ブラックブラッドといやぁ、ちょいと有名だったんだぜ。だがそれがいけなかった」
彼もようやく一息付けるとみて、話に加わってきた。
「オレたちはタムリエル北部で手広く仕事をしてた。まぁ・・・山賊や海賊、その付帯事業としての密輸や奴隷売買ってやつだな。中でも俺の一家は”陸(おか)の兄弟”と呼ばれて、スカイリム内陸部を根城に最大勢力を誇ってたんだ」グーンラウグは自慢げに胸を張った。
「通常の略奪稼業以外にもまぁ、ギルドの真似事みたいな事もしてた。狼や熊みてぇな動物には流石に無理だが、とりあえず二本足で立ってりゃ務まるっていう汚ぇ仕事、何かあれば真っ先に切り捨てられる仕事の斡旋だな。そういう使い捨ての命を手配したりされたりしてたのよ。あんたみたいな姉さんには想像もつかねぇか?」
盗賊ギルドを通さない盗みや人殺し、地方貴族同士のいざこざ時のはったり要員、はぐれ魔術師や闇商人の護衛や助手、人身売買。人手が欲しいが何処に頼んで良いかわからないような後ろ暗い仕事はいくらでもある。グーンラウグたち”陸の兄弟”は、人対人のいざこざにかこつけ荒稼ぎをしてきていたのだった。
”街の中”はすでに様々な組織の既得権益で色分けされていたが、そのような縄張り争いのない”街の外”で彼らは勢力を伸ばし、最盛期にはホワイトラン以西のスカイリムを総取りしている程に蔓延っていたという。
「俺たちみたいな汚れ仕事は内戦がひどいほど儲かるからな。帝国やストームクロークといった連中とは距離を置いていたんだ」
「なのにサルモールには手を貸すのね」イェアメリスがチクリと嫌味を言う。
「待てよ。知ったのは後からだ。俺たちは薬には関わっていねぇぜ」
非難の目線に晒された元山賊は悪びれる様子でも無く言った。「最初はエランディルはただの死霊術師として接近してきたからな。それにブラックブラッド幹部と同じ刺青してたから、警戒が緩んだってのもある」
「何とでも言えるわ」
「まぁ聞けって」
もともと住む世界が違う。イェアメリスの嫌味も不審も、この男にはまったく堪えていない。
「そしたらあの野郎、俺たちを使って死体を買い集め始めたんだ。ボハンには止められたんだが、払いも良く大口だったから勘が鈍ったんだな」
「こっちの大男さんの方があなたよりよっぽど理性的じゃない」
「口の減らねぇアマだな」
彼の言葉を聞いていると、気付かずサルモールに加担して罪の意識に苛まれている自分たちが憐れになって来た。その死者や薬が陣地を焼いているところを見ても出てくる言葉がこれであるから、わかり合えることは無いのかも知れない。
「気付いてからも付き合いを続けたのでしょ。同罪よ」
「聞く気あんのか? やめるぞ」
「うるさい、続けなさいよ」
「はいはい・・・でよ、最近になって依頼もどんどん怪しく、手に負えなさそうになって来た。いくら金に目が眩んだ俺様でもこれ以上ここに居て関わってちゃならねぇと考えた。ちょうど奴らが変な薬を運び込んで来た頃だな」
「その勘だけは正解ね」
「ああ、それでこの仕事はおっぽり出すことに決めて、音沙汰無しを決め込んだ。スカイバウンドの寝ぐらに舞い戻って、冬眠中の熊よろしく大人しくしてた。エランディルを知ってるか、あいつ神経質だろ? 絶対追っ手が来ると思ったんだが・・・まぁ、俺たちのような小物はどうでもよかったらしい」
彼は一息つくと、自虐的に続けた。
「だがその小物を放って置いちゃぁくれねぇ奴もいてな・・・」
エランディルは姿を見せなくなったグーンラウグたちにかまけるようなことはしなかった。残ったあぶれ者を死霊術師たちに指揮させて作業を続けた。もはや彼の力は不要になりかけていたのだろう。そしてグーンラウグも元の山賊稼業に戻り、その”事業”に邁進していた。
「かなり儲けさせてもらったし、縁も切れてせいせいした。それでお終ぇ・・・となるはすだったんだが、まぁそっちでも一悶着あってな」
彼らは本業の街道での狼藉が度を超えたため、ホワイトラン首長の布告により討伐対象として指定されてしまったという。
「ああそうか!」
テルミンが思い出したように相づちを打った。
「なーんか聞いた名だなと思ってたんだけど、他にも接点あったわブラックブラッド。アタイ討伐戦に参加したぜ」
「そうかい、その場で出合わなくて良かったぜ。姐さん強いもんな」
彼らは山賊とは言え、完全武装の傭兵達、討伐隊に囲まれて押し返せるような武力を持つわけではない。
大半は殺され、囚われ、残った者も命からがら世界のノド周辺の山地に逃げ込んだのであった。
無関係に見えたテルミンとグーンラウグの間を結ぶ線。イェアメリス追跡時、山賊討伐戦、そしていま。広いスカイリムだ。三度もまみえれば不思議な縁となる。ここに居る者達が様々なマーラの運命によって離合集散していることを感じると、イェアメリスは少し気が遠くなりふらっとした。・・・ふらっとした気になっていたのだが、本当に身体が揺らいでいた。
「イェアメリス、お前大丈夫か? なんだか辛そうに見えるぜ」
先程から足が重い。仲間から後れがちになっていた彼女をみに、テルミンが引き返してきた。
「もう陽が落ちる、それまでの辛抱だぞ」
テルミンはそう言うが、これが日中の怠さでないことは彼女自身が一番よく分かっていた。
「大丈夫よ、あとちょっとだもの」なんとか立ち上がったイェアメリスの口は元気に告げるが、実際のところ膝を支えて肩で息をしている。気丈に振る舞おうと、彼女はグーンラウグに対する質問を続けた。
「で、どうしてあなたたちは帝国軍に取り入ったわけ?」
「おい、あんた辛そうだぜ。大丈夫か?」
「余計なお世話よ。話を続けて」
「じゅあいいよ。俺たちは山賊討伐で散り散りになった・・・」
バルグルーフ首長の呼びかけた大規模な山賊討伐によって拠点と仲間の多くを失った彼は、いったん闇商人に鞍替えして、東スカイリムに逃れてきた。
この地域はストームクロークの勢力圏内で、帝国支配地域で手配されている彼もあまり名が知られていなかったからだ。
「山賊のときに受けていた仕事も全て放り出しちまったから、また何かシノギを考えなくちゃならなかったんだ。メイビンに取り入って僅かな身内と共にリフテンで商売を始めたのさ。だがまさかシロディールから帝国軍が乗り込んでくるなんて思わねぇだろ。暫くは問題なかったんだが、どこから漏れたのか素性がバレて・・・」
「あの牢屋に入れられてたと言う訳ね」
「そういうこった。ステンダールにかけて、あんたらのおかげで命拾いをした。感謝してるぜ」
「おいおい、いつ逃がしたよ。それにお前がステンダールとか言うんじゃねぇ」
ベアトリクスが釘を刺すが、ヘラヘラ笑いながら元首領は続けた。グーンラウグが言うには、エランディルはサルモールという素性を隠していたという。何故彼がそれを知り得たかというと、彼の側近に口の軽い魔女がいたからだ。
「・・・連中がサルモールだと分かったのは、あのだらしねぇ魔女が胸はだけながらサルモール服で歩き回ったからなんだよ」
イェアメリスとアスヴァレンは顔を見合わせた。
「きっとイルダリだな」
「そうね」
エランディルはサルモールの組織から離れて活動しているようで、常に手駒は足りない様子だった。それを補うために彼はアターリングヒルズ洞窟を拠点にしていたアルトマーの盗賊集団、サマーセット・シャドウズと、同じくカスタブ砦を根城にしていた死霊術師の集団を仲間に引き込んだ。そのころからグーンラウグ達と、彼らのパワーバランスがおかしくなり始めたという。
彼らは謎のアルトマー、エランディルに率いられた勢力として精力的に活動をはじめた。イェアメリスたちがニルンルートを求めてリフトへの旅をしていた頃には、氷室には相当数の死体が集められたいた。
「ブラッキーが見たのはそれね」
グーンラウグの方も裏が取れたと頷いた。
「一度侵入者があったと言うが、あれはお前さんたちの一味だったってわけだ」
「完全な偶然よ」
その後帝国の北伐軍が現れたが、エランディルは驚いていなかったという。むしろ、それを待ち望んでいるかのような素振りだったと。イェアメリスたちは情報の断片をつなぎ合わせてここに来たが、結論は間違いでなかった。
帝国軍はひどい有り様だ。
彼女たちはサルモールの遠大な計画を知らなかったが、エランディルが引き起こした死者の行軍はそのもののインパクトだけで無く、巡り巡ってその後のタムリエルのパワーバランスを大きく変える影響力を持っていた。すべては"長い手を持つ支配者"と呼ばれるサルモール王族ヘレシンデの目論み通りに・・・
「そろそろだ。見えてきたな。用心しろよ」
話ながらも歩を進めてきた彼女は、日没直前でマーラの目の池に辿り着いた。丸一日のロス。しかしそれは大きな一日だった。
大使館時代に体験したサルモールの派閥争い。彼らに目をつけられているお尋ね者の自分たちが池の周辺をうろついて騒げば、サルモールが現れてエランディルの邪魔になると踏んでいたが一歩遅かった。そこに時間が生まれると思っていたが誤算だった。
そしてエランディルが自ら帝国軍陣地にまで姿を現すとは思っていなかった。
「別の入り口とかはないの? 山賊って、捕まりそうな時の逃げ道とか用意しているんでしょ?」
「あ? ねぇよそんなもん。・・・っと、ひとつ有るには有るが、入り口はここにはねぇ」
グーンラウグはそう言うと、腰の短剣をぬいた。無口な従者ボハンもそれに倣う。
「懐かしき我が家にご帰還、ってわけか。もう乗っ取られちまってるがね」
「ブラッキー達は・・・まだ来てないのか?」
アスヴァレンは一通り周囲を見渡してみるが、少女達はおろか、見張りがいる様子さえもない。池の周りは静寂に包まれていた。
「それとも、先に入っているのかも。中の様子を確認してみるわ」
イェアメリスは荷物からゴーグルを取り出す。ここしばらく出番のなかったゴーグルだ。接続先のチャネルのひとつにこのマーラの目の池の氷室がある。これから向かう場所が登録されているのなら偵察しておいて損はない。
ベアトリクスが不振の目を向けてくる。
「イェアメリス、何してんだお前」
「内部を確認するのよ」
「わけ分からん。目的地はすぐそこなんだろ、押し入ればいいだけじゃねぇか」
見たくない魔女の実験室やアバガルラスの人体彫刻を手早く切り替え、程なく目的の映像、目と鼻の先にあるマーラの目の池の地下を映し出す。相変わらずの死体の山。これと言って変わった様子はない。
「俺の元手下たちが居るかも知れねぇな」
「そういう人達もいないわ」
ベアトリクスがじれったそうに次の一言を発しようとした時、機先を制するようにアスヴァレンが口を開いた。
「まて、もうゴーグルは不要だ」
「え? どういう・・・」
ゴーグルを外したイェアメリスは、パートナーが指さす先を見た。
池の小島からこちらに向かって渡ってくる舟がある。
そこに乗っているのはブラッキーとアルフレドであった。
・・・
アルフレドの漕ぐ舟の上でブラッキーは目を疑った。
そしてすぐにその目に涙が溢れ、目の前がぐちゃぐちゃになる。向かってきたのは間違いない・・・イェアメリスたちであった。
「ブラッキー!」
湖畔の静寂を破り、姉の声が響く。
「ね・・・え・・・ちゃん?」
ブラッキーは確認するように呟くと、そしてもう一度叫んだ。
「ねぇちゃーん!!」
”すれ違う妹”なんて糞喰らえだ。邪魔する運命なんてすべて踏みつけてやる。
ブラッキーは涙で歪んだ顔を真っ直ぐ向けると、姉に向かって船から飛び降りた。
大きな水しぶきが上がる。
イェアメリスも同じだ。
船の中で仲違いしていたことなどすべて霧散していた。ブーツに泥が入り込もうが構わず、水に向かって突き進む進む。
二人はぶつかり合うように池の中で倒れ込んだ。
ブラッキーは今度こそ放さないとばかり腕に力を込める。
「ちょっとだけ、ちょっとだけだから・・・」
そう言ってしがみついたまま離さない。ぎこちなく腕を回したイェアメリスは、一瞬後に同じように固く妹を抱いた。様々なものが氷解してゆく。温度を失った不死の血が沸き立つような安らぎを覚えた。「よかった・・・。本当に良かった・・・」
確執も何もすべて池の底に沈んでしまえばいい。再びの再会を果たした姉妹は、池の水に半ば浸かりながらきつくお互いを抱きしめるのであった。
・・・
「ねぇちゃん、ボク、ちょっと寒いよ」
「あっ、ごめん。あたし・・・」
イェアメリスは自分が暑さ寒さを感じない身体であったことを思い出すと、岸に上がってブラッキーを引っ張り上げた。
小舟から飛び降りたアルフレドはアスヴァレンと拳を交わして再会を喜ぶと、テルミンが居ることに驚いている。そしてマルボーンや、帝国軍の部隊長であるベアトリクスと、ブラックブラッド略奪団の元首領の存在は彼らを更に驚かせた。しかし状況の異常性も相まって問題になどなり得ず、合流した二人はすぐに仲間の輪に加わった。
一行はすぐに小島に渡った。地下室に入り濡れた装備を着替えたり、乾かしたりした後、氷室への落とし格子を確保する。エランディルが山賊たちを鏖(みなごろし)にし、氷室の奥に消えたと聞かされたイェアメリスは、警戒しながら足を踏み入れた。
(うっ・・・)
ここに来るのは初めてだ。ドゥーマーゴーグルで見ていた光景と同じ景色が目の前に広がっている。しかし映像と現実では臨場感が違う。
「なんてこと・・・」
彼女に氷室の寒さは届かなかったが、代わりに嗅覚に襲いかかられてふらっとする。
イェアメリスは鼻を押さえながら周囲を観察した。
「これが、お前の言ってた・・・」
ベアトリクスも続く言葉がなかなか出てこない。
「この死体どもに薬をかけたらみんな化け物になるのか? ・・・信じられねぇと言いたいところだが、さっきのアレ見た後じゃぁ、言い返す気力も出てこねぇな」
イェアメリスはセロが語っていたことを思い出した。ソルスセイムの研究者の間ではアッシュ・スポーンはアンデットに分類されるらしい。ロルカーンの涙は生きている人間だけでなく、死者も強制的に変異させて灰の化け物として蘇らせる。ここの死体の山は、アンデットを作る材料として集められたのだ。
「なぁ、アルフのにいさん。ここの死者ってあの奥から運び出されてたん?」
「そうだ。オレとブラッキーで阻止したが」
若き傭兵はせめてもの抵抗として、死霊術師の使役しているスケルトンを破壊したことを説明した。
「じゃぁ、こっちの地上には?」
「いや、死体が運ばれてくることはあっても、そっちに運び出されることはなかったぞ」ブラッキーも頷いている。
何かおかしい。
テルミンが薬品保管庫で口にした通り、この氷室の死者たちは野営地襲撃には投入されていなかった。
「あたしたちてっきり、ここに貯蔵されている死者達を化け物にして、帝国軍を襲わせるものだとばかり思っていたのだけど。間違っていたのね」
帝国軍陣地にあふれ出たアッシュ・スポーンは、この池から送り込まれた物では無く、食事に薬を盛ることによって引き起こされた。もしかして自分はとてつもなく見当違いのことをしているのではないか? 何か大事なことを見落としているような気がする。常につきまとっていた怖れが、半ば現実のものになりかけていた。
「結局、間に合わなかった・・・」
日が落ちたはずなのに力が湧いてこない。むしろ急激に疲れがのしかかる。思わずふらついて、アスヴァレンに支えられてしまう。
そのまま体重を預けながら大きく息を吐く。彼女は自らの読みの甘さを思い置くのだった。
「結局? いや、まだだ」
アスヴァレンがかぶりを振るのを見ると、彼女は不安そうに顔を上げた。
「どういうこと?」
「アルフに聞いた。エランディルは”既に先発の同志たちは位置について居る”と漏らしたらしい。ここに居るのはおそらく第二陣だ」
「まだ、起きていない何かがあると・・・」
彼女はすがりつくようにパートナーの言葉を待った。
「グーンラウグが言うには、ここの死者は半年以上前から集め始めていたそうだ」
半年以上前と言えば、イェアメリスたちはサレシ農場を目指してスカイリム横断の旅を続けていた頃だ。そしてその後を追うブラッキーがケイドやモイラたちと一緒にこの洞窟で一暴れした頃でもある。
そんな前から時間をかけて集めた死者達。その頃には北伐軍など影も形もなかったはずだ。
「北伐軍の襲撃に使われなかったからといって、この死者達の役目がなくなったと言うことではない。もともと別の目的で集められたんだ」
エランディルの言う第一陣が帝国軍にぶつけるためでなかったとしたら、何処か別の標的があって、そちらに向けての準備に違いない。
「エランディルを。もう元凶を絶つしかないわ」
その様子を見ると、何か言いかけたアスヴァレンは言葉を引っ込め、代わりに力強く頷いた。
「前に言ったな、倒れそうな時には遠慮なくもたれ掛かってこい」
「ありがとう・・・」
しばしの目を閉じると、旅の途中の大切な思い出が蘇ってくる。彼女はそこから力を得て自分を奮い立たせた。
エランディルと配下の死霊術師はほんの少し前に奥に行ったという。いま追えば追いつけるはずだ。彼女は仲間を見回した。アスヴァレン、ブラッキー、テルミン、アルフレド。そしてベアトリクス。仕方なく付いてきた体のマルボーンや、グーンラウグ、ボハンまでも、みな真剣な顔だ。
アスヴァレン、アルフレド、テルミンが力強く同意する傍ら、ブラッキーが控えめに言った。
「ねぇちゃんここまでしなくちゃならないの? 本当に?」
エランディルの異常性と危険性を目の当たりにした少女は、この先に居るはずの相手の危険性が充分骨身に染みていた。生半可な気持ちでは臨めない。
「ええ、まだやれることがある。ようやく尻尾を掴んだんだもの」
「ねぇちゃんのせいじゃないのに・・・」
しかしイェアメリスの想いは揺らがなかった。
「前にも言ったでしょ。馬鹿でも知らなくても関わってしまったらもうダメなの。やり遂げなきゃ」
「あーもうわかった。じゃぁボクも全力で手伝うよ!」
ブラッキーは何かに吹っ切れたように頷くと、拳を握った。
・・・
仲間たちが奮い立つ中、マルボーンの控えめな声が割り込んできた。
「意気が上がってきているところに水を差すようだが、俺は別れるよ」
ボズマーの告白にイェアメリスは一瞬戸惑い、しばし考えたあと、理解した顔になった。
「悪く思わないでくれ。これ以上はオレの手には余る。どう楽観的に見積もっても、大使館でオレの運は使い果たしちまったようだ。ドラゴンボーンの乱入のお陰で、ルリンディル第二特使を亡き者にできたが。ここらが潮時だ。オレは戦えるわけでもないし、ついて言ってもあんたたちの足を引っ張っちまうだけだ」
出会ったのは、サルモール大使館の晩餐会の時だった。再びこんなところで出会うとは思っていなかった彼も、不思議な縁に引き寄せられた一人だった。
「そうね。あなたのことはずいぶんと引っ張りまわしてしまったわ」
マルボーンは申し訳なさそうに頷いた。
「これからどうするの?」
「そうだな。また次どこかに潜伏して、どこかでサルモールの活動を妨害してやるつもりさ。あんたの方も、サルモールの作戦を台無しにしてくれるよう、心から祈ってるぜ」
「ええ、それで充分よ」
マルボーンにエランディルとの戦いを強要するわけには行かない。
「俺たちも行かねぇよ」
ボズマーに同調するように、グーンラウグが宣言する。イェアメリスは再び出鼻をくじかれて、今度はムッとした顔を元山賊に向けた。
それを見ると元首領は悪びれもせずに続けた。「この小せぇボズマーの方が普通の判断だわな。これは、忠告だが・・・」
グーンラウグはイェアメリスをまっすぐに覗き込んだ。
「あんた、人間じゃないのに真面目すぎる。俺らは撒いた種が起こす結果になんて興味はないし責任も感じちゃいねぇ。それに引き換えあんたはそれを背負おうとしてる。そんなんじゃ長生きできねぇぜ?」
イェアメリスは牙を見せて、どこか寂しげに笑った。
「そのとおりね。おかげでもう死んでるわ」
おせっかい、お人好し、抱え込み、もう何度も言われてきたことだ。言われて変わるのなら苦労はない。この山賊に言われなくとも、もう何度も自問自答してきたことだ。迷いはない。ここでやりかけたことを放り出しては、本当の笑顔で笑って島には帰れない。
彼女は頷いた。
「あなたは身勝手で悪人で、はるか海の向こうの小島であたしを誘拐したのと同じ一味だけど、別に責めるつもりはないの。これはあたしの気持ちの問題。それに仲間を巻き込んで危険にさらしているあたしだって十分身勝手よね」
「なるほどな。妙ちくりんな理由を並べ立てる聖者面したやつよりかはよほど説得力があるな。今更ながら、あんたのことは気に入ったぜ」
「それはどうも。で、あなたの好意には何か特典はあるのかしら?」
いつもの調子が戻ってきたイェアメリスは、グーンラウグと向き合った。
「なんだその言い草。酒場女も真っ青だぜ」
グーンラウグは同意を求めるように相棒のボハンを見たが、寡黙な大男が無反応とみると肩をすくめた。「そうだな・・・三番目ぐらいには見てやるよ」
「三番目? 一番目じゃなく?」
「バカ言え、俺の女房だった女でも二番目止まりだ」グーンラウグは鼻で笑うと続けた。「オレは自分に正直な悪人だ。だが誰彼構わず噛み付く狂犬じゃねぇ。自分が一番、自分の命が一番、それが脅かされるときには全て捨てる。二番目は仲間や家族。オレの手の届く範囲では仲良くやりてぇし、親切にしてやりてぇと思ってる。死んじまった嫁か、このボハンのような古くからの仲間だな」
「じゃぁ三番目って何なのよ」
「それ以下。三番目はそれ以下だ。うまく付き合える間は仲間だし互いにうまい汁を啜り合う。まだあるぜ。四番目は他人だ。どうなろうが知ったこっちゃねぇ。ブラックブラッドは悪くなかったが、二番目にはなり得なかったってことだ」
「そして新たな三番目の相手があたしたちってわけね」
「まぁそういうこった」
イェアメリスは鼻を鳴らした。
「なんか安っすいわね・・・・一つだけ言わせてもらうとすれば、悪に加担するにしても相手を見て選ぶ事ね」エランディルに関わっていたことに対する当てこすりをすると、元山賊は足元に転がっているかつての部下達を見下ろしてため息をついた。
「ちげぇねぇ。そこは完全に認めるよ」
「あと、許しを請う相手はあたしじゃないわ。あなたはベアトリクスさんの囚人でしょ。あたしもだけど」
ベアトリクスは頭を掻いた。
「いいよもうどうでも。イェアメリス、お前が決めろ」
「えっ?!」
帝国軍の女騎士は徽章をむしり取った鎧の留め金を触っている。「隊の徽章もバラージュに託したし、今さらシェオゴラスがひっくり返したようなあんな陣地に戻っても何も出来やしねぇ」
「それとどう言う関係が?」
イェアメリスは動揺した。
「オレはもうしばらく何も考えたくねぇ。考えねぇことにした」そう言って女騎士は獰猛に吠えた。
「何も考えず、ヘルハウンドよろしく女吸血鬼の向かうところに着いて行く事に決めた。イェアメリス、お前にな」
「ベアトリクスさ・・・」
「それか剣でもいい。ああ、そっちの方が何か良いな。一振りの・・・お前の剣だ。気にいらねぇ相手に存分に振り下ろすといい」
彼女もイェアメリスと同じく、エランディルを敵として認識したようだった。面白いもの見たさで気まぐれに関わった吸血鬼の娘だったが、そのもたらした運命は抗いがたい荒波だった。
「おっと、メリスの剣はアタイだかんな。お前は番犬にしとけ」
テルミンが茶化すように割り込んでくる。
「おめぇのは鎚だろうが!」
「二人とも・・・ありがとう」
そんなイェアメリスの背中をドンと叩くと、ベアトリクスは放って置かれていた山賊の元首領に向き直った。「・・・とは言ったが、まぁ、ひとつ意見だけはしておいてやる。オレはこんな奴はここで殺しておいた方がすっきりすると思うぜ」
女騎士の捨て台詞に、グーンラウグは慌てて首を振った。
「待ってくれよ隊長さん。俺とあんたは他人だろ。何したって言うんだよ」
ベアトリクスはそれには答えず、イェアメリスをじっと見た。
「山賊にもいろいろ居るがこいつは大物だ。こいつのせいで生まれた孤児や泣いた家族は両手足の指集めたって足りねぇだろうよ。オレの嫌いなステンダールにかけて、血ィ吸っておまえの養分にしちまう方がよっぽどか世の中の為になるのは間違いねぇ。それにな・・・」彼女はグーンラウグをにらみつけた。
「オレはテメェみたいに理性的じゃねぇ。二番だか三番だか知ったこっちゃねぇんだ。殺したい奴は殺す。気に入らなければ飼い主にも噛みつく狂犬だ」
ベアトリクスの目には、冗談の通じそうに無い剣呑な焔がくすぶっていた。「マルペンの親父の死に、少しでも関わった野郎なら殺すに値する」
顔は笑っているのに声だけが低い。
「そんなこと言って十分り、理性的じゃねぇか! なぁ、あんた、見逃してくれよ」これ以上話すとマズいと思ったのか、グーンラウグは今度、アスヴァレンにすがった。
「そうだな、目的の巨悪にかまけるあまり、別の巨悪をのさばらせてしまう可能性もある。摘んでおいた方が後々いいか」
「テルヴァンニの兄さんまで・・・」
「お前は、四番目だ」
「待ってくれよ、俺が巨悪? そんな大それたもんじゃねよ! エランディルと関わったのも、たまたま仕事の引きが悪かっただけなんだ。あんたたちに受けた恩を仇で返すようなことはしねぇって!」
「三番目の範囲で、だろう」
「分かった分かった、じゃぁ二番でいい。いずれ力になるから・・・互いに長生きできてたらだが」
「ショールもびっくりの安い絆だなぁ」テルミンも呆れたように肩をすくめる。仲間たちに凝視されて流石の元山賊首領も形無しだった。
そして誰も結論を出さないまま、みなイェアメリスを見た。
問いかける視線を感じる。自分に決めろと言っているのだ。彼女は頷くと、息を吐き出した。「今はエランディルに集中しましょ」
「だってよ、オレたちの気が変わらないうちに早く消えろ」
「お、恩は忘れねぇ!」
ホッとしたように力を抜いたグーンラウグは、無口なボハンを伴って、そそくさと荷物をまとめ始めた。
「あ、待って!」
イェアメリスはグーンラウグを呼び止めた。
「罪を償えなんて言わないわ。代わりにさっそく二番目の特典を頂くわ」
「な・・・なにを。血ィ吸うとか言わないよな?」
イェアメリスは目をつり上げた。
「そんなんじゃ無いわよ! え? くれるの?」
「だぁ! だめだめだぁめ!」
「冗談よ」
すると彼女は真剣な顔になって手すりから乗り出した。
「まだ言ってないことがあるでしょ」氷室の先のほうを指さす。ブラッキーたちが見た、エランディルが入っていった通路を。
「ここはあなたの拠点だったんでしょ。この先には何があるの? エランディルはどこに向かったの?」
グーンラウグは何を言われるかと緊張していたが、イェアメリスの質問を聞くと肩の力を抜いた。
「ウインドヘルムだ」
帰ってきたのは思いも寄らぬ地名であった。
「ウインドヘルム?!」
仲間たちからも驚きの声が上がる。
彼女たちは知らなかったが、この地下道は第3紀の頃、ウインドヘルムに出入りする貿易商たちが山賊と結託して、港で荷揚げした商品を税関通さずにそのままイーストマーチの内陸部まで運ぶため掘ったものであった。テルミンがイェアメリス達を城壁内に導いた抜け道。それと同じような、しかしより規模の大きなひとつだ。
マーラの目の池は、過去には密輸物資の集積拠点であったのだ。内戦の影響で東帝都社も海洋貿易商も撤退し倉庫街も閉鎖されているいま、地下通路は放棄され役目を終えていた。そこに目をつけたグーンラウグが、ブラックブラッド略奪団の隠れ家拠点の一つとして使っていたのであった。
そして今はエランディルが死体の貯蔵と運搬のために利用している。
アルフレドが拳を手の平に打ち付ける音が響く。
「・・・繋がったな。奴らの目標は解ったな」
「ウインドヘルムが標的だというの?」
「ああ、ここの死体を使ってウインドヘルムを攻撃しようとしているんだ!」
エランディルの言う”この地を穢すノルドの象徴”・・・イスグラモルの打ち立てた古の王都、ウインドヘルムに違いない。
アスヴァレンも頷いている。
「推論に過ぎんが、奴はああ見えて意外と合理的だ。そして目的のためには自ら動くことも厭わない。開けた台地に広がる帝国軍には食事を介して薬を配る、人間たちに頭を下げ、物資の援助という芝居まで打ってな。では城壁内に集まっているストームクロークには? ・・・エリンヒルと同じように内部に死者の行進を送り込むのが効果的だろう。被害が最大になるように行動していると思わんか?」
ウルフリックとアトレバスに警告したにも拘わらず戦いは止まらない。そしてエランディルの企みは着々と両者を蝕んでいる。
「ここの死体が第二陣だとすれば、もう襲撃準備は整っているって事か!」
気付かれずにウインドヘルムに死者達を送り込むには、地下通路は最適だ。ウルフリックたちは帝国軍以外に別の化け物が攻めてくるなんて考えてもいないだろう。内部から奇襲を受けた北伐軍と同じで、大変な被害が出るに違いない。
「おい、ボハン。何してる。俺たちは行くぞ」
ショックを受ける一行を尻目に、元首領はそそくさと立ち去ろうとしている。
マルボーンを伴い、氷室を去ろうと相棒に声をかける。その大男は背を丸めて、ブラッキーと一緒に死体に向かってかがみ込んでいた。思わず興味を引かれてイェアメリスは尋ねた。
「なにしているの?」
「使える装備が無いか見ている」答えたのが大男だったのでイェアメリスは驚いた。彼が喋ったのを始めて聞いたかも知れない。
ボハンは牢屋から着の身着のまま出てきていた。この先落ち延びてゆくには手ぶらでは心許ない、彼はそう説明した。
この男はグーンラウグの古い相棒とのことだが、その相棒が糾弾されて居るときも何処吹く風であった。どう言う神経をしているのだろう。それともこんなことはしょっちゅうで、彼らにとっては騒ぐほどのこと事でもないのだろうか。
しかしイェアメリスにはなんとなく理解できた。根拠はない。だが彼女に声をかけて牢から抜け出した時点で、彼らはマーラの幸運を勝ち取り、勝利を、生を確定させたのだと。
そんなことを考えながら、半ば呆れて今度はブラッキーの方に向き直る。
「あなたの装備はちゃんとあるじゃ無いの。着替えだってしてるのに」
「短剣集めだよ、ねぇちゃん。さっき一本使ってダメにしちゃったから、補充しときたくて・・・」
テルミンが微妙な顔をしてアルフレドと目を見交わしている。アーセランと一緒にさんざん叱られた死体漁りだ。
するとアスヴァレンが荷物から何かを取りだした。
「それなら、これも持っておくか?」
「なにこれ?」
手にしているのは、何の変哲もないダガーのようだ。
ダンマーの錬金術師は少し遠くを見るような目になった。
「戻ってくるときに、ある男に貰ったものだ。俺にはエオルンドの剣があるからブラッキー、お前にやろう」
彼がハンマーフェルからソリチュードに戻る途中で出会った狩人、ヴァルドルが使っていたダガーだった。
尤も、その時アスヴァレンは昏睡状態で、後から聞いた話だ。
「これを受け継いだ死霊術師が餞別にくれた物だ。持ち主に幸運をもたらすらしい。姉妹が再会できた幸運を逃がさぬよう、持っておけ」
「いいの? よし、じゃあ武器コレクションに追加だね!」
ブラッキーはご機嫌な声でそれを腰に挟んだ。
アスヴァレンはボハンたちが死者から離れるのを見届けると、イェアメリスの肩に手を置いた。
「まずはこの死者達を弔おう。メリス、やれるか?」
イェアメリスは小さく頷くと首輪に鍵の指輪を当てた。カチリと言う音とともに縛めが外れると、アスヴァレンは仲間たちを下がらせる。
火炎の呪文・・・彼女が持つ唯一の破壊魔法。
すでに知っている者は率先して後ずさり、そうでない初見の者は集まる光の眩しさに目を細めた。
素人でも扱える基本の呪文だが、規格外のマジカから放たれるそれは恐ろしい威力となる。
彼女の魔力は放たれると、一瞬にして死者達を炎に包んだ。
死者達そのものを燃料として赤い火が踊るのを、一段離れた踊り場の上から仲間たちは見守る。
「エセリウスへ送らるる汝らの魂に、八大神の慈悲あらん事を。汝らはニルンの地の塩なれば、我らの愛する父アーケイの元へ、神の光を寄る辺に辿り着けますよう・・・」
マルボーンが神妙な面持ちで聖句を唱え始めると、誰と無くそれに唱和を始める。
かつてサルモールに葬られた家族を同じように弔ったのかも知れない。
かつて人であった成れの果ては、氷室の中で灰となり、やがて地下水に混じって大地に還るだろう。
一行は火がおさまるまでその場から一歩も動かなかった。
その後、グーンラウグたちは去って行った。
氷室から退去する三人を見送った一行は、最後の戦いの予感を胸に、エランディルの消えた通路をウインドヘルム目指して進むのだった。
・・・
マーラの目の池は先ほど同様静まりかえっている。
かつての仲間、もしくは別の何かが居るかも知れない。グーンラウグとボハン、マルボーンは周囲を警戒しながら表に出た。
彼らが岸に渡ろうと小舟に手をかけた時、向こうからやって来る男が目に入った。
「おい、頭下げろ!」
いきなりグーンラウグはボズマーに警告すると、ボハンに目配せをする。
現れた男は岸辺にボートがないことにしばし首をかしげると、まあいいかという素振りで水の上を渡り始めた。水上歩行をしてくるところを見ると魔術師のようだ。エランディルに命を受け、イェアメリスの死体を回収しに行った死霊術師バウラーであった。ターゲットを見つけることが出来ず、いったん報告のために戻ってきたところだ。
ならず者達は、小島の草むらに隠れて男が近づいてくるのを待ち構えた。
ぷつッ!
蚊に刺されたかのような刺激を感じ、死霊術師は首筋に手を当てた。そして次の瞬間、足に力が入らなくなったかのようにへたり込む。グーンラウグが放った麻痺毒の吹き矢であった。次いでボハンが後ろから一撃を加えると、死霊術師は昏倒させられた。
「あんたら、やけに手際がいいな・・・」
隠れているだけだったマルボーンが恐る恐る顔を見せると、グーンラウグはニヤリと笑った。
「昔サリクスっつぅまじない師が教えてくれたんだよ。死霊術師ってのは不意を突きゃただの人とそう変わらない、ってな」
彼はボハンに手伝わせ、バウラーの足に重しを付けると池の中に投げ込んだ。そしてこれから向かう南の夜空に向かって手をかざした。
「ま、助けてもらったからな、餞別みたいなもんだ。これであいつらも後ろを気にしなくて済むだろ」
そう言うと、彼らは改めて小舟に乗り込み、マーラの目の池を後にしたのであった。
(つづく・・・)
※使用modほか
今回はプロットまで調子よく行っていたのですが、おっとビックリ(゚д゚)! 途中で入院する羽目に・・・
病気は幸いちょっとした細菌感染で既に平癒したのですが、公開が遅くなってしまいました。
次回でようやくエランディルとの因縁にも決着が付きます。年末に向けてエンジンかけていかないと…( *・∀・)9゙ファイトー♪
それでは今回のキーパーツとなったmodを紹介したいと思います。
・Hawk Follower( Nexus LE 87776 )
お世話になっているおいぱみさんの渋いおじさまフォロワー。
前に紹介したと思っていたんですけど、抜けていたようなので改めて。
(↑と思ったけど紹介してましたσ(^◇^;))
帝国軍の将軍役(タイロニ・カレイウス将軍)として登場していただいています。
実は初稿ではマルペン将軍じゃなくて彼がアッシュ・スポーンに変貌して死亡する予定だったんですけど、強運で生き残りました。
折角なので、また別の機会に出番をもうけたいと思ってます(o゚▽゚)/
・haijin Followers - Gourmandise( 個人配布 )
・haijin Followers - S.B.M - V01a_Jul.19( 個人サイト )
お世話になっている廃人aさんのフォロワーたち。
今回で名実ともにベアトリクスさんもレギュラーになってくれました。これで最終決戦用パーティは完成です(o゚▽゚)/
第2皇妃役のグルマンディーズさんも脇役ながら、今回は少し見せ場多めでした。撮ってて楽しかったです。
・Jan Brueghel Imperial Follower ver 1.2( 個人サイト LE)
・Szilard imperial follower
お世話になっている曼珠沙華さんのフォロワー達。
ちょっと残念だけどカッコイイ若き皇帝と、その衛士役で登場して頂いてます。
今回はイェアメリスをぶった切ってくれました。なにしとんじゃワレ💢(←www)
・SalixFollower3.1(個人サイト LE)
お世話になっている火取蛾さんの死霊術師フォロワー
幕間8(Chapter 2 - Interlude 8)では頑なに名前を出さずに通した彼ですが、グーンラウグによってあっさりと名前をばらされてしまいましたw
まぁ、メリスやアスヴァレンたちには知られていないのでよしとしましょうw
・Sassy Teen Girls Special Edition( Nexus SE 2728 )
19人の少女フォロワーを追加してくれるmod・・・
ですが(゚д゚)・・・今回はSaraさん(スケルトン!)を使用させていただきました。
アッシュスポーンもそうなのですが、ポーズを撮らせることの出来るクリーチャーって貴重なんですよ^^;
・Zulfardin( Nexus SE 33889 )
廃墟となったナミラ寺院をプレイヤーの家として追加するmodです。
今回は皇妃様はじめ、いくつかのシーンで雰囲気撮影wのために使わせていただきました。
・Ponzu Explosion SweetRoll(個人サイト LE)
お世話になっているPonzuさんの作った、爆発するスイートロールです。
爆発するスイートロールです。
何を言っているのか、わからねーと思うが、とにかく使ってみてくれ。
ほら、よくあるじゃないですか、戦隊ものの登場シーンとかで背景が爆発するやつ。
そういったエフェクトをちりばめるのに使えるんですよ。
爆発だけではないので、アイディア次第でいろいろ表現できます。
今回はスイートロールをJaxonzで小さくして手のひらに埋め込んで、イェアメリスやエランディルの呪文発動を作りました。
ちなみにLEからコンバートして使っています。
・Ponzu Effect Ring (Menu Ver.) (個人サイト:LE/SE)
もういっちょ、Ponzuさんのmod
これは死霊術士の魔方陣エフェクトに使わせていただきました~
・Slavetats( LoversLab SE )
ゲーム内で動的にタトゥを着け外しするシステムmod。
LEからのコンバート版がLoversLabにあり、そちらを使用しています。
今回のマルペン将軍やグルマンディーズ皇妃の変貌シーンは、いろいろ手段を試したのですが結局このmodでアッシュスポーンのスキンテクスチャを重ねるという方法に落ち着きました。
相変わらず本来のタトゥーとして使ってない…(゚∀゚)!
・Clanggedin's Skyrim Auras( Nexus SE 42167 )
ゲーム中に登場するバニラのエフェクトを自由に付け外しできるようになるmodです。
吸血鬼のやけどシーンなど、いくつかのエフェクトに利用させていただきました。
・SavrenX Lux Weapons( Nexus SE 32667 )
ユニーク武器のリプレイサーmodです。
今回はエランドゥルを倒してエランディルが手に入れた(まぎらわしい!)、堕落のドクロを使用しています。
静止画ではお見せできませんが、口蓋がカクカク動いて不気味さマシマシです(。・∀・。)
ちなみにこの物語では堕落のドクロの効果をスカイリム仕様ではなく、オブリビオン仕様にしています。
だって、人のコピーですよ。そっちの方が面白いしロマンあるじゃないですか(゚∀゚)
オブリ未体験の方は、ぜひ一度おためしあれ(o゚▽゚)/
・Rigmor of Cyrodiil( Nexus SE 21566 )
帝都の商業地区やルビーの玉座のシーンで使わせていただきました。
街路を走り抜ける子供とかも居るので、賑やかで帝都っぽいです(o゚▽゚)/
・The Gray Cowl of Nocturnal SE( Nexus SE 4509 )
ハンマーフェルやオブリビオンなど、多彩な舞台で展開されるノクターナルの灰色頭巾にまつわる盗賊のクエストです。
今回はSE版で、帝都監獄の尋問風景に使わせて頂きました。
・Timeless( Twitter配布 SE )
Alter Nativeさまの美麗な撮影ロケーションmodです。お世話になっている方も多いかと思いますが、今回は贅沢にもここから「ベッドの掛け布団!」を使わせていただきました(゚∀゚)
井戸の覆い、イェアメリスに掛けた布として使っています。
ちょうどいい感じのクシャリ具合の布が何種類もあるので…(^0^;)
・Dovahska( Nexus LE 9953 )
OblivionとSkyrimの時代の間を描写する補間小説「The Infernal City」(Greg Keyes著)に着想を得たmod。浮遊大陸ウンブリールに似た島を追加するmodです。オマージュしていると言うだけあって大陸のシルエットがウンブリールそっくりなので、撮影に使わせていただきました。
ちなみに小説では、4E40年にブラックマーシュのリルモスの街上空に現れ帝都に向かって侵攻を始めた、浮遊都市ウンブリールを、タイタス・ミード一世の皇子、アトレバスが阻止するための冒険が描かれています。
このお話に出てくるタイタス・ミード二世の息子、皇太子アトレバスは、これにちなんで名付けています。
無事皇帝に即位出来たらアトレバス二世になるんですかね?(すでに僭称しているけどw)
ちなみに浮遊都市ウンブリールはその名からお察しできるように、クラヴィカスの魔剣ウンブラの力を持つものだったりします。英語版しかありませんがTes好きなら一度チャレンジしてみるのもいいかもです(o゚▽゚)/
・担架( Residents of Skyrim/特注 )
いつもお世話になっているponさんの小物mod。
こういうの意外とないので、しょっちゅう使わせていただいていますヾ(๑╹◡╹)ノ"
・Interesting NPCs( Nexus SE 8429 )
ロアに配慮した250人以上のフォロワー、そしてクエストを追加する超大型modです。
重たいけどこれを入れると賑やかさが違いますね。
今回は、マーラの目の池の地下、氷室、ウインドヘルムへの隠し通路に使わせていただきました。
ちなみにこの場所はmodで追加されるクエスト「美徳と警戒(Vigilance and Virtue)」の舞台として用意されている場所です。5年前にウインドヘルムへの進入口を見つけて、そのときからこのお話のパーツとして暖めていました。