FC2ブログ

4E201

TES大好き、もきゅがスカイリムの物語をお届けします

◆Chapter: 2 Interlude ~幕間4~

2018
06

ストームクロークと共に囚われたイェアメリスを救出するため、仲間が追跡をはじめた頃・・・


20180926222516_1 のコピー


ヘルゲンから東に向かう街道を一台の馬車が走っていた。道は背の高い針葉樹に囲まれ、まるで森の中に作られたトンネルのようだ。緩やかな上り坂は東に向かって延々と続いており、先は霧にかすんでいた。降霜の月も半ばを過ぎ、ジェラール山系は一足早い冬を迎えていた。晴れてはいるのだが、時折雪がちらつき、馬車馬の吐く息が白いもやとなっては消えていくのを繰り返していた。


20180926220908_1 のコピー


「こんな南の方でも雪が降るんだね」
ブラッキーは馬車に揺られながら、連れにこぼした。ロリクステッドの農夫改め傭兵となったエリク、ソリチュードの鍛冶屋ベイランドの息子ケイド、二人の青年が馬車の向かいに座っている。彼らはブラッキーの感想に同意すると、より一層防寒具を首に巻き付けた。


20180926224032_1 のコピー


「南とは言っても、スカイリムの中ででの話だ。寒い土地であることに変わりはないさ」
眼鏡をかけた長身のインペリアルが、さもありなんといった口調で若者達に応えた。ウォーヒン・ジャース。不思議な縁によって彼女たちと知り合った帝都の小説家は、いつの間にか旅の仲間として収まっていた。記憶障害の症状をホワイトランの司祭に見せたのだが、記憶以外は至って正常、むしろ道中で色々見聞きすることが治療の助けになる、という有難い言葉を頂いてしまい、ブラッキー達に着いてきてしまったのだ。


20180927230118_1 のコピー


衛兵少女リズとの会話からイェアメリスの足跡を掴んだ彼女たちは、ホワイトランへの滞在も最小限で済ませ、さっそく追跡を再開した。幸いなことにこの街はスカイリムの地理的中心で、様々な方面からの馬車が発着し、多くの旅人が行き交っている。城門前の市場は情報収集にもってこいだった。大して苦労せずに、彼女たちはすぐ、"サレシ"という単語がスカイリムの東の方にある農場の名前であることを突き止めた。


20180927225819_1 のコピー


目的地の農場はホワイトランから見て、霊峰である世界のノドを越えた反対側にある。一番近いと思われるのは、ホニングブリュー蜂蜜酒醸造所からヴァルトヘイム、アモル砦までをホワイト川添いに下り、そこから今度はダークウォーター川の支流を遡ってサンガードの街目指して登ってゆく道であった。
脇目もふらずその案に飛びつきたいところであったが、間の悪いことにこのルートは途中の街道に問題があった。ウルフリックを追跡する帝国軍の部隊でごった返しているのだ。テュリウスの軍は、ホワイトラン領への浸透作戦を進めていたストームクロークの野営地を見つける度、次々に潰しながら燎原の火のごとく東へ進んでいる。この道は何時どこでストームクロークとの戦闘に巻き込まれるか予測がつかない危険な道であった。


彼女たちは東行きの馬車を探したが、ホワイトランに屯している御者たちはみな、ストームクローク領に向かって馬車を走らせることに尻込みするのであった。


20180927225649_1 のコピー


「せっかく半日の差まで迫ってたのに、これじゃぁまた差が開いちゃうよ」
姉との距離を詰めることに拘るブラッキーは、徒歩でも帝国軍の中を突っ切ることを主張したが、御者を前にしばらく粘っても、成果は一向に上がらない。仲間に助けを求めてみたが彼らも、


「同じ関所でも、もう少し田舎のほう・・・何も起きていないところで越える方がいいと思うな」
「そうだな、わざわざ戦場を選んで州境を越えようとするのは愚か者のすることだ」


と逆にブラッキーを窘める始末であった。


「なんだよ、お前たち偉そうに。ボクの旅について来させてやってるだけなんだぞ。だったら代わりの方法見つけるの手伝えよ」


ブリブリ怒りながらまくし立てていたのだが・・・エリクが乗せてもらえる馬車を掴まえたのはそんなときであった。


20180927225831_1 のコピー


「おーい! こっちの馬車が発つってよ。来なよ!」
このままここで足踏みし、出発を遅らせ続けることだけは避けたい。渡りに船とばかり、ブラッキーはその話に乗ったのだった。


彼女たちが掴まえたのは、リバーウッドからヘルゲンを通り、そこから世界のノドの南側を抜けてリフテンに向かう馬車であった。リフテンまでは行かず、途中のサンガード辺りで下ろしてもらえばサレシ農場はすぐのはずだ。


20180928001113_1 のコピー


ホワイトランの東側一帯はウルフリックを追撃する帝国軍で其処彼処が慌ただしかったが、南側は平和そのもの。最初は御者も多少は構えていたのだが、一度も兵士達を見ることもなくリバーウッドを通過する頃にはその緊張もどこかに飛んで行った。そのまま彼女たちは同日中にヘルゲンに着き、宿屋で一泊した次の日、再び東に向かって出発、そして今ここに至るのだった。


20180927001253_1 のコピー


整備された街道は馬車にとっても走りやすい。一日経って予想していたよりも良いペースで進んでいることが分かると、不機嫌だった彼女の気分もようやく晴れ、周囲を気にする余裕が生まれてきた。


「おっちゃんはこの辺りは詳しいの?」


「ん? そうだな、もう少し西の、ファルクリースの方は行ったことがあるが」


20180926231617_1 のコピー


いま彼女たちが進んでいる道・・・ジェラール山脈の北側を東西に走る街道は、ハンマーフェルの国境都市エリンヒルに端を発し、ファルクリースを越え、ヘルゲンでペイルロードと交差する。そしてそのまま世界のノドの南端を越え、イヴァルステッドとサンガードの街をかすめるようにリフテンに向かっていた。そしてその先はシルグラッド峠を越えてモロウウィンドに入り、ヴェラニスの寺院を経て遥かエボンハートまで繋がっている。


Skyrim Map 2-Interlude4 のコピー


ここは東帝都社がまだ発展途上であったセプティム朝の前期に、陸上輸送の大動脈として栄えた街道で、4紀に入って船での輸送にお株を奪われて一度寂れていた。だがその後、帝国に帰属したファルクリースと、ストームクロークの勢力圏であるリフテンの小競り合いでまた騒がしくなり発展し、最近また戦の舞台が移動して静けさを取り戻しているという。


20180926222714_1 のコピー


御者が案内する街道の歴史を聞いて、ジャースが付け加えた。


「帝国とストームクロークの争いが、ドーンスターやモーサル近辺と言ったスカイリムの北側に移ったおかげで、静かになったんだな」


「おっちゃん、もうストームクロークのこと覚えたの? 頭のできが違うひとはやっぱすごいね。それだけ把握してれば十分だよ」


「ホワイトランでいろいろと聞いて回ったからね。本で読んだ過去の様子と、それらをつなぎ合わせてみただけさ。小説を書くのと同じだな」


a20180819235941_1 のコピー


ブラッキーは素直に感心した。
「戦いに関してはからっきしだけど、その知識だけはすごいよね。でも・・・それだけ知ってても、自分のことは思い出せないの?」


「さっぱりだ」


少女は、ホワイトランの城門近くで出会った占い老婆の勧誘を引き合いに出した。
「あの頭蓋穿孔ってやつ、試してみても良かったんじゃない? おっちゃんの記憶も戻ってたかもよ?」


20181001203438_1 のコピー


ホワイトランで、イェアメリスに残す手紙を準備しているときに、声をかけられたのだ。
「なんだっけ? たしか頭に穴開けたら特殊な力を授かるとか・・・、そんな感じのこと言ってなかったっけ?」


「眉唾だろう。そんな魔術は聞いたことがない」


「受けとけば良かったな? ・・・そうしたらボクも今ごろ、魔法をバンバン使えたり、空を飛んだりできるように・・・」


「ないない!」


「怖っ・・・! ブラッキーまで、辞めなよそんなの」


a20180819202451_1


横で聞いていたエリクとケイドは揃って身震いした。元農夫に鍛冶見習い、マジカに満ちたこの世界とはいえ魔術とは縁遠い世界に生きてきた彼らには、魔術と医術の境界はもちろん、その可能性と限界など想像も出来なかった。それは簡単な魔法しか見たことのないブラッキーも同じだ。


「でもあのばあさん、ずいぶんと自信ありげだったじゃないか」


「姉さん、好奇心が強いのも良いけど、過ぎると身を滅ぼすよ?」
鍛冶屋の息子はニヤニヤしながら、自分より背の低い姉貴分をからかった。


20180926224214_1 のコピー


「お前に言われたくないよケイド。それより・・・姉ちゃん達この道通ったのなぁ? おかしいなぁ。そろそろ追いついても良さそうなもんだけど。まさか内戦の中央を突っ切っていったとか・・・? アスヴァレンのあんちゃんが付いていてそれは無いか・・・」


「そうだね。戦場に突っ込んでいくなんて正気の沙汰じゃない。でも痕跡がないなら、別の道を行ったのかも。ま・・・、向かうところが一緒だったら、いずれ会えるでしょ。馬車で順調に進んでいる僕たちの方が先に着いちゃったりしてね。な、エリクもそう思うだろ?」


返事がない。


「エリク?」


20180926222638_1 のコピー


ブラッキーとケイドは、新米傭兵の方を向いた。彼は街道の先に何かあるのを見つけたようで、話には加わらず、しきりとそちらを見ている。そして仲間達が自分を見ているのに気付くと彼は、街道の先を指さした。


「八大神にかけて、なんだろう、あれ・・・?」


20180926222155_1 のコピー


街道脇に転がったそれは、ぐんぐん近づいてきた。道を進む彼女たちは、すぐにそれが横倒しになった馬車だと理解した。馬車の脇にはカジートの死体が無造作に転がっている。四体ほど。服装から見るに、スカイリムとシロディールを行き来しているキャラバンのようだ。緊張が緩んでいた御者も、さすがにそれを見ると表情を引き締めた。


「ああ・・・、俺らも気をつけなきゃならねぇな」


御者はそう呟くと、おっかなびっくり様子を見守る乗客達には構わず、馬車の速度を上げる。それは停めるつもりはないという無言の意思表示でもあった。


「この道も安全じゃないって事?」


20180926222212_1 のコピー


軽くアーケイの印を切ると、程なく馬車はその脇を通過した。


「帝国とストームクロークの戦いは別の場所に移ったが、両者の目の行き届かなくなったこういう場所では・・・分かるだろ?」


「ああ、なるほどね。山賊かぁ」


「・・・そう。最近多いんだよ。内戦にほだされた連中が活発化してる。お客さん達みたいな旅人は持ち合わせも少ないだろうけど、持ってそうな行商人なんかはよく狙われるんだ」


s20180815183938_1 のコピー


彼女たちが選んだ街道は内戦を避けるにはもってこいだったが、ファルクリース自体が深い森に包まれた州であり、さらにここはその中でも辺境だ。交代したばかりの首長シドゲイルの威光も、森の木々に遮られてこの辺りまでは届かない。結果、ファルクリース領内は山賊達の温床になっていた。彼らは移動する帝国軍やストームクロークの前には姿を現さない。実入りの少ない旅人なども素通りさせる。そうして忘れた頃にのこのことやってくる、獲物になりそうな商人を狡猾に狙うのだ。


「カジートのキャラバン? やられちゃったのか・・・物騒だなぁ・・・」


「ここだけの話な・・・」様子を軽く伺うと、御者は馬車の速度を元に戻した。「この辺り、スカイバウンドって言うんだけど、でかい略奪団の拠点があるんだとさ。まあ、俺たちが襲われることはまずないだろうが、それでも用心するに越したことはねぇわな」


20180926224251_1 のコピー


「そんなのには来て欲しくないな。山賊相手じゃ、ロリクステッドにいるのと変わらないもんね。冒険なんて言えないよそれじゃあ」


「あのなぁ、そういう問題じゃないだろお前。冒険で遭遇する相手は選べないっつーの。いいから、お前も手伝って反対側見張るんだよ」呑気なエリクに突っ込むと、ブラッキーは自身も木々の間に何か潜んでいないか注意するのだった。


「御者のおっちゃん、サレシ農場・・・サンガードまでは、まだ遠いの?」


「ここからだと、あと二日ってとこかな。明日の晩前には着くよ」


「二日かぁ・・・じゃあ、尚更急いだ方がいいね」


20180926224440_1 のコピー


この街道上で待っていれば、三日後には捕らえられたイェアメリスがこちらに向かってくるのだが、そんな姉妹達の運命はキナレスでさえも想像のつかないことであった。
再び馬車は速度を上げ、リフト地方を目指して疾走を開始するのであった。




・・・




御者の宣言通り二日後に、彼女たちはサンガードに到着した。


20180929010606_1 のコピー


ヘルゲンからの山道を進むにつれて気候は厳しくなっていったが、峠を越えてリフト地方に入ると季節は一旦秋に逆戻りする。リフト地方はジェラール山脈とイーストマーチの間に挟まれた、階段の踊り場のような高原だ。高低差の為いつも風が吹いているが、それぞれ縁である南端と北端部分でしか天候は乱れない。リフトの大半を占める中央部の大森林は、比較的穏やかな気候に恵まれていた。


20180929105558_1 のコピー


この辺りは西にそびえる世界のノドの影になるため、他より早く日が沈む。

そろそろ宿を探した方がいい時間になっていた。


しかし何よりもまず姉の行方を確認したいというブラッキーの主張で、一行は街を素通りして郊外のサレシ農場に向かった。


20180929104704_1 のコピー


トレヴァの川に掛かったサンガードの橋を渡って右手の低い丘を見上げると、農場の風車が姿を現す。その側に小屋が建っていた。


側道に降り積もる落葉を踏みつけて進むと、彼女たちはリフトの衛兵とすれ違った。巡回を終えて、サンガードの酒場でいっぱいやるのが待ち遠しいと言った様子だ。この辺りには戦火は及んでないのだろうか。ゲイル湖東岸は晩秋の落ち着いた雰囲気を漂わせていた。


20180929105400_1 のコピー


「あら、ごめんなさいセラ。今日はもう終わりなのよ。ニルンルートが欲しいのなら、明日にしてもらえると助かるわ」農場に足を踏み入れると、ちょうど畑仕事を終えたらしい女性が戻ってくるところだった。深い皺を刻んだそのダンマーの女性が、申し訳なさそうに声をかけてくる。


「ニルンルート?」
姉が求めている植物だが、正直なところブラッキーはどんな物か分かっていなかった。


20180929111855_1 のコピー


「あら? あなた買い物に来たんじゃないの?」


「ううん。サレシ農場って、ここのことだよね。あ、ボク、ブラッキーって言うんだ」
少女は精一杯礼儀正しくお辞儀をすると、ダンマーの返事を待った。


「あたしはアブルサ。このサレシ農場の主人よ。買い物でないとしたら、あたしに用かしら? それとも妹?」


「あっ、ちがうんだ。人捜しに来たんだ。ボクねえちゃんを探してて。イェアメリスっていうんだけど・・・」


「ああ!」
アブルサはポン、と手を打った。


a20180309002822_1 のコピー


「その娘なら知ってるよ。忘れるものですか。ニルンルートを山ほど買っていったお客さんだからね」


「やった! 掴んだ!」


ホワイトランで得られたわずかな情報を頼りにここまでやってきたブラッキーは、イェアメリスの足取りを再び捕らえて胸を撫で下ろした。期待に満ちた目で農場の女主人に尋ねる。「ね、ね。いつ? ねえちゃん来たのはいつ?!」


「あなた、イェアメリスの妹さん? エルフじゃないみたいだけど」


「血は繋がってないからね。ねぇ、いつ?」


「二日前よ」


ブラッキーは少し驚いたように仲間達を振り返った。


20180929112207_1 のコピー


「差が開いてるや・・・」
ホワイトランを出たときには半日の遅れだった。馬車を掴まえたブラッキーたちはかなりいい速度でここまで来たはずだが、イェアメリス達はそれよりも早くサレシ農場を訪れていた。そしてもう発ったという。


「そもそも、ねえちゃん何でこの農場まで来たんだろ?」


「あなたは違うみたいだけど、ここに来る人の目的なんてひとつしかないわ」


「さっきも言ってたニルンルートってヤツ? それなに?」


「たしか、貴重な錬金素材だって聞いたことあるよ」エリクが農場の奥の一角にしゃがみ込んで、何かを見ている。ブラッキーがそちらに目を向けると、そこには微光を放つ植物が植えられていた。


20180929113052_1 のコピー


「錬金術師じゃないあなたたちには分からないわね。彼女、東帝都社の仕事でニルンルートを仕入れに来たって行ってたわ」


「そんなこと手紙には書いてなかったよなぁ。・・・あ、すごい! 草が歌ってるよ」


畑の上で発光する植物たちは、フィーンという高い音を奏でていた。


s20171030012346_1 のコピー


「”さえずる株”と呼ばれるちょっと特殊な素材で、自生しているものしか存在しないの。ここ以外はね。・・・シロディール広しといえども、この植物を栽培できるのはあたしだけよ」


「この植物を買いに、はるばる旅してきたって? ん~・・・、なんだか島を飛び出す動機としてはしっくり来ないところもあるけど・・・」
ブラッキーは不思議な植物を興味深げに眺めながらも、首をかしげていた。


「でも、いま大事なのは行き先だね。次に行くところとか話してなかった?」


イェアメリス達は二日前の晩、アブルサ達と一緒に夕食の卓を囲んだ。弾む話の中、この後どうするのかをサレシ姉妹は聞かされていた。


a20180310013015_1 のコピー


「どうして、そんなに急いで追ってるの?」


アブルサは少し警戒したようにブラッキー達を見た。

ブラッキー達は急に現れた旅人たちだ。素性の分からない相手に、不用意に客の行き先などは伝えない方が良い。


「うん、それは・・・」ブラッキーは口ごもる。


前に訪れたイェアメリス達も変わった旅人であったが、ブラッキー達も充分に変な取り合わせだ。ケイドも思い出したように連れの先輩冒険者を見た。


20180929113125_1 のコピー


「そう言えば、お姉さんを追っていることは何度も聞いたけど、理由は聞いてなかったね」


「言う必要ないだろ」


「別に詮索しようって言うわけじゃないのよ。あなたたちが本当に彼女たちの知り合いなのか、確認したくて・・・」
リフトではまだ被害は出ていないが、他の地域では最近、戦に居場所を奪われた山賊達が旅人に扮して人里で悪さをするという話だ。ブラッキー達はとてもそうは見えないが、だとしても素性を明らかにしない旅人は信用ならない。


少女は少し考えると、荷物から手紙を取り出した。「ボクあまり説明するのうまくないから・・・」


a20170411233157_1 のコピー


=*=*=*=*=*=


ブラッキーへ


急にいなくなってごめんなさい。どうしてもやらなければいけないことができたので、ソリチュードに行ってきます。
すぐに戻ってくるつもりなので心配しないで。


そういえばあなた、旅をしたいって言ってたわよね。ちょうどいいチャンスが来るかも。もしあたしの予定が変わったら例の、ほら、私書証明を使って手紙を送るようにするわ。なので3ヶ月経ってあたしが戻らなかったら、ストロス・エムカイの事務所に行って手紙が来てないか確認してちょうだい。


錬金台の上に小屋の鍵を置くので預かっておいて。そしてたまにでいいから、部屋に風を通しておいて。多分ぷぅちゃんは放っておいても大丈夫だと思うけど、見かけたら可愛がってもらえると嬉しいわ。でもシチューにするのはぜったいダメよ。


あたしの大事な妹。愛してるわ。
冬になる前に、また同じ暖炉を囲んで食事できることを祈って。


イェアメリス


=*=*=*=*=*=


「・・・ってわけなんだ」


アブルサは手紙に目を通すと、少女に向き直った。


「彼女が島を出たのはいつ?」


a20170411220622_1 のコピー


たしか・・・薪木の月の真ん中らへんだったと思う。あまりに帰ってこないからソリチュードまで追っかけて行ったんだけど・・・」


「お姉さんを探しにスカイリムに来たってこと?」


「うん。もう冬だよね? 帰ってこないんだ」


黙っていたジャースが眼鏡を少し浮かせた。
「にしては、ずいぶんと差が短いな。ハイロックの外れからソリチュードまでは二週間以上かかる。冬になっても帰ってこないから追って出たのなら、まだ君はスカイリムにも辿り着いていない筈だ」


ブラッキーはイェアメリスを追ってすぐに島を飛び出していた。色々面倒なので、手紙を見たアブルサの反応に任せて話を合わせていたのだが、台無しにされてしまった。


20180929113718_1 のコピー


「あ~もう! だから頭いいやつは嫌いなんだ」
少女は投げやりな顔で小説家を睨みつけた。「空気読めない記憶喪失が。やっぱりホワイトランに置いてくるんだったよ」


アブルサは警戒を強めてしまうだろう。姉の行き先を聞き出すのは無理そうだ、と彼女は苦い表情になった。しかしサレシ農場の主の反応は彼女の予想外であった。


「あなた、気軽そうに見えるけど、警戒心が服を着ているのね・・・」
農場主のダンマーは手紙を返してきた。「セラ・・・あなた、心底心を許せる相手、いる?」


「なんだよ、居るよそれくらい。そんな多くはないけど、カグダン兄貴やウンガー師匠だろ、それにエドウィンのおっちゃんとか・・・」ブラッキーは少しふて腐れたように数人の名前を出した。


20180929113025_1 のコピー


アブルサは少し間を置き、息を吐くと自分を指さしておどけて見せた。
「まあ、・・・あたしも警戒しすぎかしらね・・・。モロウウィンドから疎開してきて、ここまで来るのに苦労したから、似た雰囲気を持つ人のことはよく分かるのよ」


「マラキャスにかけて、親に見捨てられて奴隷にされかかれば誰だってこうもなるよ」


「お姉さんは、あなたにとって大事な人なのね」


20180929115109_1 のコピー


彼女は肩に置かれたアブルサの手のぬくもりを感じた。


「・・・うん。ねえちゃんはボクに新しい生活をくれたんだ」


「その人がいなくなってしまったのね。それで居ても立ってもいられなくなって」


s20161030234223_1 のコピー


「・・・うん」ブラッキーは少し緊張を緩めた。「恩人でもあるけど・・・」


そして少しはにかむ。


「そんなことよりボクはねえちゃんが大好き。だからどうしても会わなきゃならないんだ」


s20161105223132_1 のコピー


それを聞くと、アブルサも釣られて笑顔になった。


「いいわ、信じてあげる」


彼女は警戒を解くと、イェアメリスから聞いた話・・・ダークウォーター・クロッシングからウインドヘルムを経由して船でソリチュードに戻る計画をしていた事を話しはじめた。


aSkyrim Map 2-13 - コピー のコピー


日が沈むのももうすぐだ。少し離れた所で、ケイドとエリクが、アブルサの妹と話をしている。


「あなたたちソリチュードから来たの?!」


「あ、いや、僕はロリクステッドで・・・」


「そっちのあなたは、ソリチュードって言ったわよね!!」


ブラッキーとの話が終わったアブルサは、妹と旅人達のやり取りを見て、またか、とため息をついた。
「ごめんなさいね、あの子、ソリチュードに行くのが夢で、いつもあんななのよ。迷惑じゃないかしら」


「迷惑? それはあいつら自身のことだから気にしないで。・・・あ、姐さんの妹も苦労のひとつかな?」


アブルサは軽くため息をついた。
「まあ、そのひとつであることは否定しないわ」


20180929121315_1 のコピー


ブラッキーもアブルサから伝染したようにため息をついた。
「こっちも似たようなもんだよ。これだけ雁首揃ってて、保護者役がボクだなんて信じられる? ボクはねえちゃん見つけたいだけなのに」


ダンマーの女性は無言で笑うと、自分の小屋を指さした。
「せっかくだし、夕食でもどう、セラ?」


「ごめん、魅力的だけどもう行くよ。少しでも早く合流したいから」


「・・・そうね。ダークウォーター・クロッシングまでは一日。急いで行けばサンガードでまだ馬車を掴まえられるかも」


「こっちは夜でも運行してるの? ホワイトランでは夜間は走らないって言ってたよ」


「あらそうなの? このあたりは交渉次第ね」
イーストマーチの馬車は村人達の兼業で定期便ではなかった。


20180929105730_1 のコピー


「分かった、行ってみる! アブルサの姐さん、ありがと!」


平和な農場でのひとときの夕食に後ろ髪が引かれないわけではなかったが、ブラッキーは辞退することにした。イェアメリスの足取りを掴んだ彼女たちは、サンガードまで駆け戻ると、宿の手配は取りやめて馬車に飛び乗ったのであった。




・・・




次の日の昼前、ブラッキー達はダークウォーター・クロッシングにやってきた。


20180929130534_1 のコピー


二日前にまったく同じ山下りをイェアメリス達が敢行していたとはつゆ知らず、彼女たちは丸一日馬車に揺られ、リフトの高地から州境を越えてイーストマーチまで駆け下った。川と温泉に挟まれたイーストマーチ最南端の村であるダークウォーター・クロッシング。馬車を降りた彼女たちは、皆一様に伸びをしてこわばった背筋をほぐそうとした。


早速聞き込みをはじめた彼女たちだったが、村はひとつのニュースで持ちきりだった。


20180929125628_1 のコピー


ソリチュードで上級王トリグを倒したウルフリックの一隊が、この村に来たと、そして捕らえられたというのだ。ソリチュード滞在中、ベイランドの家に居候していたブラッキーはウルフリックの起こした事件を目の前で見ていた。彼がトリグに剣を突き入れた瞬間、そして逃走の際に放ったノルドの声秘術・・・シャウト。どれもこれも簡単には忘れられるような光景ではなかった。


a20170813144130_1 のコピー


「ええっ! タロスにかけて・・・あのおっさん、捕まったの?」


「ばっ、馬鹿っ、ブラッキー! ダメだよ、そんなこと言ったら。ここをどこだと思ってるのさ」


「え? ここではタロスって言ってもいいんだろ?」


「そうじゃなくて、おっさん呼ばわりの方だよ」


a20180315145759_1 のコピー


村人の説明に驚いて変な声を上げるブラッキーを、エリクは慌てて窘めた。ストームクロークの支配地ではウルフリックは軍神タロスの再来と言われている。個人崇拝までには至らないが、悪く言うノルドは少なかった。暴言を衛兵に見咎められれば不敬罪を問われるかも知れない。


幸い、ダークウォーター・クロッシングは小さな村で、衛兵も目に付くところには居ない。しかし同じスカイリムとはいえ、ホワイトランとはずいぶんと雰囲気が違っていた。


「・・・でも、自分の領地まで来て捕まるなんて・・・無念だろうなぁ」


a20180315154942_2 のコピー


ソリチュードから遠く離れた地に立ち、ブラッキーは感慨深げに呟いた。
彼女は面識こそないが、無関係ではなかった。ウルフリックの潜入に巻き込まれてストームクロークの雇った攪乱部隊、闇の一党の"切り裂き"に目撃者として命を狙われたのだ。その後従士エリクールに捕まったり、共に捜索したり・・・様々なことがあった。
一国の首長にして反乱軍の指導者、姉を追いかける旅人・・・立場は天と地ほども違ったが、ウルフリックのことは他人とは思えなかった。


「おお・・・、ここに来るのは初めてだが、温泉が名物なのか」


a20180311172858_1


ジャースは村のあちらこちら、地面の裂け目から吹き出している水蒸気を見ては、眼鏡の曇りを取るのに何度もこすっていた。蒸気を利用して蒸し焼きを作ることが行われており、リーキやジャガイモ、鶏肉や卵などがいい匂いを立てている。


「温泉かぁ・・・今晩はゆっくり疲れが取れそうだよね」
水場前の広場に並ぶ屋台を物色しながら、エリクとケイドは興奮していた。


「あのなぁ・・・お前たち。遠足じゃないんだぞ。何しに来たと思ってるのさ。ねえちゃん探すの手伝ってくれないなら、置いてくぞ、ほらっ」


20180929131310_1 のコピー


10日間ある魔女祭も折り返し地点に差し掛かろうというこの時期。夕方まではまだ少し時間があったが、日の入りが早いため仕事も早めに切り上がる。ブラッキーとケイドは、こう見えても鍛冶職人の端くれだ。鉱山に自然と興味が向くのは仕方のないことであった。彼女は、村の脇にある出入り口から引き揚げてくる坑夫たちの中に、ダンマーが混じっているのに気がついた。


しきりと咳をしているそのダンマーに、声をかけてみることにする。


「どうしたの、おじさん。具合でも悪いの?」


ダンマーは話しかけてきた旅人らしき少女を目に留めると、立ち止まった。


20180929131723_1 のコピー


「ああ、セラ。薬を切らしてしまってね。・・・タロスにかけて、もっと薬が必要だ。鉱石に辿り着くのが難しくなっている。深く掘るほど、みんな肺の痛みを訴え咳をしているんだ」


男はソンダス・ドレニムと名乗った。


「ボクはブラッキー。ここには人捜しに来たんだけど・・・。具合悪そうだし、他を当たった方がいいかな?」


「いや、このゴールデン・ロック鉱山で働いてる者はみんな似たようなものだから」


「ゴールデン・ロック? この鉱山・・・金でも採れるの?」


ダンマーは自分が出てきた入り口を振り返ると頷いた。
「いや、金じゃない。でも金に化けるものは採れるぞ。ここで採れるコランダム(鋼玉)は、武器を強化するのに欠かせないからな」


20180929132502_1 のコピー


「でもそんな体調だったら、休んだ方がいいんじゃ無い?」


「気にすることはないさ。これは慢性だから、治るの待っていたら一生が終わっちまう。それに休むだって? そうはいかない。ここはストームクロークに鉱物資源を供給する大事な鉱山なんだ。ゴフ・・・他の鉱山が当てにならない今となっては、この鉱山の産出が彼らを支えていると言っても、か、過言じゃない・・・」
ダンマーの坑夫は自分の働く鉱山の重要性を鍛冶屋のたまご達に説明した。


20181006093800_1 のコピー


東帝都社と仲の良くないストームクロークは、鉱物・貴金属資源を領内の鉱山に頼っていた。


ショール・ストーンのレッドベリー鉄鉱山、マルカルスのシドナ銀山、そしてこのダークウォーター・クロッシングのゴールデン・ロック鋼玉、この3つの産出量が多い事で有名だ。


20181006093559_1 のコピー


しかし最近ファルクリースではストームクローク派だった首長のデンジェールが廃されて、後を継いだ息子のシドゲイルが帝国側に鞍替えした為、マルカルスからの銀を安全に輸送する陸路が確保できなくなってしまった。輸送が滞り、そしてタイミング悪くレッドベリー鉄鉱山も大量発生した蜘蛛の害で立ち入りが制限され、残されたのはこのゴールデン・ロック鉱山だけ、ダンマーはそんな事情を語った。


20181006103237_1 のコピー



「だから・・・少しでも産出を停めると厳しい罰則があるんだ」


「こんなになるまで働かせるなんて、ひどい奴らだね」


20180929131812_1 のコピー


「はは、ゲホッ・・・楽な仕事なんてあるかい? ストームクロークが勝ってくれるんだったら、苦労のし甲斐もあるってもんだ」てっきり抑圧への不平が出てくるものと思った彼女たちは、肩すかしを食らわされた。「ここは温泉のおかげで寒くないからまだマシさ。あとは粉塵さえなんとかなればな・・・」
ダンマーは軽く笑うと、鍛冶見習いを含む四人の旅人達をまじまじと見た。


「そいういえば、お前たちやけに熱心だが、鉱石に興味があるのか?」


ケイドは興味深そうに坑道入り口を眺めたまま、無意識に応えた。
「うん、だって僕ソリチュードのベイ・・・」


20180929134600_1 のコピー


「ソリチュード?」


側を通りかかったストームクロークの兵士が聞き咎めたのを見て、慌ててブラッキーがケイドを突き飛ばした。よろめいた鍛冶屋の息子が非難の声を上げる前に、彼女は大声で遮った。


「ちがうちがう! ソリチュードのベッドロールと、ウインドヘルムのエールは旅には欠かせない品だって、そう言おうとしたんだよ。なっ、そうだよな、ケイド!」


「そんなの聞いたことないよ!」


「そ・う・だ・よ・な?」
ブラッキーが怖い顔をして睨む。更に後ろからエリクにも蹴りを入れられて、ケイドはようやくまずいことを言いかけた事に気付き、口をもごもごさせた。


「あ、ああ・・・」


20180929134042_1 のコピー


幸い、衛兵にもソンダスにも気付かれなかったようだ。


「・・・まあいいさ。お前たち旅人なんだな。ゴホ・・・」坑夫は呼吸が落ち着くのを待って言葉を続けた。「こういうのは初めてじゃぁない。鉱石の塵に対処する為の薬があるんだ。ちょうどウインドヘルムにその援助を要請しようとしていたところだ。グッ・・・」


「ウインドヘルム?」
エリクとケイドは顔を見合わせた。


「あんちゃんだったら早かったのにね」
ブラッキーはアスヴァレンを思い浮かべていた。彼ならこの男に効く薬を何か調合してやることも出来たかも知れない。


aS2SS-Skyrim-PE50t1-20161113141133245 のコピー


「あんちゃん?」


「ん、ああ、ボクらの探し人の中に、おっちゃんと同じダンマーがいるんだ。テルヴァンニのローブを着けてるから目立つと思うんだけど、見てない? 錬金術師なんだよ」


坑夫は思い出したように声を上げた。
「ああ、あいつ錬金術師だったのか! それなら頼めば良かった!」


「おじさん、知ってるの?!」


「ああ、ゴホッ・・・たしか、漁師達と何やら交渉していたようだが・・・」


20180929141853_1 のコピー


ソンダスは旅人達を見た。
「もし、役に立つ情報だったと言うんなら、礼代わりにひとつ頼まれてくれないか? なに、そんな難しいことじゃない。ただの伝言だ。 ウインドヘルムの錬金術店にクィンタス・ナバレという錬金術師がいる。その男に伝えて欲しいんだ。て、手紙は書くから」


一気に喋ると息切れしたように荒い息を吐く。その様子に四人は顔を見合わせた。


20181005234820_1 のコピー


エリクが依頼を受けたそうにしているのが手に取るように分かる。無理もない。冒険者になって初めて人にものを頼まれたのだ。彼は、期待を込めた目でブラッキーを見た。
「僕等がこれから行くの、ちょうどウインドヘルムだよね」


ジロリと見られてひるんだエリクは、助けを求めるようにもう一人の鍛冶屋を見た。ケイドは心得たと言うように頷くと、駆けだし傭兵に加勢した。


20180929134954_1 のコピー


「ブラッキーの探しているお姉さんも、その連れも錬金術師なんだろ? だったらウインドヘルムでそのお店に寄るかも知れない。いいんじゃない? 情報収集がてら行ってみない?」


ブラッキーは少し考えて頷いた。断りたいところだが、目の前でゴホゴホ咳をしているダンマーを見ていられなかった。
「ま、いっか・・・、そうだね。ウインドヘルムで探す場所に加えるだけだし・・・」


「そうだよ、手伝ってあげようよ!」


「わかった。うん、いいよ、その伝言持っていってあげる」
少女は頷くと、思い出したように手を打った。
「あ、あと、おじさん坑夫なら、こんな鉱石見たことない?」


a20170411231357_1 のコピー


ブラッキーは荷物から、例の、不思議な光を発する丸い鉱石を取り出した。


キルクモアの地下室で見つけ・・・座礁したアイスランナーの積み荷にも混じっていた石。更にはホワイトラン平原の戦場跡にも同じものが落ちていた。


初めて見つけて以来、彼女の行く先々で散々遭遇する謎の鉱石であった。


20180929141055_1


ソンダスは石を受け取ると、まじまじと観察した。


「ゴホッ・・・。なんだこれ? 凄いな。光ってるじゃないか。それに・・・ずいぶんと表面が脆い・・・灰の成分で出来ているのかな・・・」


「灰と言えばモロウウィンドだよね。ダンマーだったら詳しいかなって思って」


ソンダスは首を振った。
「すまんね。オレはダンマーと言っても、この地で生まれた疎開組の二世だ。生まれてこの方、ずっとスカイリムにいるんだ。親父たちが元気なうちは、ウインドヘルムの灰色地区に住んでいたんだ。・・・ということで、ケホケホ・・・実は本国には一度も行ったことないんだ」


20181005235433_1 のコピー


「それでタロスを崇拝していたんだ」


「ああ、モロウウィンドの話はよく聞くよ。悲惨な土地らしいね。両親はヴィベク神やや女神アズラを信仰していたが、俺には遠い神様だ。ゴホッ・・・ここで住むならタロスが一番ご加護有りそうじゃないか」


「そのタロスもさ、最近はちょっとややこしそうだけどね」


「ああ・・・、白金協定だとかだな?」


a20180820101003_1 のコピー


「とはいえ、イーストマーチにサルモールは来ないさ。ウルフリックが頑張ってるからね。他の土地はまあ、気の毒だが、ストームクロークがソリチュードを落とすまでの辛抱だな。ごほっ・・・」


「う・・・うん。おじさん、呼吸がひどいよ」


「ああ・・・もう喋らない方が良さそうだ。すまんな」
そう言うと、彼は近くに腰掛け、メモを書き始めた。


20181006094447_1


=*=*=*=*=*=


クインタス


もっと薬が必要だ。鉱石に辿り着くのが難しくなっている。深く掘るほど、みんな肺の痛みを訴え咳をしている。


ソンダス・ドレニム


=*=*=*=*=*=


「初めてじゃないからな。これを見せれば、あとは向こうで手配してくれる」


ソンダスの呼吸も辛そうだし、この話もこれ以上立ち入らない方が良さそうだ。彼女たちはおとなしく、ダンマーが伝言を用意するのを待ち、手間賃30セプティムを受け取った。エリクは初依頼に意気込みをみせて頷いている。


アスヴァレンを見かけた坑夫が居るというのなら、イェアメリスたちがどちらに向かったか知っている村人も居るかも知れない。もう何人か別の住人に当たって見ようと考えていると、さっそく若者二人は脱線していた。


s20180311174117_1 のコピー


「今日はもう上がりだ。今夜はスローターフィッシュの丸焼きがあるらしいぞ」


通りがかりにそんな話し声が聞こえて、エリクとケイドは酒場宿に吸い寄せられていった。


「食べてこうよ!」


「バカ、急ぐって言ってるだろ? 半日遅れが二日遅れになっちゃったんだ」


「でも、もう漁師も帰っちゃってるよ。酒場に来てるかも知れないよ?」


「勝手にしろ」


毒づいて見せたが、二人の言うとおりだ。焦る気持ちを抑えつけながら、彼女は渋々ダークウォーター・クロッシングで一泊することにした。




・・・




次の朝早く、ブラッキー達は村の中央にある、ホワイト川の沢の桟橋に来た。昨晩酒場で漁師を見つけることは出来なかったが、この村で漁をすると言ったらまずはこの場所から船を出す。ここに来れば間違いないはずだと教えてもらったのだ。
彼女たちは漁に出ようとしている二三人を呼び止め、アスヴァレンと話をしたという艀持ちの漁師をなんとか尋ね当てた。


20181006095341_1 のコピー


「え? 乗らなかったの?」


「あんな騒ぎがあったからねぇ・・・」
漁師が言っているのはウルフリックの捕縛の事件だ。「なんだか知らねぇけど、アイツら来なかったぜ。その先?・・・知らねぇよ。まったく、こっちはいい迷惑だぜ」


その漁師は憤慨したように唾を飛ばした。せっかく艀を出してウインドヘルムまで運ぶ交渉をしたのに、約束を反故にされたというのだ。イェアメリス達は確かにここまで来た。サレシ農場からの線は繋がった。しかし次の移動手段は分からなくなってしまった。


「じゃあその艀、代わりにぼくらが・・・」


「だめだめ、これから漁なんだ。他を当たってくんな」


ダークウォーター・クロッシングでは漁師達が人運びの艀業を兼ねていた。客がいないときには朝早くから漁に出てしまうため、基本的に艀の確保・・・予約は前日までにしなければならない。アスヴァレン達を乗せ損なった漁師の艀が出てしまうと、村に待機している舟はなくなってしまった。残念ながら川下りは無理そうだ。


20181006095306_1 のコピー


「メリス姉ちゃん達、どうしたのかな」


「足取りは失っちゃったけど、お姉さん、ニルンルートを手に入れたから、あとは帰るだけなんでしょ? その、なんとかって島まで」ケイドは姉貴分の様子を見て、西の方を見た。


「キルクモア? 島には事務所なんてなかったよ」


「じゃあ、東帝都社の仕事なんだったら、最寄りの事務所に向かうんじゃない? わかんないけど。帝都に居たジャースさんなら何か知ってるかも」


呼ばれた物知りの小説家は記憶を手繰った。彼は頭を振ると、口の端だけで微笑む。大丈夫、この質問に関する部分は失われていない。彼は自信を持って北を指さした。


20181006115917_1 のコピー


「私が知る限りでは、スカイリムにおける東帝都社の拠点はソリチュードとウインドヘルムの二カ所だ」
「じゃあウインドヘルムだね。アブルサさんもそう言ってたし」
ウインドヘルムで船を掴まえる・・・イェアメリスたちはそのように計画していたという。確信が持てない以上、可能性の高そうな場所を当たるしかない。


「そうだね。とりあえず北に向かうか」
何か引っかかるものを感じたが、彼女たちはダークウォーター・クロッシングの北側、温泉地帯を縦断することにした。


20180929130755_1 のコピー


イーストマーチの中央部一帯は火山性の土地で、ところどころに間欠泉などがあり蒸気が噴き出している。ダークウォーター・クロッシングはその南の外れであった。ブラッキー、ケイド、エリク、ジャースの四人は、温泉につかる村の訪問者達を横目に、ぬらっとした独特な質感の岩に何度か足を取られながらも温泉を突っ切ってゆく。


「なぁ、なんだかズブズブ気持ち悪くないか?」
ケイドは一歩毎にガボンガボンと音を立てるお湯浸しのブーツに不満を零していた。


「良かったじゃん、念願の温泉に入れて。嬉しいだろ?」
ブラッキーの皮肉に対して恨めしそうな目を返す。


「いや、温泉って言っても、こう言うのじゃないよ、もっとこう・・・なぁ」


20180929153647_1 のコピー


エリクも大きく頷いている。
「せっかく、お尻の痛みも治るかと思ったのに」


「なに? おまえ痔なの?」


「ちがうよ! 昨日一日じゅう、馬車にゴツゴツやられてカチンコチンなんだって。みんな良く平気だよね。温泉浸かれば治ったのに」


「浸かれなかったのは自分のせいだろ」


昨晩、ダークウォーター・クロッシングの宿屋に泊まった一行は、食事の後軽く一杯やったのだが、安酒が合わなかったのか、ケイドもエリクも酔い潰れて寝てしまったのだ。そのためせっかくの温泉宿にもかかわらず、湯に浸かることが出来なかったのだ。


「自業自得だろ。お前らのひどい鼾ったら、聞かせてやりたいぐらいだよ」


20180929153747_1 のコピー


ブラッキーもブーツに入ってくるお湯に難儀しながら歩いていた。少しずつお湯の池を渡ってゆく途中、エリクが鍛冶屋の息子の腕をつついた。


「おい、ケイド、あれ見て見ろよ」


「おお! 凄い!」


振り向いたケイドの視界に飛び込んできたのは裸の女性であった。


20180929153828_1 のコピー


「あ! あっちも。いいじゃん! やっぱ温泉はこうじゃないとな!」


この温泉では当たり前なのだろうか、男も女も裸で堂々としている。

思い思いの場所で裸でくつろいでいるのは湯治客なのだろうか。二人の若者は鼻の下を伸ばしながら、立ち止まるとニヤニヤしている。


ブラッキーは皮肉たっぷりに若者達を見て言った。


20180929154341_1 のコピー


「そんなに女の人の裸が見たいんならいいよ、でもボクは待たないからね」


「あ、待ってくれよ、行く行く、行って・・・」


ブラッキーの怖い顔を見たケイドは慌てて歩きを再開した。


a20180701154634_1 のコピー


「エリク、あんまり見てると、あの可愛い衛兵さん・・・リズちゃんだっけ? に怒られるんじゃないの? あ、それとも、ロリクステッドに居たソーニャ?」


「なんだよ、自分もニヤついてたくせに」


「二人も彼女がいるなんて、エリクはずるいなぁ・・・」


a20180630171813_1 のコピー


「彼女じゃないって・・・じゃあ、ケイドはどんな娘が好みなのさ?」


鍛冶屋の息子も夢見るような顔をしている。
「僕? 僕は大人のお姉さんがいいなぁ。出来れば妖艶な感じの」


「私も妖艶なお姉さんが好みだな」
朴念仁に見えたジャースも話に乗ってきたのを見て、ブラッキーは湯気に霞む天を仰いだ。こいつら揃って温泉でのぼせたんじゃないか・・・彼女は呆れを通り越して諦めの表情になっていた。


20180929154430_1 のコピー


「なあ、ジャースのおっちゃん?」


「なんだい、ブラッキー」


「ボク、なんだか無性に腹が立つんだけど、あいつらの代わりに蹴ってもいい?」


「八つ当たりかい? 冷静な導き手の君が珍しい」


「なんだよ、嫌味かよおっちゃんまで。・・・導き手って、ボクの方がねえちゃんのとこまで導いて欲しいくらいなのに」


20180929155044_1 のコピー


眼鏡で表情の読めないジャースだったが、口の端が上がっているところを見ると笑っているようだ。
「まあそう怒るものでもないよ。敵が現れたり、何かに襲われて足止めされたりするより、よっぽど旅は捗っている、そう考えたら気分も晴れるのではないかね?」


この記憶喪失は頼りになるのかならないのか、時々分からなくなる。ブラッキーは半分納得がいかないような表情で頷いた。


「まあ、おっちゃんの言うとおりなんだけどさ。はしゃいでいるアイツらを見てるとなんか腹立たしくて」


「なんだ、混じりたいんだな?」


20180929161600_1 のコピー


「ちがうって! 柄じゃない!」
そういうブラッキーもまだ十代後半、場数は踏んでいたが、平和な暮らしであったら遊びたい盛りの年頃であった。
彼女は発破をかけるように仲間を追い立てた。


「何? もうへばっちゃったわけ? 鍛冶屋も農夫も大したことないね。ジャースのおっちゃんの方が体力あるじゃん? 別にボクはいいんだぜ。ムラルキのおやっさん、ベイランドのおっちゃんに、あいつら体力ないから途中で帰しました、って報告しちゃうよ?」


「馬鹿にしたな!」
「ほらっ、まだ歩ける、行こう!」


20180929162325_1 のコピー


温泉地帯を通り抜けると、足元は再び固い岩場に戻った。まだところどころから硫黄の匂いの強い蒸気が吹き出しており、地表付近は乾いた土がひび割れている。下草や地衣類が散見されるが、この高温では育ちにくいのだろう。枯れた植物もあちこちに見られた。


「同じダンマーでも、色々な人がいるね。サレシの人みたいにモロウウィンドから避難してきた人もいれば、さっきのソンダスみたいなダンマーらしくないのも」


ケイドがふと、ダークウォーター・クロッシングの村で会ったダンマーのことを話題に出した。
「そう言えばブラッキー話によく出てくる、アスヴァレンって人はどんなダンマーなの?」


a20170401181311_1 のコピー


「錬金術師なんだけど、凄く色々知ってて、弓も魔法もうまいんだ。力も強い。・・・ちょっと爺臭いところもあるけどね」ブラッキーはアスヴァレンのことを表現しようと、島で一緒に行動した時のことを思い出した。


「お年寄り?」


「さぁ・・・たしか200歳以上って言ってたけど、エルフは長生きだろ。見かけはお前たちとそんなに変わんないよ」


「200年も生きてまだ若いの? エルフってずるいなぁ。魔法だけじゃなくて、力も強いんなら僕らマン(人間)はいいこと無いじゃん」


「まあ、アスヴァレンのあんちゃんが強いのは、半分ノルドの血が入っているせいだと思うけど」


a20161229174642_1 のコピー


「そんなにすごい人が一緒にいるなら、僕たち追わなくても大丈夫なんじゃない? 不要なんじゃ・・・」


「そういう訳にはいかないの」


「なんで?」


「子供は知らなくていい事情が色々あるんだよ」


「ひどいな、子供扱いかよ」


それっきり、ブラッキーは黙り込んだ。


s20170411231634_1 のコピー


姉において行かれた後、島の地下室で見た日記を思い出す。イェアメリスの母、錬金術師イリアンの半生を綴った日記、その中に書かれていた姉のこと、そして島の装置・・・


"あの装置って・・・"


"どうしよう・・・追いかけなきゃ! ねえちゃんが死んじゃう!"


(ねえちゃん・・・最後に魔法使ったのはいつだろう・・・)


a20170411230100_1 のコピー


彼女はしばらくの間、ケイドが話しかけても返事をしなかった。


ブラッキーとケイドのやり取りの向こうで、エリクとジャースは少し先を歩いていた。

先ほどまでは賑やかだった駆けだし傭兵は、故郷とは違う変化に富んだ景色に目を奪われおとなしくなっていた。彼は目に入るものすべてを見逃すまいと、常にきょろきょろしていた。


20180929161459_1


「うおっ、これ凄いな!」


そのエリクの声でブラッキーは物思いから引き戻された。何かを見つけたようで、エリクが叫び声を上げている。彼は興奮してジャースにまくし立てていた。


「マンモスの骨? 頭だけでも僕等よりおおきいぞ! それにこの井戸みたいなの、何だろう?」


記憶喪失の小説家は、その井戸らしきものに手を這わせた。ケイドが寄ってくる。
「アイレイドの井戸のように見えるが・・・ちがうな。これはこの前話していたドルメンだ。実物を見るのはずいぶんと久しぶりだな・・・ほら、水の中に祭壇の縁が見えるだろ。デイドラ文字が彫られてる」


20180929161619_1


「デイドラ?! うわっ、危ない所だった! ジャースさん、触っちゃって大丈夫?」


「もう機能は停止しているさ。それに危ないって言えば、君が戦場跡から持ってきたあの剣の方がよっぽど危険だと思うが」


「大丈夫だよ。ちゃんとアーケイの司祭に祈祷してもらったし。ねぇそれより、ドルメンって何なの?」
エリクは見るもの見るもの興味津々だった。


「ここはな、かつてモラグ・バルが・・・」


20180929161724_1


ジャースは前にブラッキーとケイドに聞かせた話を繰り返した。小説家の歴史講義が始まると、少女達も足を止めて、丁度昼食にいいタイミングだと言うことで、暫し休憩に入るのだった。




・・・




その後も彼女たちは歩き続け、北へ北へと進んだ。
距離は捗っただろうか? もうこの辺りは蒸気の噴き出す地面の割れ目もかなりまばらになっている。日はだいぶ傾いており、辺りの気温が急激に下がってきていた。
夜通し歩けばあるいはカイネスグローブに辿り着く事もできるかも知れないが、慣れない悪路続きでそれはあまりいい案とは思えなかった。どこかで休み必要がある。人里離れたイーストマーチの荒野では宿にあり見込みもない。そろそろ夜営のことを考えなくてはならない時間になっていた。
行く手に小高い山が立ちはだかる手前で、一行は暫し立ち止まった。


20180929162616_1 のコピー


「とりあえず北だけど、山が邪魔だね、どっちからまわるのがいいかな?」
ブラッキーは隣を歩いているエリクに尋ねた。


「左の方、空が暗いよ」


「アズラ様がお怒りって?」


「さぁ、どっちにしろ、雪雲かも知れないから、僕は右回りの方がいいと思うな」


「うん、木々が見える向こうの方、・・・夜営するにしてもここじゃ丸見えだから、森の中が良さそうだね」


一行は岩場を抜けると、夕暮れの森に足を踏み入れた。背の低い雑草を踏みしめ、倒木を避けながら奥へと向かう。しばらく進むと空き地に出たが、急に霧が深くなってきて、彼女たちはすぐに方角が分からなくなってしまった。


20180929172856_1 のコピー


「困ったな・・・これじゃ北が分からないぜ。どうする、ブラッキー?」
エリクは不安を悟られまいと、気丈を装っていた。


「そうだね・・・こういう時は進のやめる」


「やめるって?」


「そう・・・ここで夜営だよ」


彼女の提案により、四人は霧の立ち込む森の奥深くで夜営をすることになった。エリクに手伝わせながら手際よくベッドロールを並べるブラッキーの横で、ケイドとジャースは小さな火をおこす。


準備が出来た頃にはもうすっかり日は沈んでおり、辺りは真っ暗だった。ホー、ホーというフクロウの地鳴きが聞こえたと思うと、何かが羽ばたいて飛び立つ音が響いたりする。


20180929181702_1


「視界がこんなに悪くては、進むに進めないな、下手に動いて池にでも落ちたりしたら事故になる」

放って置いても消えない程度に育った焚き火を見て、ジャースは一息つくと思い出したように聞いた。


「そういえばさっきの・・・山の向こうに見えたあの像はなんだ? スカイリムでもアズラが信仰されているのか?」
森に踏み込む少し前、左手前方の奥、アンソール山の外れに特徴的なシルエットが見えたことを彼は言っていた。ウインターホールド南部の山中にそびえるアズラ女神像だ。


a20180116223119_1 のコピー


「イーストマーチにはモロウウィンドから逃れてきたダンマーが沢山いるんだよ」
ケイドが説明した。「レッドマウンテンの噴火で住めなくなっちゃったからね」


「なんだって? レッドマウンテンが?!」


「うん、それに南の方はアルゴニアンの侵攻で占領されちゃってるから、ダンマーは故郷を失ったようなものだよ」


「詳しく聞かせてくれ!」


20180929182944_1


ジャースが居た第3紀の終わり頃はイリアック湾を挟んだハイロックの内戦があったとは言え、まだまだ帝国は盤石であった。モロウウィンドの三柱の現人神は帝国と同盟を結んでいたし、深淵の暁の狂信者達も蔓延ってはいなかった。


帝都の図書館には及ばないが、ソリチュードの吟遊詩人大学の蔵書で学んだケイドは、自分よりも物知りの筈のジャースが感心しながら自分を見るのを感じ、少し自慢げに語って聞かせた。中でも小説家の興味を引いたのはオブリビオンの危機、赤い年に起きたモロウウィンドの壊滅、そしてアルドメリ・ドミニオンの再結成と大戦の勃発であった。小説家は一言も聞き漏らすまいと、鍛冶屋見習いの言葉に真剣に耳を傾けた。


20180929181513_1


野営の準備を済ませたブラッキーとエリクも合流してくると、一行は焚き火を囲んで暫しの間、物知りケイドの話に聞き入るのであった。


「さて、そろそろ眠くなってきたけど、見張りの順番はどうする?」


夜の食事も済ませてしまうと、彼らは生あくびをかみ殺しながら、見張りの順番を決めることにした。
「こんな霧だからね、ちゃんと見張っとかないと何が起こるか・・・じゃぁ、最初は僕に任せてくれ」


「エリク、初めてのお使いで張り切るのはいいけど、肩の力抜かないと疲れちゃうよ」


「お使いとか言わないでくれよ。難易度は少しずつ上げてけばいいだろ」


「そんな都合よく行くかよ」


20180929181645_1


鼻を鳴らすと、ブラッキーは脇に転がった。エリクは焚き火から少し離れた所に立ち、剣を地面に突き刺すと仲間に背を向ける。温泉地帯では暑いからと外していた兜を被り、成り立ての傭兵は完全防備で最初の歩哨に立った。


「おっ、なんかその兜かぶると、強そうに見えるじゃん」


「だろ? ノルドと言えば角兜さ、やっぱり」


「ま、しっかり見張ってよね、"虐殺者"くん」


20180929185043_1 のコピー


「任せとけって・・・でもホント、魔女でも出そうだよな・・・」


「ハハ。そんな伝承、イーストマーチにあったっけ?」
寝る準備を整えたブラッキーは欠伸混じりに応えると、目をつぶろうとした。


急に人の気配が現れて、彼らの背筋をぞくりと撫でる。軽口をたたき合っていて、彼らはそのものの接近に気付くことが出来なかった。・・・霧で姿は見えない。


嫌な寒気を感じて飛び起きたブラッキー。その様子に休息を妨げられたジャースとケイドも、何事かと集まってくる。しかし彼女たちはその後すぐに、まるで金縛りに遭ったように、微動だに出来なくなった。剣を握りしめたエリクを先頭に、彼女たちは闇の中に目を凝らした。


20180929185423_1 のコピー


風で霧が少し流される。
霧が晴れると、弾かれたように彼女たちは動けるようになった。
・・・双子の月明かりに照らされ、何者かが空き地の縁に立っている。四対の目がその人物に注がれた。


「居たっ! 魔女だ!」


最初に声を上げたのはジャースであった。


20180929191908_1


「ば~か、冗談言ってるんじゃないよ。そんな都合良く、雰囲気に合わせて魔女なんて・・・」


ブラッキーの口も途中で止まった。


「ホントだ・・・魔女だ・・・」


影を纏った女が、焚き火の火野すぐ外側に立っていた。


20180929191224_1 のコピー


「ボ・・・ボク、まだ寝てないよね。これ現実だよね」


「あ、ああ。こうして私と会話できると言うことは、君は寝ていない、ブラッキー」


「おっちゃんなんでそんな冷静なのさ。それより、ねぇ・・・なんかヤバい感じ? 今ってたしか魔女祭の最中だっけ?」
何かの禁忌を犯してしまったのだろうか? 魔術的な備えを何も持っていない彼女たちは、影の女が寄ってくるのをただ、見つめることしか出来なかった。 


20180929191213_1 のコピー


エリクは剣を握っているが、身動きできなかった。すると女は四人の中で先頭に立つ彼の目の前に来た。フードの奥が影になっている。その中から一対の目が光る。


「こんな人里離れた森の中で、ヴァルプルギスの炎を焚くものではなくてよ。宵闇は宵闇のままへ。無粋だわ」

鈴のような澄んだ女性の声がフードの中から響いてくる。


「・・・でも・・・」


20180929191159_1 のコピー



何かされることを覚悟したエリクは兜の中で目を瞑った。しかし・・・


「そんなことはいいわ。それよりダーリン! 帰って来るのを待ってたんだ。さあ、この愛を完成させよう!」


思いもかけない言葉を吐きながら、魔女はエリクに飛びかかった。


20180929192703_1 のコピー


「そうなんでしょ? 結婚する準備が出来たんでしょ! さぁ! そんな兜なんか取って」


「いや、僕は・・・」


すると、女の影が揺らめいたように見えた。腹の底に響くような恐ろしい声に変わる。

「何だって? さては黒い羽根のエスメレルダなんかに・・・! あの女にあんたは渡さないんだから!」


20180929211804_1 のコピー


そう言って女は、エリクの兜に手を伸ばすと、そこに生えた角を掴んだ。


「わぁ! エリク!!」
仲間達は一瞬、エリクの首がねじ切られたかと錯覚した。投げ捨てられた兜が消えた焚き火の脇に転がった。


「なっ?!」


・・・寸での所で紐を緩めていたエリクは、首を失うことは免れた。


「ちょっ・・・人違いじゃ・・・」


20180929213506_1 のコピー


兜の下に見知らぬ顔を見つけた女は、少し驚いたように、エリクを見、次いで仲間達を見回した。そして最後に一言漏らす。


「あら?」


呆気に取られたエリク達は、口をきくことも忘れて、女がフードをのけるのを見守った。
月明かりに照らされて銀色に輝く髪が零れると、思わずケイドはため息を漏らした。女は再度、首をかしげて尋ねた。


「あなたたち・・・だれ?」


目の前には、銀髪の美女が立っていた。
魔性の感は拭えなかったが、少なくとも言葉は通じる。そのことに安心したわけではないが、呪縛が解けたブラッキーは、エリクの代わりに口を開いた。


「お姉さん、だれ?」


「モイラよ」


20180929215118_1 のコピー


「その羽根綺麗だね」女が纏う、羽根飾りを指して言った。「ここはどこ?」


「ありがとう。ここはウィッチミスト・グローブよ。あなたたち、どうしてここに来たの?」


ブラッキーは少しだけいつもの調子を取り戻してきた。
「ボクたちはウインドヘルムに行きたくって・・・ここは偶然通りかかっただけなんだ」


「迷い人ね。・・・そこの子、紛らわしい兜だったからあの人と勘違いしてしまったわ」


「あの人?」


羽根飾りの女は自らの左手を右手で覆うように握りしめた。指の隙間から、指輪の光が漏れる。


20180929215154_1


「この指輪をくれたの。結婚しようって」
女は気持ち頬を染めたように見えた。そして軽く夜空を見上げると、慌てたように叫んだ。
「あっ、いけない! 明日は大事な日なの! もう準備しなくちゃ・・・」


女が一歩踏み出すと、いままでの勢いが嘘のように、焚き火がフッと消えた。急な闇に目がついていかずに彼女たちは狼狽する。モイラは身を翻すと、闇の中に溶け込んで消えてしまった。


「おい、今の・・・」
何か言おうとしたブラッキーを、強烈な眠気が襲った。周りの仲間も皆一様に、崩れ落ちるようにその場に横たわる。


20180929215315_1


霧が再び深くなってきたくると、四人の旅人は時間を忘れて眠りに落ちるのだった。




・・・




「・・・っ、てて・・・」


背中をさすりながら、ブラッキーは歩いていた。東のヴェロシ山脈から太陽が覗きかけた頃、冷たく冷えた焚き火の脇で四人は目を覚ました。霧の去った森の朝、清々しい冬の寒気の中に射す美しい太陽なのだが、気分はまだ靄がかかったようであった。こわばった身体には地面の冷気が移って、やけに身体が痛い。


20180929221502_1 のコピー


ブラッキー達四人は気がつくと、消えた焚き火の側で朝を迎えていたのであった。
いまいちよく眠れなかった一行は、欠伸をかみ殺しながら森の外れに出た。カイネスグローブはもうすぐ先の筈だ。そこを越えればウインドヘルム。行程は順調なはずだ。そう思い込むことにした。


「なんか、変な夢を見た気がして、寝不足なのは私だけか?」


ジャースは眼鏡の曇りを拭うと、森を背にして行く手に目を凝らした。仲間もそれに倣う。


20180929222319_1 のコピー


「ジャースさんも? 僕もだよ。兜を被って歩哨に立ったところまでは覚えてるんだけど・・・」
エリクも眠そうに頭を振っている。


「おまえ、サボって寝ちゃったの?」


「違うって。見張りに立った後の記憶があやふやなだけだって」


「だからそれ、寝ちゃったって言うんだろ」


「じゃあそれなんだよ、ブラッキーが持ってるのは」


20180929223806_1 のコピー


ブラッキーの手にはどこで手に入れたか分からない、カラスの羽根のようなものが握られていた。彼女は記憶を手繰ろうとしたが、靄がかかって思い出せない。すぐに悩むのをやめて、荷物にその羽根を突っ込んだ。


足元の地面の様子が変わった彼女たちは、人里が近いことを理解した。正式な帝国の街道ではないが、踏み固められて何人もの人が通行した痕跡のある地面を見つけたのだ。街道から分岐した側道に違いない。太陽の位置から考えて北に向かっている。ウインドヘルムの近郊の村、カイネスグローブはこの先の筈だ。


喜び勇んで先に進もうとした彼女たちだったが、逆杭が埋められた周囲に兵士達が群がっているのを前に、足を止めざるを得なかった。検問が敷かれているのだ。
ウインドヘルムからは、囚われたウルフリックを救出する為にストームクロークの大部隊が進発していた。彼らは街道沿いに素早く南下し、アモル砦の帝国軍を逆包囲して動きを封じると、自国の領土に点在する帝国軍の部隊を潰してまわり始めていた。


20180929224930_1 のコピー


ストームクロークがホワイトランを奪取する布石として部隊を浸透させていたのと同様に、帝国のスパイもイーストマーチには数多く紛れ込んでいた。彼らはそういった反乱分子を捕らえる為、ウインドヘルムを中心に街道の各所に検問を敷いていた。許可のないものは検問と検問の間に留まらざるを得ない。温泉地帯を突っ切って近道してきたブラッキー達だったが、ここに来て進みあぐねる形になってしまった。


「参ったなぁ。これじゃぁウインドヘルムに近づけないよ・・・」


街道から少し戻って脇に避け、彼女たちは顔を寄せ合った。
「まるで戒厳令だね。これじゃ」


20180929224843_1 のコピー


「ウルフリックが捕まったって言うんだから、大変なことなんだよ」


エリクはイーストマーチの地図を見ると、ため息をついた。「道を使わずにウインドヘルム行くのは難しそうだな、ケイドはどう思う? ん? ケイド?」
声をかけられた鍛冶屋の息子は上の空だった。


「ん、ああ・・・」


生返事を返す。何かを思い出そうとしているようにも見える。


20180930101140_1 のコピー


「なにぼーっとしてるんだよ」


「ああ、昨日の晩の事を考えていたんだ。なんか、綺麗な女の人を見たような・・・モイ・・・名前を聞いたような気がするんだけど・・・」


「あの森に霧だし、魔女にでも化かされたのかも知れないね・・・。いいから、今はウインドヘルムにどうやっていくかを考えるときだろ」


「そうだな、ごめん・・・」


20180930092625_1 のコピー


「なにを話してるの?」
急に割り込む声に、四人は飛び上がった。
声をかけてきたのは旅人だった。光を受けて藍や緑に色合いを変える濡羽色の服に、大きな荷物を背負っている。女魔術師だろうか。複雑な意匠の施された杖を持っており、その雰囲気は彼女たちの心に既視感を沸き起こらせた。


「わぁ! 出た! 魔女!!」


「夢じゃなかった・・・やっぱり居たんだ!」


20180930092527_1 のコピー


女はにっこり笑うと、旅人達の輪に入って来た。
「カイネスグローブにはいけないわ。いまあそこはストームクロークの兵士が検問を引いていて、通り抜けできなくなっているの」


「うん、今見てきたところだよ。昨日・・・会った、よね?」


「ええ、あなたたち、みんな気持ちよさそうに寝ていたわね。わたしの小屋の近くで」


「お姉さん、本当の魔女?」


「さぁ、どうかしら」


女の旅人は改めてモイラと名乗った。カイネスグローブの村から少し離れた森の中の小屋に住んでおり、錬金術の薬などをたまに村まで売りに行っているという。キルクモアの島で姉の生活と一緒なことに奇妙な共感を覚えたブラッキーは、昨日の不気味さとのギャップに首をかしげた。


20180930100545_1 のコピー


「名前を聞いてなかったわね」


「・・・」


「あらなに? 怖いの?」
女は警戒するブラッキーの顔を覗き込んだ。


「・・・だって、名前教えたら魂取られちゃうんだろ」


「アハハ・・・それならわたしの魂もあなたに取られちゃってるじゃない。わたし昨日も、そして今も名乗ったわ」


「ボクは魔女じゃないから」


「そんなの迷信よ」


「ホントかなぁ・・・」


20180929225657_1 のコピー


「まあいいわ。あなたたちが話しているの、聞いちゃったから。あなたはブラッキー。そちらの背の高い眼鏡のおじさまはジャースでしょ。そして昨日ダーリンと間違えちゃったのがエリク君。そしてそっちの逞しい腕のキミがケイド君ね。よろしく」


モイラは黙っている一行の代わりに自分で自己紹介をしてみせると、西の方を指さした。


「さぁ、いきましょ。夕方までには辿り着かなくっちゃ。遅れるわけにはいかないわ」


20180929231109_1 のコピー


「行くって? 一体どこに・・・それにどうしてボクたちが?」


すたすた歩き始めたモイラは、ついて来ない彼女たちを振り返ると不思議そうな顔をした。
「結婚式なの。花嫁に従者は付きものでしょ? ほら、急いで!」


訳の分からないことを言う魔女に、ブラッキーは抗議した。
「そんなこと言ったって、ボクらウインドヘルムに行く途中なんだって」


「じゃあ尚更、ここに居たらダメじゃない」


「マラキャスにかけて、話がま~ったく見えないんだけど・・・なぁ。おっちゃんと同じで、スクゥーマでもやってるのかな、このお姉さん・・・」


「まてまて・・・私は記憶障害なだけで、スクゥーマなど飲ってはいないぞ。ふむ・・・」意思疎通の困難さに匙を投げたブラッキーに代わり、ジャースが魔女に話しかけた。


20180930101053_1 のコピー


「えーと、お嬢さん。お嬢さんはこれから結婚式に向かっていると」


「そうよ。今晩結婚するの」


「お嬢さんは我々に、その式に参列して欲しいと?」


「ええ、そうよ。あなたたちの服装は・・・まぁ、そのままでもいいわ」
ジャースは根気よく質問した。


「しかし我々は旅の途中だ。ウインドヘルムに向かわねばならない。その・・・結婚式というのは、どこで開かれるのだね?」


「モルブンスカーの廃城よ」


「モルブンスカー?」


「知らないの? イーストマーチを見下ろせる丘の上に立つお城なの。ウインドヘルムまで目と鼻の先よ」
ジャースはブラッキーと顔を見合わせた。


20180930105212_1 のコピー


「しかしお嬢さん、街道は封鎖されている。貴女が言うように、そこら中ストームクロークの兵士でいっぱいだ」


「街道なんて使わないもの」


ジャースはモイラに聞こえないよう、ブラッキーに顔を寄せた。
「モルブンスカーというところがどこかは知らないが、ウインドヘルムの極めて近くらしい。そして彼女は街道を使う必要がないと言っている。私にはそう聞こえたが」


「うん」少女も声を落とした。「ボクにもそう聞こえた」


「このままこうしていても時間だけが過ぎていく。そして彼女は今のところ我々に害意はなさそうだ・・・乗ってみるかい?」


「どう見ても怪しいけど・・・、ああっ! マラキャスよ、ボクに英知を・・・」


20180930104251_1 のコピー


「どうしたの? 行くわよ。早くして!」


「ああ、分かったよ。お姉さんに着いていくよ。着いて行けばいいんでしょ!」


半ば投げやりに、少女は怪しげな魔女に頷いたのだった。


空気を読まないことジャース以上のモイラに引きずられて、一行は街道を外れて進み始めた。モイラと名乗った魔女は、火山の堆積物から出来た脆い岩場を西へ西へと導いてゆく。やがて彼女たちはホワイト川に掛かる、地図にも載っていない橋に辿り着いた。


20180930103358_1 のコピー


橋は半分崩壊しており、石材はひび割れて雑草も伸び放題、ところどころに水たまりまであったが、冬期の水かさの減ったホワイト川を渡るには十分な強度を持っていた。


橋を渡ると街道が姿を現す。
エリクが地図を頼りに自分たちの居る場所を推測しようとする。どうやらここは、ウインドヘルムとアモル砦を結んでいる、ホワイト川西岸の街道で、パルグラン村の少し北の辺りのようだった。南の方には村の監視塔が目に入った。


「こっちよ」
モイラは街道には沿わず、そのまま道を渡った先の草地の斜面を示した。


20180930105115_1 のコピー


「ねぇお姉さん、いつまで西に進むのさ。これじゃぁどんどんウインドヘルムから遠ざかってくよ」


「大丈夫よ、もう少し登ったら北に折れるわ」


彼女はそう言って、一行を斜面に導くと上りはじめる。左右の針葉樹の間隔が次第に狭くなり、足元には白いものが見え始めた。少し上がるだけですぐに雪景色に変わる。
ブラッキー達が防寒具の準備をしようかと考えはじめた頃、モイラは初めて足を止めた。斜面を覆う林を抜けて平らなところに到達した彼女たちを出迎えたのは、空き地の中にあるちょっとした池であった。


20180930111129_1 のコピー


「ここで休憩?」


「ええ、ちょっと休んだら、ここからは登らずに斜面を北に向かうわ」


モイラは荷物を下ろすと、雪のない地面を選んで腰を下ろした。こうしてみていると害のない、普通の女性にしか見えない。ブラッキーは、恐る恐る尋ねた。


「こんな山の中で結婚式するの?」


「違うわ。モルブンスカーはお城よ」


「ふーん。結婚相手って、どんな人?」


モイラはうっとりとした顔で目を閉じた。


20180930105257_1 のコピー


この前の嵐の晩、わたしは白い牡鹿の夢に抱かれながら寝ていたの。そうしたら小屋の扉を叩く人がいてね。何かと思って開けたら、そこにあの人が立っていたの。ひどく疲れて、そして酔っていたわ」


(酔っ払い・・・?)


「ノルドはみんな酔っ払っているものでしょ? 彼は戦士。辛そうだから一晩介抱してあげたの。少しの滞在期間だったけど、どんどん打ち解けて・・・、そしてこの指輪をくれたのよ。結婚しよう、って。ね、素敵でしょう?」


20181006102710_1 のコピー


「う・・・うん」


「でもさぁ・・・、どうしてその人がモルブンスカーに居るって分かるの?」


「私もグレンモリルの魔女のはしくれ。好きな人の居場所ぐらい嗅覚で分かるわ」


「嗅覚で?! ・・・って、結婚式の日とか、ちゃんと決めてないの?」


「わたしとダーリンの間にはそんなもの必要ないわ。モルブンスカーに着いたら、そのとき結婚式が始まるの。それは今晩、そうに決まってるわ」


20181006100857_1 のコピー


ブラッキーはエリクと顔を見合わせた。何か悪い夢でも見せられているようだ。
ケイドも呆けたような表情でモイラを見ている。


落ち着かない昼食を摂ったあと、出発までの気晴らしにと、エリクはケイドとブラッキーを誘って、池の中央にある小さな島を散策することにした。

ブラッキーは不満を漏らしたが、ケイドが魔女のことばかり見ているから引き離すんだ、という耳打ちをされると、納得して着いてきた。


ちょうど岸辺に繋がれていた小舟に飛び乗ると、三人は水面を進んでいった。


20180930113516_1 のコピー


岸に取り残されたジャースは、微笑ましげに若者達を見送ると、脇で休んでいるモイラに尋ねた。


「お嬢さん、もしかしてハグレイヴンかね?」


「そうよ」


けろっと頷いたモイラを見て、ジャースは息を呑んだ。さすがにこうあっさり認められては、自分たちは魔女に化かされて、彼女たちの住処に連れて行かれる最中なのかと勘ぐってしまう。


「あら? ・・・もしかして、おとぎ話に出てくるかぎ爪を持った、しわくちゃのおばあさんを想像してた?」


小説家はこくこくと、水飲み人形のように顔を何度も上下させて頷いた。
「変身? それとも、私たちに魔法をかけて、美女に見せているとか・・・」


「失礼ね! ・・・あらでも美女ですって? ありがとう」モイラは微笑んだ。「・・・違うわよ、今あなたたちが見ているのがわたしの本当の姿よ。なにも化かしたりはしていないわ」


20180930113718_1 のコピー


ジャースは帝都で読んだ書物の記憶を手繰った。
「エルバン動物寓話集で読んだことがある・・・美しい女性の魔術師が、迫害されて逃れるうちに魂を変容させ、邪悪に落ちたという話だが・・・実物を見るのは初めてだ。それに・・・ずいぶんと、伝承と違うようだ・・・」


「よく知ってるわよ。わたし達がどう呼ばれているかは・・・闇の魔法と引き換えに人間性を捨てた抜けがら、半分女で半分鳥の姿をした魔女、でしょ?」


「ああ、そういうものだと思っていたよ」


「さしずめ、堕ちる直前ぐらいって感じかしら、わたしは」


「邪悪、なのかね?」


「さぁ、どうかしら」モイラは艶やかに笑った。「カイネスグローブでは錬金術師で通っているから仲良くやっているけど、魂は変容しているかもね。魂の変容に続いて、肉体の変容が始まるの。白き牡鹿を見てしまったから、残された時は少ないわ」


20181006015307_1 のコピー


意味不明なことを口走る魔女の言葉から、一片の真実でも良いから掴みだそうと、ジャースは粘り強く応対した。


「グレンモリルと言っていたが」


「ええ、穢れてしまった姉妹達・・・スカイリムの同胞団が誇り高き戦士であったように、私たちもかつては誇り高き光に満ちた魔女だったわ」


「まるで誇りが地に墜ちたような言い草だな」


20181006105513_1 のコピー


「そうよ。あなたの言うグレンモリルの魔女・・・、しわくちゃ婆のハグレイヴン達は、フォースウォーンと共に歩むことを決めた姉妹のなれの果てよ。もっとも、彼女たち自身は歪んだとは思っていないでしょうけど。彼女たちと関わった者は皆、邪悪な問題を内に抱えて苦しんでいるわ。ホワイトランの戦士達のように・・・」


グレンモリルという単語をジャースは知っていた。その言葉は、第3紀にシロディールの東方の上ニベン地方の隠里に存在していた小規模で、女性の治療師だけが所属する集団を指していたはずだ。指導者の下で、音害症や脳腐病といった簡単な失病から、サングイネア吸血症、はたまた発症してしまった吸血鬼を人間に戻すことの出来る秘法も持っていたという。


enb2018_7_7_13_8_29 のコピー


彼の知っているグレンモリルの魔女達は、その有用性から、非公認の魔術を認めない魔術師ギルドの唯一の例外として指定されているというものであった。指導者のメリサンデにはアーケイン大学の名誉教授の位さえも贈られている。尤も、彼女はドレイクロウの隠れ里に籠もったまま人里に姿を現すことがなかった為、帝都務めをしていたジャースも一度も見かけたことはなかった。


「ドレイクロウは壊滅したわ」
モイラは遙か昔を振り返るように、若者達の小舟に撫でられてざわついた眼前の池の波紋を見つめた。


20180930113551_1 のコピー


「最初にそれが起きたのはソルスセイム。そこに行っていた姉妹達・・・イゾベル、ファライス、エティンの身体が変容をはじめたの。戻ってきた彼女たちを、メリサンデの後を継いだメルカとペトラの姉妹は必死に調べていたわ。ソルスセイムの姉妹達はウェアウルフの治療を行っていたのだけど、禁忌に手を染めていたのね。姉妹達の変容を戻そうとメルカはウェアウルフの研究に傾倒したわ。ちょうどオブリビオンの動乱が起きていた頃よ」


20181006112934_1 のコピー


「すまない、その部分の記憶が私にはないんだ」
モイラはジャースの告白に構わず、思い出話を続けた。


「オブリビオンの動乱の後、魔術師ギルドが解体されるとその庇護を受けていた私たちグレンモリルの魔女は迫害に晒されたわ。指導者のメルカは一族を連れスカイリムに逃れたの。アレッシアにアメリ・・・ああ、袂を分かったあの母子はいい人生を送ったのかしら? ・・・わたし達の方はそのあと散々な目に遭ったわ。落ち目になった組織なんてそんなものよ」


enb2018_7_7_13_11_30 のコピー


魔女は首をかしげた。
「それにしても・・・、あなた不思議な男ね。何もかも話してしまいたくなる・・・その安心感はどこから来るのかしら?」


モイラは手を伸ばすとジャースの眼鏡をずらす。そしてその目を覗き込むと、妙に納得したように頷いた。


「ああ・・・そういうこと。知識・・・あなたも同じでねじ曲げられた人間・・・わたしとは違うオブリビオンに繋がれた眷属だったのね」


「意味が分からない」


「・・・いいのよ、分からなくても。話してもどうせあなたは忘れてしまうわ。忘れさせられてしまう、の方が正確かしらね」


20181006101520_1 のコピー


ジャースは聞きつづけた。


「・・・後から分かったのだけど、ソルスセイムの姉妹達はデイドラの秘術を使ってウェアウルフを治療していたの。・・・生け贄を必要とする治療、ね。デイドラとの契約はオブリビオンの動乱以降、大罪とされたのは知っているでしょ?」


「それからは?」


「ファルクリースの森奥深くに隠れ住んだわたしたちグレンモリルの魔女は、そこで細々と活動を続けたわ。見つけ出して、辿り着いた者に治療を与える。メルカトペトラはその間もウェアウルフについての研究を続けていたわ。土地柄リーチと近かったこともあって、彼女たちはフォースウォーンの呪術師に伝わる土着の魔術を自らに取り入れ、ハグレイヴンとして医学と呪術を混合した独自の魔術体系を練り上げていった。その頃にはもう、姉妹を救うという当初の目的はとっくに忘れ去っていたのかもね。結局、メルカとペトラはグレンモリルの姉妹達全員を巻き込んで、ハーシーンと契約したの。そう、反対するわたしや他の姉妹も巻き込んでね・・・」


20180926000153_1


そうしていつしか、ハグレイヴンが山奥で邪悪な儀式を行う魔術結社として、グレンモリルは生まれ変わった。そこでは、植物の種子を心臓と置き換え狂戦士ブライアハートを生み出す外科手術や、臓器移植などの邪悪な魔術が行われ、魔女達は寿命を延ばすために身体を変容させる技を自らに施しているという。


「姉妹に裏切られたときファルクリースから逃げ出したわたしは、スカイリムのこんな反対側に来て怯えながら生きながらえている、というわけ。一応・・・ハグレイヴンの端くれ?それともなり損ない?どっちでもいいわ・・・そんなのだけど、もう好きなように生きると決めたの。人里に出て、街の中に混じって暮らすのが好き。それに、あんな姿になっていたら彼も現れなかったと思うわ」


そう言うとモイラは物憂げな表情を脱ぎ去り、再び夢見る乙女のような顔になった。「ああ! 早く・・・待ち遠しいわ。今晩よ、モルブンスカーのお城で結婚式を挙げるの!」


20180930114435_1 のコピー


二人が話し込んでいた頃、ブラッキー、ケイド、エリクの三人は池の中央の島を探索していた。エリクが地図を見ながら仲間に伝える。


「ここ、地図に載ってるよ。マーラの目の池って言うらしい」


「お前、よく地図見てるよね」


「ああ、色々なものを見つけるには、まず地図を正しく読めるようになるのが先決だろ」


「じゃあ、こんなのは? 地図もいいけど、ちゃんと地面を見てないと見つけられないぜ?」
ブラッキーは小島の木の根元に、土の禿げた場所を指さした。


20180930114422_1 のコピー


「え? こんな所に落とし蓋?」


「へへーん。ボクはこういうの見つけるの得意なんだ」


言ってブラッキーは軽い既視感に捕らわれた。キルクモアの小島で地下室を見つけたときも、アスヴァレンとイェアメリスにこうして自慢したものだった。


a20161123231553_1 のコピー


「入ってみようぜ」
ケイドが目を輝かせる。


「お前、本当に洞窟とか下水道とか好きなんだな」


「そりゃもう。地下道は冒険への入り口だよ!」


20180930114757_1 のコピー


(えっ、でも・・・、これは・・・血?)


エリクが岸に居る二人の大人に声をかける。自分たちの乗ってきた小舟を水面に向かって蹴り出すと、ゆっくり進んだ舟は対岸のジャース達の元にたどり着いた。モイラとジャースが島に渡ってくるのを待って、五人は落とし蓋の先に潜っていった。




・・・




落とし蓋の先は自然の通路になっている。


20180930120630_1 のコピー


壁には松明が掛けてあり、気配はないが人の痕跡がしっかりと残っていた。少し進むと踊り場のようなちょっとした空間に出る。樽や木箱が無造作にあちこちに散乱している。中を伺ってみても空ばかりだ。誰かの隠れ家か、放棄された隊商の集積所なのかも知れない。


「これは棺だね。空だけど」


20180930123348_1 のコピー


ケイドは張り切って、調べた辺りの状況を伝えてくる。その目線がちらちらモイラに向いている。


踊り場の一段下には別の空間があり、天井から漏れてくる水滴がくるぶしぐらいまでの水たまりを作っていた。天井の上にはマーラの目の池が広がっているはず。その水が染み出してきているのかも知れなかった。奥の隙間には鉄製の檻が二基ほど並べられているが、中にはなにも入れられていないようだ。


20180930125530_1 のコピー


「羽根ペンがあるな。有難いことに、ちょうどへたってきたところだったんだ。補充させてもらおう」
ジャースはエンドテーブルの上から羽根ペンを失敬してそう言った。


「おっちゃんも逞しいね」


「君ほどじゃないさ、お嬢ちゃん」


「やめてよ、気持ち悪い。呼び捨てでいいって」


20180930130611_1 のコピー


おざなりに返したブラッキーは、小説家が物色しているテーブルとは別の所に、書き置きを見つけた。


「なぁ、なんかノート見つけたんだけど」


仲間が寄ってくる。


20180914095939_1 のコピー


=*=*=*=*=*=


この戦争は思っていたほどビジネスに向いていない。もちろん報酬はいいが、余計な兵士達があちらにいてずっと働くことは難しく、危険に見合った報酬を貰える仕事を見つけるのは難しい。


我々が今やっている仕事のように。男はほとんど質問することなく我々を雇い、木箱の山を運ばせている。そしてここにその荷物を運び込んだのだが、何を運んで居るか知る為に私は箱の中身を見た。そして何を目にしたと思う?


死体だ! あの悪党どもは私に死体を運ばせているんだ! ちなみにその死体達が浸けていた宝石や金は私が奪ったんだが、その罰は彼の身に降りかかるだろう。


=*=*=*=*=*=


20180930130817_1 のコピー


「この木箱の山って、さっきケイドが見つけた棺のことかな?」


「さぁ、でも中身は空っぽだったんでしょ? 死体はどこに行ったんだろう・・・」


「ブラッキー、ひとつ提案していいかね?」


「なに? ジャース」


「私はここはあまりいい場所ではないと思うぞ。死体を扱う連中とは、いい友達になれたためしがないんだ」


「うん、同感。間違ってデイゴンの尻尾を踏んじゃったりしないうちに、こんな寄り道すぐにでも止めるべきだよね」


20180930125433_1 のコピー


そう言っている間にもエリクは下層に降りて、水に半ば沈みかけている鉄檻を観察している。ブラッキーは呼び戻そうと渡し板に足をかけた。板はところどころ黒ずんでいたが、これは板に落ちた血が固まってつけた色だと理解した。


「あれ? またまた落とし蓋があるよ。しかも檻の中じゃないか!」
エリクが何か発見したように興奮した声を上げている。


20180930133322_1 のコピー


「あっ、おい!」
ブラッキーの脇をすり抜けて、ケイドが駆け下りるとエリクの横に並んだ。
「どれどれ、見せて! うん? 鍵が掛かってるなぁ・・・」
鍛冶屋の息子は荷物入れをまさぐると、針金のようなものを取り出す。


「僕に任せて!」


ブラッキーは二人を呼び戻そうと、下層の水たまりに呼びかけた。


「またロックピック10本、無駄にするの?」


「10本じゃないよ、あの時は6本だったろ? 今度は3本以内にやってみせるさ。見てて」
ピック片手に落とし蓋の鍵に取り組む鍛冶屋を、エリクは興味深げに見守った。二人に向かってブラッキーが怒鳴る。


20180930133407_1 のコピー


「ねぇ、なんかどんどん遠回りしてる気がするんだけど。ボクたちの目的忘れてないよね?」


「急がば回れ、ゼニタールの忍耐っていうだろ」


「ボクはマラキャスの怒りに打ち震えそうなんだけど・・・」少女は様子を見に来たジャースと並んで念を押した。「いいか、ちょっと覗いたらもう行くからね。言うこと聞かなかったらモイラの姉さんに頼んで、尻の毛全部引っこ抜いて、ロリクステッドのジャガイモみたいにボコボコの肌にしてやるからな」


「失礼だなぁ、うちのジャガイモは丸っこくって綺麗、すべすべで美味しいんだから」


「じゃあそのジャガイモ植えに帰れよ、鍬使い」


「鍬使いじゃないって、虐殺者エリク。そろそろ覚えてよ」


「ボクの役にちゃんと立ったらね」


20180930133453_1 のコピー


そうこうするうちに、乾いた金属音を立てて錠前が外れた。


「・・・あ、開いたみたいだ! 行こう! そんな目で見るなって。覗くだけだよ! 覗くだけ」


ケイドとエリクは鍵を破った先の落とし蓋の中に身を沈めていく。ジャース達に"すぐ戻る"と合図をすると、ため息ひとつ残してブラッキーも後を追った。


「うわっ! 寒っ・・・」


20180930172001_1 のコピー


彼らの前に姿を現したのは、氷の洞窟であった。
周囲は岩肌に至るまで氷に覆われていてよく見えないが、古代ノルドの石像の破片が崩れ落ちているところを見ると人工的な通路のようだ。気温はとても低いが、かすかに何か匂う。


「どうだい、たいしたもんだろ? 1本で行けたんだぜ?」


「いいから、ほらっ、ちょっと見たからもう戻るよ」


「え? これからじゃないか」


「おまえなぁ・・・」


20180930172529_1 のコピー


「あっ、みてブラッキー、こっちに道が続いてる・・・」


少し進んだ先、広くなった辺りでケイドが硬直している。すぐに続いたエリクも、その光景を見て黙って手招きしている。


「なんだってんだ。もう。何があるかも分からないところに飛び出して・・・うわっつ!」


ブツブツ文句を言いながら二人に追いついた彼女も、目の前に広がる光景に言葉を失った。


20180930173233_1 のコピー


氷の洞窟の先はちょっとした広場になっていた。

雪山の地下洞窟に出来た天然の氷室。その中に死体が山積みになっている。周囲の温度が低い為に腐敗の速度が抑えられているようで、人の形をほぼそのまま保っている死体が多かった。それでも、その屍から立ち上る独特の臭気は洞窟内に充満しており、ブラッキーは東帝都社の死体処理場を思い出して噎せた。


20180930173619_1 のコピー


帝国軍やストームクロークの装備をつけた者もいる。ノルドが比較的多いようだが、手当たり次第、死体を集めたという感じで、人種にも所属にも規則性はなかった。
一瞬早く正気を取り戻したブラッキーは、唖然としている二人の若者に声をかけた。


「ほら、もう気が済んだだろ。戻るよ」


「あ、ああ・・・」


20180930173338_1 のコピー


二人の若者は素直に頷く。奥にまだ、通路らしき隘路があったのだが、彼らは毒気を抜かれたようにもうこれ以上進もうとは言わなかった。


戻ってきた少女達は、げんなりした顔をしていた。


「うん・・・」


何か言いかけたとき、急に入り口の落とし蓋が開く音がして、何者かが降りてきた。


20180930153730_1 のコピー


「アニキ、今日これで何体目だっけ?」


「五体目ぐらいか? もう忘れちまった」
二人組のならず者のようだ。


「でも何でダンナも死体なんかに金出すんだろうな。奴隷の方が儲かりそうなもんだが」


「生きている囚人は、飯食わせたりなんだかんだと管理するのが面倒くせぇんだ。その点死体なら、気味が悪いことさえ我慢すりゃあ、積み上げとくだけで済むからな。臭いも、冷やしておけばそれほど気にならねぇ」


「あれ見ちまうと、死体なんか珍しくなくなっちまうよな。俺たちももう、麻痺しちまってるんだろうね」


「・・・まあ、そのおかげで小銭が稼げるんだ。見ろよ、こいつが持ってたオニキスの指輪。きっと高く売れるぜ」


20180930153829_1 のコピー


下層で武器を取って駆け上がろうとする鍛冶屋と傭兵を制し、ブラッキーは下がらせた。


相手は死体運びとおしゃべりに夢中で、まだ洞窟に侵入者がいることに気付いていない。

彼女はベルトから音もなくナイフを取り出すと、柱の陰から一人に狙いをつける。


20180930153951_1 のコピー


すぐ横にモイラの気配を感じると、少女は振り向いた。魔女の左掌には小さな雷の種が踊っていた。ブラッキーは無言のまま自分を指さし、手前の男にナイフを投げる真似をしてみせる。するとモイラは頷いた。伝わったようだ。


彼女は奥の男に指を向けた。


20180930164922_1 のコピー


少女は一度手を後ろに引くと、しなりをつけてナイフを放つ。

わずかに空を切る音を立てて飛んだ凶器は、一人目の男の胸に正確に突き立った。


20180930164051_1 のコピー


「なにっ?! 誰ガッ・・・」


もう一人は上げかけた声を最後まで言うことが出来なかった。一瞬、洞窟全体を閃光が照らしたと思うと、次の瞬間男は口から煙を吐いて崩れ落ちた。モイラの放った電撃の直撃を受けたのだ。


「池に小舟が浮かべてあった時点で、予測してしかるべきだったな」


20180930171043_1 のコピー


自分たちが運んできた死体と並んで、自らも死体となったならず者達、その姿を見下ろす仲間にジャースは注意を喚起した。


「まだ仲間がいるかも知れない。今のうちに地上に戻った方がいいと思うが」


「うん、行こう!」


ブラッキーは少し呆気に取られている若者二人を促すと、最初の落とし蓋を潜って地上に戻った。小説家の危惧したとおり、複数の足音が池の縁、林の向こうから響いてくる。


20180930182027_1 のコピー


「本当に仲間がいたよ!」


「ダメだ、今動いたら見つかっちゃう」


今度は先ほどの比ではない、山賊らしき男たちは十数人。続々と池の縁に現れる。中心に立つ男がリーダー格であろうか、黒い血管が浮かび上がるような不気味な入れ墨を入れていた。


20180930181958_1 のコピー


(ブラックブラッド!)


ブラッキーは小島の木陰に身を潜めながら、現れた一団の様子を伺った。


黒い血管の入れ墨をした男は、脇に立つ男と何か話している。わずかに聞こえる声と、口の動きから彼女は男たちの会話を推測した。


「・・・ん? ジャリー・ラだ? ハーガーのところの副長だかなんかだったやつだな。今はそいつが仕切ってるのか?」


a20170922234704_1 のコピー


「そうらしいです。そのジャリー・ラがダンナに目通りを打診してきてるんです」


「そうは言ってもなぁ、今はカスタブ砦に行くのが先決だ。その後でなら会ってやると伝えろ。・・・で、どこ行っちまったんだ、あの女は。ここの貯蔵所を見たいって言ったのはそもそもあいつなんだぞ」


「さぁ、この前はすぐに戻って来やしたけど、どこ行っちまったんでしょうね」


a20180513140318_1 のコピー


「またどこぞのテルヴァンニでも見つけたんじゃねぇだろうな? まったく、いくら温厚なこのグーンラウグ様とて、こう何度も約束すっぽかされたら腹に据えかねるぜ」


(あいつがグーンラウグ? ブラックブラッドの首領の一人・・・)


奴隷商だったユディトの一味にキルクモアまで連れてこられ、ソリチュードではジャリー・ラの一味と関わっていた。そして姉を追う中、こんなスカイリムの山の中でも遭遇している。ブラッキーにとって、ブラックブラッド略奪団は因縁の相手だった。


20180930181928_1 のコピー


「なんで舟がこっちにねえんだ? 誰か島に渡ったか?」


「さぁ・・・。あ、あそこにありやすぜ!」
山賊達の視線が小島に集中する。木陰とは言え、五人が隠れるには小さすぎた。ブラッキー達はすぐに目に留まってしまい、叫び声が上がった。


「おい! 誰だアイツら?」
「侵入者だ!」
「逃がすな、殺せ!」


20180930193910_1 のコピー


ブラッキーは仲間に合図を出した。
「逃げよう!」


「でも、どっちに行ったらいい?!」


きょろきょろしながら逡巡するケイドに怒鳴る。
「とりあえず舟に乗るんだよ! どっちでもいいから!」


20180930195118_1 のコピー


彼らは木陰から駆け出すと、次々に飛び乗った。


仲間が全員乗ったのを確認すると、殿だったエリクは思いっきり小舟を池に蹴り出し、自分も飛び移る。小舟の進む方向に向かって、岸を移動する山賊達。中には弓を取り出して構える者もいる。


20180930195333_1 のコピー


「ブラッキー! 駄目だよ、回り込まれちゃう!」


「くそっ、どうしたら・・・!」


そのとき、小舟の中央に乗っていたモイラが立ち上がった。


20180930202252_1 のコピー


「任せて!」


ブラッキー達は、モイラが持っていた杖の石突きを船底に当てる音を聞いた。コツーンという音が響くと、辺りが急に暗くなり始めた。


「なんだ?!」


カラスの羽根が舞い上がったと思うと、水面を走る小舟を中心に、黒い霧が覆い被さった。


20180930202151_1 のコピー


「くっ、見えねぇぞ!」


「やめろ、矢は撃つな! 仲間に当たるぞ!」


瞬き数回の間に太陽の光は完全に遮断され、マーラの目の池周辺は闇に飲まれた。叫び声が飛び交う中、ブラッキー達は惰性で進む小舟の上で息を潜める。


20180930202815_1 のコピー


「お姉さん、ボクたちも見えないよ」


「大丈夫。一緒にいれば」


岸に衝突する衝撃でバランスを崩したが、何とか上陸すると彼女たちは急いで駆け出した。黒い霧と羽根の舞う中、山賊たちは混乱に陥っていた。


・・・しばらくして、マーラの目の池からかなり離れた岩棚の上でブラッキー達は一息ついていた。魔女の感覚で周囲数百ヤードに追っ手のいないことを確認すると、彼女たちはようやく安心した。どうやら、グーンラウグの一味を巻くことには成功したようだ。


ジャースは太陽の位置を確認しながら、少女に尋ねる。
「先ほどは聞きそびれたが、結局洞窟の奥には何があったんだい? デイゴンの尻尾でも踏んだような顔をしていたが、血気盛んな冒険者は何か見つけたのかな?」


20180930173506_1 のコピー


「血気盛んな冒険者達は、血の気も引くような・・・死体の山をみつけたよ」
さすがにうんざりした様子で、ブラッキーは答えた。


ジャースとモイラは顔を見合わせた。
「死体の貯蔵室?」


「氷室ね」


「ロクなもんじゃないことだけはボクにも分かったよ。アイツらも、これに懲りたら寄り道はもうやめて欲しいね」あまり懲りていなさそうなケイドとエリクを横目に、彼女は先ほどまでいた池を遠く見下ろした。


「それにしてもお姉さん、凄いね。さっきの雷もそうだけど・・・やっぱり魔法が使えると便利なんだろうなぁ」


「あなたのナイフも大したものだったじゃない」


20180930224740_1 のコピー


ブラッキーは鼻の頭をこすると、探るような目で魔女を見た。・・・モイラが味方にいてよかった。言動は危なっかしく、何を考えているか分からないし、どこに連れて行こうとしているのかも分からなかったが、道が同じ間は強力な仲間になりそうだ。


「で、次はどっちに向かったらいいの? 遠回りになっちゃった?」


「いいえ、そんなことないわ。方向がよかったのね。わたし達、池から真っ直ぐ目的地に向かってきてるわ。モルブンスカーはもうすぐそこよ」




・・・




「ねぇ! 来てごらん。あれ、ウインドヘルムだろ? ここから見えるよ!」
廃城の崩れかけた胸壁に立ち、エリクが興奮して叫んでいた。「さすがイスグラモル大王の都市、でかいよなぁ」


20180930225332_1 のコピー


モルブンスカーはヨルグリム川とホワイト川の合流点、その突き出した丘の上に建つ城だった。丘は半分ほど雪に覆われている。


「ウインドヘルムって首都なんでしょ? 首都にこんな近い砦が放棄されてるって、ウルフリックってヤツ、一体どういう神経してるんだろうね」


a20180116222640_1 のコピー


スカイリムにはそれこそ、第1紀から人が住んでいる。奴隷の女帝アレッシアの時代にはノルドの王国として、第2紀シロディールの空位時代にも上級王の王国として、第3紀にはタロスの治めるセプティム朝の一部として、人々は営みを続けてきた。滅んだ村や移動した街、新たに立てられたり破壊されたりした城郭は数えればきりがない。雪に覆われて単調に見えるこの北の大地にも、各所に文明の証左が残されているのであった。
モルブンスカーの砦も、そんなありふれた拠点跡のひとつであった。


20180930225436_1 のコピー


ジャースは人気がなくまったく整備されていない廃城の地上部分を一通り眺める、対照的に整備され、偉容を示すウインドヘルムの城塞都市と見比べた。
「ウルフリックは・・・あまり守りのことは考えていなかったのかも知れないな。ソリチュードに侵入したこともそうだが、電撃作戦で一気に片をつけようと思っていたんじゃないかな」


「それは小説家としてのおっちゃんの解釈?」


「ああ、私の知っている情報と、君たちと会ってから見聞きした内容を総合すると、私にはそう推測できる。ああ・・・いつもであれば現場を取材調査して、過去の文献や証言などから事実を推測するんだが、ウルフリック! 彼は今まさに生きている事件の中心だ。ぜひ一度会って話を聞きたいものだ・・・」


「ああ見えても、敵はサルモールだってちゃんと分かってたんだね」


「そうだろう。彼はノルド至上主義だと言う話だ。徒に内戦を長引かせて同族争いをするつもりはないのだろうな」


ブラッキーは眼下の街道をストームクロークの一部隊が移動してゆくのを見ながら呟いた。
「でもそうだとしたら今の状況・・・思惑とは正反対になっちゃってるね・・・」


「まあ、捕まったと聞くし、我々が思うよりもこの内戦は早く終結するのかも知れないな」


夕方の寒風がウインドヘルムの向こう、亡霊の海から吹き、城壁上の彼女たちの体温を奪ってゆく。彼女たちは魔女に導かれて、廃城の正面扉から中に入っていった。


20180930230623_1


城内は薄暗く、時が浸食した様相を呈している。しかし蝋燭には火が入り、ところどころの明かりも確保されているところを見ると、無人ではないようだ。モイラはどんどん中に進んでいくが、本当にここの住人に歓迎されるのであろうか。いくつかの部屋を通り過ぎてゆく間に、ブラッキーのその疑念はいやが上にも高まっていった。


「なぁ、ここ・・・、どう見てもヤバイよね。結婚式ってこういう所でするものだったっけ?」
エリクも同じ感想を持っているようだ。


20180930230738_1


「ボクの知る限り、ふつうの人はこんな場所選ばないんじゃないかなぁ」


一行は進み続けて、中央の間らしき広い空間に出た。部屋の奥の方に階段があり、一段高くなった中央に玉座がある。彼女たちは驚いた。それは、玉座ではなく、その脇で光を発する現象にであった。


20180930233319_1


ブラッキーが床に転がる死体に顎をしゃくってみせると、エリクは頷いてレヴナントの剣を抜いて構えた。モイラの案内したモルブンスカー城は、元は古い帝国軍の砦であったが、放棄されて久しいようで、はぐれ魔術師達の寝ぐらになっていたのであった。


20180930233707_1


当然、旅人などは歓迎されない。追い返されるか、捕らえられて魔法の実験台にされるかが関の山だ。扉をひとつくぐる度に誰かと出くわして戦いになるのではないかと警戒したが、彼女たちを迎えたのは完全なる静寂であった。不法占拠の住人達、魔術師は砦内部のそこかしこに死体として転がっていた。


「剣か斧でやられたみたいだね。しかもまだそんなに経ってないよ」
魔術師達の死体を検分したブラッキーは、気を引き締めるように自分の手斧を握り直す。


20180930233134_1


「おい、ケイド。見とれるのもいいけど、しっかりしろよ」


魔女に夢中になっている弟分に批判的な言葉を投げつけると、彼女はその魔女がケイドに負けず劣らずうっとりしている様子を見た。


20180930233404_1


「ああ、ダーリン、さすがだわ。わたし達の式場をこんなに綺麗に掃除しているなんて」


気を許しかけていたが、やはりこの魔女は危険だ。・・・背筋に薄ら寒いものを感じて、ブラッキーは警戒を新たにした。

玉座に腰掛けたまま事切れている女魔術師の脇で、彼女たちはひときわ目を引く現象に引き寄せられた。


「あ! これ転移門ってやつだね」


20180930234520_1 のコピー


「ブラッキー、知ってるの?!」


「うん、故郷…の島にいくつかあったんだ。どこに繋がってるんだろう」


「結婚式の会場よ」


ブラッキーは渋面を作って仲間を振り返った。
「ボク知ってるよ、こういう転移門って、大抵ロクなところに繋がってないんだ!」


「そんなことないわ。この先にあの人が待っている筈よ。ホラっ、行くの行くの」


20180930234644_1


モイラは羊を追い立てるように、状況がまだよく飲み込めていない仲間達を、その転移門に押し込んだ。足元の地面がなくなるような一瞬の浮遊感の後、五人は再び固い地面を踏みしめていた。


ホラ! 言ったとおりじゃないか! 入り口消えちゃったよ!」
ブラッキーは振り向くと、今来たポータルが姿を消していることに気付いた。


仲間達も慌てて振り返るが、そこは霧に包まれた森の一本道であった。


20181001003755_1 のコピー


「なんか・・・昨日の森に似てる、それに・・・」


エリクが不安そうに辺りを見回した。「また眠くなったりしないだろうな・・・」


森の中には霧に混じって、かすかに何か香のような匂いが立ちこめていた。


(オブリビオン・・・?)


a20170411232129_1 のコピー


瘴気とでも言うのか、甘さと苦みの混ざったような、魔術の輩が儀式に使うような香り。この香はどこかで嗅いだことがある・・・。ブラッキーはクラクラする頭を押さえ、しばしの間目を閉じた。その横ではジャースが同じように、立木にもたれて気分悪そうにしている。


「さぁ、あそこみたいよ。あとちょっと!」


モイラの声に正気に返ると、5人は森の奥に見える広場に向かって歩を進めた。


「わぁ! すごい」
思わず声を上げたエリクとケイドは、まるで何かに憑かれたかのように広場の前で立ちすくんだ。


20181001004035_1


そこは・・・宴会場であった。

森の空き地に長テーブルがしつらえられ、その上には大量のごちそうが並んでいる。
既に大勢の客が席に着いており、思い思いの談笑をしながらブラスを傾けたり料理を頬ばったりしている。彼女の言うとおり、たしかに、結婚式場であった。


テーブルの脇、受付とでも言うべき場所に、二人の男が立って喋っている。一人は魔術師のローブを纏ったブレトンの男で、歓迎するような笑顔を浮かべている。もう一人はエリクと似た兜を被った戦士だ。ああいった兜を好んで身につけるのはノルドだが、背を向けているので詳細は分からない。


20181001003933_1 のコピー


「来たか! もうダメかと思い始めていたところだ」


「ずいぶんと大変な旅だった。ここはどこだ?」


「はじめて此処に来たときのことは、やはり忘れていたか。大変な夜だったな。きっと、あの杖を手に入れたんだろう」


「ああ、修理に必要なものはこれでいいか?」
ブレトンは兜の男から杖を受け取りながら、闖入者達の気配に気付いた。


20181001004801_1 のコピー


「ぬ? ・・・今日は客人が多い日のようだな。お前の連れか?」


「いや、サムの知り合いじゃないのか? 知らない者達だ・・・」


「あなた!」
しかしこちらは知っているようだった。ブレトンの問いに戦士が答え終わらないうちに、それを遮ってモイラが興奮した声を上げる。


「あっ、おい! 待てって!」
ブラッキーは呼び止めようとしたが、魔女はまるで羽ばたく鴉のごとく、軽やかに若者達を飛び越えて男たちの前に降り立った。


「さぁ、ダーリン。わたし達の結婚式を挙げましょ!」


20181001004737_1 のコピー


「え?!!」
振り向いた兜の男は驚いている。問い詰めるようにブレトンに迫る。


「サム・・・結婚式って、誰の?」


「さぁ、お前のではないのか?」


「倒れたあなたを介抱した後の夜、蛍の光に包まれながら森の一番大きな木の下で誓ったでしょ、私たち結婚するって!」
モイラが兜の男に詰め寄っている間、サムと呼ばれたブレトンは、少し離れた所で様子を伺っているブラッキー達四名を面白そうに眺めていた。ブラッキーはなぜか男が手招きしているように見えて、騒がしさの中心に足を進めた。


「それはそうと、大事なものが足りぬぞ、友よ」
サムは少し失望したように兜の男に言った。


「ハグレイヴンの羽根が・・・、まさかこの鴉女から毟れとでも言うのか? おお、そうか、そのために連れてきたのだな!」


「そういう訳では・・・」


20181001005622_1 のコピー


「さぁ、ダーリン!」


「うるさいヤツだな、この女は。なんとかならんのか」
サムはモイラの手を掴むと、そこから指輪を抜き取った。抗議の声を上げる彼女を無視すると、何か言いたそうなブラッキーに場所を空けた。


少女は何か促されたような気がして、荷物の中に入っていたカラスの羽根を取り出してサムに見せた。
「取り込み中悪いんだけどさ、羽根って・・・もしかしてこれ?」
昨日、目覚めたときに手にしていたものだ。改めてよく見ると、モイラの胸元と首を美しく演出している飾り羽根と似ていなくもない。


20181006010125_1 のコピー


「おお、ハグレイヴンの羽根、その他色々だな。出して見せてくれ、どれどれ・・・」


サムはブラッキーから受け取った羽根を、兜の男が持ってきた別の品々と一緒に近くのエンドテーブルに載せた。そして一歩下がり、大きく息を吸うと、彼の身体は光に包まれた。


20181001011425_1 のコピー


顔を背けたブラッキー達が、光の納まった後、目を覆った手をどけると、サムの姿は消えていた。そして代わりに、巨躯のデイドラが目の前に立っていた。


「うわっ・・・!」


「デイドラだ! デイドラだよ!」
ケイドとエリクは尻餅をついてしまい、そのままの姿勢で地面で剣を抜く。よろめきかけたブラッキーは、ジャースの身体にぶつかって、かろうじて転倒を免れた。


20181001011435_1 のコピー


兜の男につきまとっていたモイラも一瞬固まり、現れたオブリビオンの住人を凝視している。動けない彼女に近づくと、デイドラはその指から結婚指輪を抜き取ってエンドテーブルに放る。


ブラッキーは大騒ぎが起きるかと一瞬テーブルに目を走らせたが、そこに飛び込んできたのは何事もないかのように続いている宴会という、非現実的な光景であった。


(うえっ・・・また化かされてるの?)


騒いでいるのは彼女たちだけで、客達はまったく驚く素振りも見せず、テーブルで飲み食いを続けていた。


20181001011255_1 のコピー


「慌てるでない、慌てるでない・・・」
現れたデイドラは、剣を抜いた若者達にじっとしておれというように左手を伸ばして制すると、宴会のテーブルからアルトワインをひと便拝借してきた。何をするのかと旅人達が凝視する視線の先で、悪魔はエンドテーブルの上に置かれた"材料"・・・壊れた杖、巨人のつま先、結婚指輪、そしてハグレイヴンの羽根、にワインを振りかけた。


「聖水はこれでよい」


そして右手に集めた妖しげな光をテーブルの上に注ぐ。
しばらくすると、材料は光の粒となって霧散し、そこには一本の杖・・・薔薇の花びらを模した杖が復元されていた。


20181001013525_1 のコピー


満足げに杖を眺めるデイドラに向かって、兜の男が口を開いた。


「サム・・・いや、お前は・・・サム・グエヴェンではないのか?」


「合っているぞ、定命の者よ。サムだ。このニルンではサム・グエヴェンと名乗っている」


「デイドラか!」


「さよう。吾はサムでもあり、サングインとも呼ばれている。放蕩と快楽を司る、デイドラ王の一柱である・・・あ、酒も司っておったかな」
威厳に包まれながらも、どことなく愛嬌を見せるデイドラは、自ら王の一人であると名乗った。


20181006003657_1 のコピー


「どうして・・・自分を選んだんだ、サム」
兜の男はデイドラロードを恐れずに向き合った。


サングインは少し考えるように間を置いたが、やがて誤魔化すようにニヤリと笑った。
「正直に言うと、いつも深く考えたりしない。だが・・・旅をしとるんだろう?」


「そうだが・・・」


「ちょうど、あの迷い子たちのように・・・」


20181006003340_1 のコピー


デイドラの王は続けた。


「世界に出て様々な喜びに触れたい、そんな気持ちにさせる何かが必要だった。それがお前であったのかも知れぬな。ああ、お前が帰ってくるのが遅いから、もう思い出せなくなってしまったさ。悪く思うな」


「それじゃ、ただのお遊びだったのか?」
兜の男は不本意そうな顔をした。ここに来るまでにずいぶんと大変な目に遭ってきた様子だ。


「何? お遊びだと? 放蕩を司るデイドラの王は、単なる"お遊び"などに興じたりはしない」


20181001012052_1 のコピー


「お遊びだったのと聞きたいのはこっちよ!」
少しの間黙って聞いていたモイラが、ガマンできないと言った口調で金切り声を上げる。


「指輪を返して!」


「もう杖と同化してしまった」
サングインは煩わしそうに片眉をしかめると、手を挙げた。


20181001012126_1 のコピー


「ハーシーンの眷属よ、ここは吾の遊び場だ。去ぬがよい。それとも、その身を焦がすような快楽の虜にしてやろうか?」その言葉に反応するように、モイラの身体が光に包まれる。彼女は兜の男の方に手を差し伸べるように伸ばすと叫んだ。


「くっ・・・、待ってなさいよ。あたしはあなたを諦めないわ。絶対夫にするんだから!」


20181001012712_1 のコピー


そう言って、魔女は消えていった。


「あっ! お姉さん・・・」
跡形もなく姿を消したモイラを目で追って見つけられず、ブラッキーは中途半端に手を伸ばした状態で固まった。デイドラ・ロードは"静かになった"と言った顔で息を吐く。騒ぎが好きなデイドラの筈であったが、ブラッキーにはそのように見えた。


快楽の王は、兜の男に向き直ると豪快に笑った。


「さてさて・・・とうとうそれを成し遂げたな! ここ100年で、いちばん嬉しい出来事だ。200年前のレヤウィンの裸の晩餐会も良かったが、いやいや、めでたいめでたい。100年前はええと、なんだったかな・・・」


20181001011512_1 のコピー


サングインは杖の復元に使ったアルトワインをラッパ飲みすると、脇の樽からエールを注ぎ、兜の男にも飲むよう促した。「・・・最初は、ちょっとした楽しみだったが、すぐに分かった。お前さんが、この神聖とは言えない杖を持つのに相応しい者だとな」


「一応・・・礼を言った方が良いのだろうな?」


「気にするな。お前も、もう行ったらどうだ? 杖を持った者を閉じ込めても、つまらんからな。結婚式を台無しにしてしまって悪かったな」


「いや・・・むしろ助かったというか・・・」


「ガハハ、さぁ、飲め。もっと飲め!」


20181001013829_1 のコピー


サングインに勧められるまま、兜の男は浴びるように酒を飲み始めた。どう見ても操られているようにしか見えない。ブラッキーは嫌な予感がしたが、ひとつ片付いて、デイドラ・ロードの興味が今度は自分に向くのを感じずにはいられなかった。


サングインは身を乗り出して、少女を覗き込んだ。
「フム・・・知識の悪魔の烙印持ちか・・・、だがいい。吾は人間が好きだ。面白いやつばらであればなんでも良い、なんでも良いのだ、うわっはっは!」


(知識の悪魔? 痛つッ・・・)


a20180421122506_1 のコピー


何か引っかかる単語だったのか、思い出しそうになると、頭痛が襲ってきた。横を見るとジャースも同じように頭を抱えている。エリクとケイドは何が起きているのか分からず、腰を抜かしたままの姿勢であった。


頭痛が治まってくると、少女はようやく、相手を観察する余裕が出てきた。
「ねぇ! お姉さん、まさか、死んじゃったの?」


サングインは面白そうにブラッキーを見ると首を振った。
「まさか、そんな無粋なことはせぬ。退場願っただけだ。吾の選んだチャンピオンに、獣の臭い匂いはつけるに忍ばぬのでな」


20181001014834_1 のコピー


「獣って・・・ハーシーンってやつ?」


「ガハハ、デイドラ・ロードを呼び捨てとは、娘よ。そちも面白い奴だの。気に入った。そう・・・吾はハーシーンやバルは好かぬ。奴らは吾の扱うべき快楽の一部、狩りや支配、陵辱といったおもちゃを持って行きよったのだ」


「そっか・・・それでモラグ・バルの仕業なのにサングイン吸血病っていうんだね。元はサングインのおっちゃんのものだった、と」


「ハハ、それはサングイネア吸血症であろう。吾とは関係ない。モラグ・バルの仕事だな」


「え、じゃあなんでサングイン吸血病っていうのさ?」
サングインは無知な小娘の蛮勇を楽しんでいるようであった。


20181001014215_1 のコピー


「サ・ン・グ・イ・ネ・ア・吸血・症だ。・・・吾が司る属性の色は血の赤、葡萄酒の赤。吸血鬼共の目の色と同じ"血紅色"。勘違いされておるのだよ」


「誤解されたままでいいの?」


「なぜいかんのだ? 構わぬ。面白いではないか」


「はぁ・・・」


サングインはまるで叔父のように、少女とのやり取りに甲斐甲斐しく応えてやっていたが、その行動原理は基本的に、面白いかどうか、気持ちよいかどうかだけであった。酒や性交と言った分かりやすい快楽や娯楽だけでなく、殺人や拷問などの歪んだ欲望も全て含まれる。考えようによっては非常に危険な、人の倫理観で測れない存在であった。


ブラッキーとの会話が一段落すると、快楽の王は、まだ飲んでいる兜の男を引きずってきた。男は酩酊しており、足元がおぼつかない。


20181001014848_1 のコピー


「さて・・・こやつはどこに居たんだったかの・・・サムと飲み比べたのは・・・ヘルゲン? ブルーマ? おい! お前はどこから来たのだ? ・・・ふむ、この有り様では答えるのは無理か・・・」
先ほどのモイラにしたように、手を振ると今度は兜の男が光に包まれる。


「ええい、忘れた! あの辺りならどこでもよいだろう。勇者よ、達者でな、また飲み比べようぞ!」


20181001015347_1 のコピー


兜の男は、タムリエルのどこかに転送されていった。


(帰り道が消えたのは、こうやって帰るからなんだ・・・)


変に納得してたブラッキーは、サングインの握っている薔薇形の杖に気がついて尋ねた。


「サングインのおっちゃん、それは?」
ブラッキーは放蕩の大公が手にした杖を指さした。


20181006002532_1 のコピー


「ああ!!、! あやつめ。薔薇を持って行くのを忘れておるでは無いか! ・・・いや、送り出したのは吾であったか?」画竜点睛を欠く、大失敗をしてしまったという顔をしている。ブラッキーは、デイドラでもこんな顔をするんだ、と少し面白くなった。


「・・・まあよい、いずれまた、まみえることもあろう。それよりも・・・お前たちもせっかく此処に来たのだ。パーティのゲストを手ぶらで帰してはサングインの名が廃る。奴は行ってしまったから・・・そうだな、代わりに持っていくといい。お前たちにこの薔薇をやろう」


快楽の王は、薔薇の杖を差し出した。


「いいって、おっちゃん」


20181006003310_1 のコピー


「構わぬ構わぬ。・・・これは吾の領域、"無限の宴の地"に咲く花のたった一輪に過ぎぬ。無論、定命の世界では大きな力を発するであろうがな。・・・狂気の王めの宝物、ワバジャックに匹敵する逸品じゃぞ。街の中で使ったら、さぞ見物であろうな」


そう言うと、ようやく起き上がってきたエリクやケイド、そしておとなしくしているジャースらを一瞥する。


「今度はボクたちの番?」

ブラッキー達四人のまわりに光に現れて包み込む。


20181001184403_1 のコピー


「うむ・・・、さて、お前たちは・・・どこから来たのだったかな・・・」


ブラッキーはすかさず言った。
「ボクたち? ウインドヘルムだよ!」


「おお、キャンドルハース・ホールか!」


「そうそう! よく知ってるね」


「当然だ。吾はタムリエル中にある酒場を全て知っておる。よし、送ってやろう」
デイドラの向こうでは、未だに大宴会が続いている。身体が透けてゆくのを感じながら、何か一つぐらい食べておけばよかったな、と少女はとりとめもない感想を抱いた。


20181001184512_1 のコピー


「さらばだ、予期せぬ参列者達よ。吾の宴・・・面白かったであろう?」


そう聞こえた後、彼女たちは気を失った。




・・・




・・・




20181001105342_1




・・・





「困るよお客さん! 泊まるんだったらちゃんと手続きして、それからにしておくれ!」


20181001105312_1 のコピー


明け方、予熱されて暖かい地下室・・・


エールの醸造槽の横で転がっていた四人は、宿屋の主人の怒鳴り声で起こされた。


20181001105035_1 のコピー


しばらく自分たちがどこに居るか分からなかったブラッキー達は、女将のエルダ・アーリー・ドーンと一悶着した後、宿代を二日分余分に払うことで衛兵に突き出される事態を免れた。


イーストマーチの温泉地帯で魔女と会ってからというもの、彼女たちの記憶はかなりあやふやになっていた。四人の記憶をつなぎ合わせて、どうやらサングインの乱痴気騒ぎに誤って招待されてしまい、その後ウインドヘルムまで飛ばされてきたことを理解したのであった。


彼女たちはストームクロークの検問に引っかかることなく、イスグラモルの王城、ウインドヘルムの城壁内に入り込むことが出来たのであった。


20181001141754_1


「災い転じて福と成す? 諍い果てての契り? マーラの気まぐれ? ・・・とにかく、ウインドヘルムにはついたってわけだ」
エリクはどこまでも前向きだった。


「とりあえず上に上がってみようじゃないかね」
旅人たちは、宿屋の地下から出て、街に繰り出すことにした。


20181001111534_1 のコピー


「それにしてもブラッキー、デイドラ大公に嘘つくなんてすごいな」


「へへ、少しでも距離稼いでおきたかったからね」


「そんなこと言うなら、ソリチュードの方が良かったんじゃない? どうせ行くなら」


あっ、と気がついて、少女は頭を抱えた。
「バカッ! なんでそれを早く言わないのさ!」


「まあ、鉱山のソンダスさんに頼まれた伝言も伝えなくちゃならないから、この街を飛ばしちゃうわけには行かないさ。せっかく来たウインドヘルムだし、お姉さんの足跡探そうぜ」


20181001111557_1


「そうだね。でもモイラの姉さん・・・、嗅覚で分かるって言ってたけど・・・魔女になったらぼくもメリスねぇちゃんの居場所わかるのかなぁ。頭蓋穿孔やればよかったかなぁ、やっぱり」


ブラッキーはモイラに魔法の凄さを見せつけられ、少し考え込んでいた。


「まだ言ってる。止めなよブラッキー、オブリビオンの領域に毒されちゃった?」


「はは、そんなことないって。なあ、ケイド。・・・って、おとなしいね。まだ頭がはっきりしないの?」
そう言うと、彼女は城壁に腰掛けてぼーっとしている鍛冶屋の息子を突っついた。
「ケイド。なぁ・・・ケイド?」


鍛冶屋の息子は、呼ばれたことに気付いてハッと居住まいを正すと。一言呟いた。
「モイラさん・・・素敵だったな・・・」


20180930225346_1 のコピー


鍛冶見習いの少女とかけだし傭兵は顔を見合わせた。
「ハグレイヴンだぞ?」


「でも、結婚式があんな風になっちゃったってことは、まだ望みはあるってことだよな」


「おい、本気かよ?」


この青年も、エリクとは違う向きに前向きだ。


サングインに渡された薔薇の杖は、とりあえずブラッキーが預かることになった。いずれ効果が明らかになることもあるだろうが、花とは言ってもデイドラのアーティファクトだ。何が起こるか分からない。


20181006001808_1 のコピー


「ねぇ・・・このワンド・・・何が起きるのかな? あのデイドラ、教えてくれなかったけど・・・。モイラさん、呼び出したり出来ない?」ケイドが恨めしそうに杖を見ている。ブラッキーはしばらく、彼の目につかないところに隠しておこうと心の中で誓った。


「いいかケイド、ぜーったい街の中で使おうと思ったりするなよ」


「ブラッキー、意外と常識人だね」


「お前らがおかしいだけだろ、特にケイド。お前魔女の魅了に掛かっちゃってるんじゃないの? 聖堂あったら見てもらっておけよ。まったく、ジャースにケイド・・・どうしてこう街に着くたび司祭に見てもらわなきゃならないのさ、どうなってるの、ボクらの一行は・・・」




・・・




a20180526203115_1 のコピー


「そういえば、あの戦士、どこに飛ばされたんだろうな?」


エリクは自分と同じ兜を被っていた戦士の行方が気になるようだ。


「あの死体の山も・・・」

ケイドはモイラのことを頭から追い払おうとして、彼にとってショッキングだったもう一つの別の光景を思い出していた。


「さぁ、どうでもいいよ。それよりボクらのことに専念しよう。とにかく、ソリチュード行きの船を見つけないとね」


20181001141916_1 のコピー


「うん、行こう! ・・・っと、その前に腹ごしらえだ!」


四人は寒空の中、ウインドヘルムの市街に駆け出すのであった。


Skyrim Map 2-Interlude4-2 のコピー



(つづく・・・)




※使用mod


・Latria_Follower Version:1.8.2( Nexus 84562 )
 お世話になっているようざんさんのお姉さんフォロワーです。
 今回はまさかのハグレイヴン役、ウィッチミスト・グローブに住むモイラとして使わせて頂きました。
 サングインのクエで散々な目に遭う彼女ですが、このお話では生存して、含みを持たせた幕引きにしています。いいキャラなので、また出番が作れたらいいな~と思いますヾ(๑╹◡╹)ノ"


・モイラの回想シーン
 ドレイクロウでの魔女たちの日常としてのSSを、お世話になっているsasaさんがご厚意で提供してくれました。

 ありがとうございますヾ(๑╹◡╹)ノ" ・・・リノンちゃんもアメリちゃんもかわええ(*´ω`*)


このSS↓
https://blog-imgs-122.fc2.com/4/e/2/4e201/enb2018_7_7_13_8_29-.jpg

https://blog-imgs-122.fc2.com/4/e/2/4e201/enb2018_7_7_13_11_30-.jpg


元となるsasaさんのブログ(Reincarnation~魔女と狂王編~ Ch2.-1 樹上の街と小鬼)↓
http://mountainsam.blog.fc2.com/blog-entry-15.html


・Strange Isle by Team MCY( The sky is the limit./個人サイト )
 カタリア女王の造形でもお世話になったMisizuさんのロケーションmodです。
 元々は昨年(2017年)のハロウィン用に作られたものですが、その中の『死体肉の壺』がセンセーショナルだったのでいつか使いたいと思っていました。
 今回ストーリーと直結するシーンがあったので、惜しまずふんだんにぶちまけましたww


・グレンモリルの魔女
 -Tes3 Morrowind / Bloodmoon -
 -Tes4 Oblivion
 -Tes5 Skyrim / Dragonborn


 本編でも少し説明しましたが、第3紀の終盤、シロディールのドレイクロウという場所に居た温厚な魔女です。
 3世代の作品に渡って登場している魔女集団です。普通の方法では治療できない吸血鬼やライカンスローピィに対処することの出来る有能で異能な集団でした。
 Tes3ではソルスセイム島でウェアウルフの治療を、Tes4では吸血鬼の治療を行ってもらうことが出来ます。

 Tes5であのような姿になっていたことに衝撃を受け、今回は周辺状況からミッシングリンクを結んでみました^^


 ちなみにハーシーンにまつわるライカンスローピィ治療はTes3(Morrowind)のDLCであるBloodmoonのクエストで


  ①罪のない女性のノルドを祭壇に寝かせ、その心臓を抜き取り
  ②狼から抜き取った心臓をその代わりに埋め込み
  ③生まれたウェアウルフを殺す


 というハグレイヴン真っ青な儀式を経て完成します。


 このような邪法に傾倒していた姉妹たち、そしてスカイリムに流れ着いてからハグレイヴンたちとの交流が生まれ・・・、のような発想です(๑╹ω╹๑ )


・Hunting Grounds( Nexus 32371 )
 狩りを司るデイドラ、ハーシーンの領域、ハンティング・グラウンドを追加します。
 ゲーム上は家追加modに分類されるかな…Haven Bagと似ていて、狩りの角笛を吹く(装備する)と領域に飛びます。
 今回はハーシーンのイメージ作りに使わせて頂きました。デイドラ由来の土地ですが、ゲーム内ではとても自然が綺麗で、落ち着くロケーションになっています^^


・Old Gods of the Hunt- Mihail Monsters and Animals( Nexus 84426 )
  (Mihail immersive add-ons- Forsworn- Wild Hunt- Witcher)
 ハーシーンにまつわるクリーチャーとして、『古の狩猟の神』を追加するmodです。
 実際は血肉を備えていますが、今回はハーシーンそのもののアバターとして使わせて頂きました。
 コンソールで味方NPC化して、半透明になる効果の指輪を装備させて使っていますw


・Emily The Silent Avenger 1.3( Nexus 60786 )
 Poro Plushさまの綺麗な女性フォロワー。温泉目の保養エキストラとして使わせて頂きました。
 彼女の自宅はダークウォーター・クロッシングからイヴァルステッドに登る途中にあるから、たまには来ますよねw


・BangTam Follower: Tuyet nhi & Tam Nhi( Lovers Lab ) Adenz'sさまの美人姉妹フォロワー。

 初期配置がジョルバスクルになっているところを見ると、同胞団の一員という設定なのでしょうか。
 タム・ネイ、ツェト・ネイ姉妹のうち、今回はタム・ネイさんを温泉エキストラとして使わせて頂きました。


・焼き魚 in Skyrim( Regidents of Skyrim/個人サイト )
 変わり種modを数多く作られているponさんの焼き魚です。
 勝手に命名(๑╹ω╹๑ )
 キャンプを彩る小物として、良い味出してくれました。
 いつもお世話になっています~(*´﹃`)ジュルリ・・・


・Convenient Bridges ALPHA( Nexus 60620 )
 スカイリムの各地、「あったらいいな」の場所に橋を追加するmodです。
 石造りだったり、倒木だったりと、その地域に合わせた雰囲気の橋が架かって、景観上もゲームプレー上もとても良い物です。オススメ^^


・Althirs enhanced companion and drivable carriage commands( Steam Workshop )
 馬車を呼び出したり消したり、NPCの乗車位置を調整したり出来るmodです。
 このmodを使う前はJaxons Positionerで馬車の構成パーツや馬を毎回配置していたので、作業の手間が大きく軽減されました。
 もちろんゲームプレーに使えて、ちゃんと乗って移動できますし人も轢けます(((( ;゚Д゚))))


・Legendary Cities - Tes Arena - Skyrim Frontier Fortress( Nexus 47989 )
 Tesシリーズの初代、Arenaに存在した町村拠点のうち、スカイリム地域のものを追加するmodです。
 イェアメリスに続いてブラッキーも訪れたサンガードの街はこのmodによって再現されます。

 同じ名前の帝国軍の城塞がリーチ・ホワイトラン・ファルクリースの州境にも存在しますが、それとは別の場所です。
 トレヴァ川にかかった橋の袂に出来た町で、ゲイル湖を望んだ風光明媚な場所でオススメです^^


・Hip Bags( Nexus 50370 )
 おしり・・・というか腰につけるバッグのバリエーションを追加するmodです。
 ジャースが荷物持ちとして、飲料水も運んでいるという設定で使わせて頂きました。

 ゲーム内でも持ち運べる重量UPなど、ちゃんと意味のある効果になっていて、冒険のお供に楽しいですよ^^


・Red Mountain Erupts( Nexus 41561 )
 第4紀になっても噴煙を上げ続けるレッドマウンテンの煙を、スカイリムからでも見えるようにするmodです。
 イーストマーチやリフトを旅するときには雰囲気抜群です。天気のいい日にはホワイトラン平原からでも見えたりします。

 タムリエルって空気が綺麗なんですね(゚∀゚)




次の話は既に書き上がっていて、SSも4割ぐらいは撮っています。今回は冒険ドタバタ旅でしたが、次とその次あたりからイェアメリスとブラッキーの軌跡がクロスし始めて、第2部のクライマックスに向かって加速していきます。またお楽しみに~ヾ(๑╹◡╹)ノ"



スポンサーサイト

3 Comments

曲亭れふ  

楽しゅうございました。

読み終えました…。
今回も超大盛でしたが、
サンちゃんのクエを上手く
取り入れましたねw
面白かったです。
ハグのモイラさん
がなかなか素敵でしたね。
モイラと言うと別のベゼゲーの
トンデモ女を思い出すのですが、
こっちだったら大歓迎です。
今回も刺激を受けたので
自分の作品にも反映させるべく
励みたいと思います。
また楽しみにしています
ʢ•ꇵ•ʡ

2018/10/13 (Sat) 00:55 | EDIT | REPLY |   

>れふさん  

検問突破にイェアメリス側は苦労しましたけど、こっちはもっとファンタジーしちゃえ~って、デイドラロードの力を借りちゃいました。道中は色々省略しちゃえばもっと簡潔に出来るんですけど、こちら側で色々とセットアップしておかなければならない内容もあるので、いつも通りの長さになってしまいましたw

ハグレイヴンに関しては、サングインのデイドラクエストと絡めることを決めた辺りから、美化方向に一気に行っちゃいました。実際、そういうmodもNexsusにありますし。
モロウウィンドのDLCに出てきたハグ(というかグレンモリルの魔女)はちゃんと人間していたんですけどね。スカイリムでは200年の間に一体何があったんだよ、って変貌ぶりですよね(^_^;)

2018/10/20 (Sat) 20:48 | EDIT | REPLY |   

どくうつぎ  

未読だったので最新話読む前に見に来ましたー!

こういうハグレイブン増えたらいいのに!

あとやっぱりもきゅさんのSSの構図、色合い、キャラクターへの服装とかへの拘り毎回すごいなーって思いながら読みました。
水辺やら植物やらが綺麗(・ω・)

2018/11/04 (Sun) 13:27 | EDIT | REPLY |   

Add your comment