4E201 - The Unsung Chronicles of Tamriel

¡Hola! Mi nombre es Moqueue. Encantada.

4E201

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2016  02:05:21

◆Chapter: 1-8 地下室

ドサッ・・・


光に手を伸ばしたイェアメリスは、前のめりにバランスを崩し、地べたに突っ伏した。
彼女が倒れこんだ先は、別の地下室だった。


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「いたたた・・・」


眩んだ視力が回復すると、ようやく置かれた状況がのみこめてくる。
むき出しの岩肌に地衣類がまとわりついた部屋はひんやりとしていて、壁には湿り気があった。元いた部屋とは違い、この部屋は地下の空洞といった感じで、柱も扉もないようだ。


肘をついて状態を少し起こすと、彼女はあたりを見回した。


ブゥン、ブゥン、ブゥン・・・


規則正しいが、耳障りな音が響いている。
音の源・・・奇妙な物体が目に飛び込んできた。


何かの機械? ・・・岩むき出しの部屋に全く似合わない、人工的な装置が地面に設置されている。
台座らしきものの上に半透明のドームがかぶさり、その中を光が明滅していた。
ドームの中に目を凝らすと、その中で謎の石が存在を主張するように、鎮座していた。


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ドームの光は刻一刻と変化し、規則正しい音と合わさって、見る者を飽きさせない。

急に訪れた脱力感を払いのけるように、彼女は頭を一つ振って深呼吸する。その時、別の音が聞こえた。


「お・・・、・・・ス。大・・・夫・・・ 」


「・・・えちゃ・・」


耳を凝らすと、今度ははっきりと、彼女を呼ぶ声が聞こえた。


「おい、メリス。返事をしろ?!」


「ねえちゃん、大丈夫?」


アスヴァレンとブラッキーの声だ。
歪んだ光にさえぎられた、岩肌の向こう側から聞こえてくる。


イェアメリスは倒れたまま、声を張り上げた。


「あ、あたしは大丈夫。無事よ!」




・・・




光る壁にイェアメリスが吸い込まれてしまった!
地下の小部屋を探っていて仲間が消えてしまったのを、取り残された二人はあっけにとられて見ることしかできなかった。

呆然としていた二人は、正気に返ると必死に呼びかけた。


「おい、メリス。大丈夫か?!」


「ねえちゃん!!」


「・・・」


しばらく返事がない。


「おい、メリス。返事をしろ?!」


「ねえちゃん、大丈夫?」


2人はおそるおそる光る壁に近づくと、再度呼びかけた。
その時、返事が返ってきた。


「あ、あたしは大丈夫。無事よ!」


光の中から声が聞こえて、ブラッキーの顔に希望が灯った。


「ねえちゃん・・・、聞こえるの? 大丈夫?」


「ええ、大丈夫。ちょっと転んだだけ。怪我はないわ」

今度は先ほどよりもはっきりと聞こえた。


驚くべきことに、光のこちら側と向こう側で、声は通じるようだ。


アスヴァレンは目線を下におろした。すると、光る壁の中から、こちらに向かって何か突き出しているのが目に入った。・・・彼女のブーツだ。彼らの目には、光の中から、イェアメリスの片足が突き出しているように見える。


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「お前の片足が、こちら側に見えるんだが・・・なんともないのか?」


「え? ・・・あたしはなんとも・・・這いつくばっているけど」


「よし、じゃあねえちゃん、引っ張るね!」


「え? きゃっ!」


急に引っ張られて、イェアメリスは小さな悲鳴を上げる。
反対側・・・小部屋の方から、ブラッキーが彼女のブーツをつかんで、引きずり戻したのだった。


「よし。回収~っと!」


光の壁から引きずり出されて、再び三人がそろった。イェアメリスは地面に座り込むと、しばし呼吸を整えた。


「びっくりした~。ねえちゃん吸い込まれちゃうんだもん!」


「違うのよ、ブラッキー」
イェアメリスは立ち上がると、服についたほこりを払い落した。


「吸い込まれたんじゃなくて、転んだの。・・・この光のところ・・・壁に見えるけど何もないのよ。手をつこうとして、何もないから向こう側に倒れこんじゃったってわけ」


「え? じゃあ、ただのドジ?」


「んもう、そう言う言い方はないでしょ・・・まあ、実際そうなんだけど・・・」


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3人は改めて、空間をゆがませる光の壁を前にして、つぶさに観察した。


「で、向こう側はどうなっていたんだ?」
彼女が無事だとわかった途端、アスヴァレンの興味は、早くも壁の向こうに向かっていた。


「え・・・ええ。空洞よ。こっちとは違って、自然の地下洞みたいな・・・あ、でもトンネルとかじゃなくって、小さい部屋が一つ。それから・・・」


「それから?」
2対の好奇の目が彼女に向けられる。


「なにかの装置があったわ」


「装置? なんだそれは?」


「分かるわけないじゃない。あたしも見るの初めてだし。説明しようにも・・・自分で見たほうが早いと思うわ。」イェアメリスは片腕を光の歪みに突っ込んで見せた。


「とりあえず、罠とかではないことは分かったし」


「ねえちゃんが体を張って、調べてくれたからね~偶然」


「あ~、なんか棘ある」


ブラッキーは、イェアメリスの不満を受け流して、光の壁に踏み込んだ。


ゴンッ!


「痛っ! なんだよこれ?! 壁だよ!」


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てっきり反対側の部屋に抜けるものと思って踏み込んだブラッキーは、踏み込もうとして、壁に阻まれた。したたかに頭をぶつけてしまう。


「うぅ~、ひどい! 痛ったぁ・・・、嘘つき、通れないじゃん!」


「えっ? どうして」


光の壁は、ブラッキーの通過を妨げているようだ。


「・・・ふむ。どうなっている?」


アスヴァレンが興味深げに、手に持った弓の先で光の壁をつついてみると、コン、コン、と壁に当たり遮られるのが確認できた。手を出してみると、光の先にしっかりとした壁の感触が感じられる。


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「壁だな・・・」

イェアメリスを見る。

アスヴァレンの手は壁の感触をしっかり感じているが、彼女の腕はまるでそこに何もないかのように、肘までもぐりこんでいた。

「これはどう説明されるべきか・・・」


「え、え?」
壁に手を突っ込んで、かき回すように腕を回すと、イェアメリスは困惑した目を2人に向けた。
壁は彼女にとっては存在しないのだ。


「我々は通れないようだ」


「どういうこと?」


「俺に分かるわけあるまい」
答えながらも、アスヴァレンの目には、挑戦的な光が映っていた。




・・・




三人は一旦、地上に戻ってくると、軽い食事をとることにした。

石柱の近くに腰を下ろして、固いパンを分け合うと、エールを回し飲みする。
海からの風が気持ちいい。秋のこの時期は、キルクモアの気候の中でも一番の季節だった。


一休みしていると、遠く水平線上、こちらからだと北東の方角に船影が見えた。


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(あら・・・船だわ)


キャムローンからの次の便まではまだ日数があるはず。ヨクーダ方面の定期船はこんな方角にはいるはずがない。一瞬、新たな奴隷商船や海賊船の出現を思って背筋がピリピリしたが、よく見ると見覚えのある東帝都社の船影に似ている。たぶん大丈夫だと思うが、念のため戻ったら報告しておこう。


アスヴァレンの方は食事もそこそこに、持ってきたノートに何やらいろいろ書きこんでいる。しばらくして彼は視線を上げると、イェアメリスに向き直った。


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「少し時間あるか?」


「え、ええ。まだ昼を過ぎたばかりだから、帰りのことは心配しなくてもいいわ。・・・でもなんかちょっと、疲れたわね」
イェアメリスは軽く空を見上げると、立ち上がって2人を手招きした。


「これから満潮だから、船は少し引き上げておいた方がいいわ。手伝って」


「は~い。船流されちゃって、泳いで帰るのは嫌だからね」


「さすがにそんな元気はないわ。朝から働き通しだし」


「光の壁の先には、ほかに何かあったか?」
アスヴァレンも船を引き上げるのを手伝ったが、珍しく饒舌だ。
手を動かしながらも質問はやめない。


「そういわれてみれば、装置に気をとられて、よく見てこなかったわ」


「そうか・・・では、もう一度入ってみろ」


「ええ、そのつもりよ」


三人は地下の部屋に降り、イェアメリスはさらに踏み込んで、再び光の壁を潜って空洞に入った。
妙な倦怠感を覚えたが、頭を振ってはっきりさせると、光に目を慣れさせる。


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音と光を発する装置。どうしてもそこに目を奪われるが、今度はもう少しよく、周りを観察してみることにした。
空洞内は他に何もないように見える。彼女は装置に触れないように、部屋の外周を回ってみた。地面に落ちているのは岩の破片や小石が大半だったが、その中にぼんやりと光を発する何か転がっている。よく見ると、装置の中で浮遊している謎の石と同じものだった。


ぼんやりとした光を目印に、もう一度空洞を見回すと、無造作に幾つか転がっているのが見つかった。特徴を予め分かっていなければ、見落としてしまうような石だ。
短剣の先でつついてみたが、ぼんやりとした光を発する以外は何の変哲もないように見える。


「ねぇ、鉱石らしきものを見つけたわ、光ってるの。装置の中に入っているのと同じだわ」


「持ってこれるか?」


「ええ、ちょっと待ってね」
アスヴァレンの呼びかけに答えると、彼女は足元から光る鉱石を3つほど拾い上げ、光をまたいだ。


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「ふむ・・・確かに」


魂石、ウェルキンド石、他にも光る鉱物はある。それほど珍しいものではないが、魔術に関わりがあることが多い。イェアメリスから受け取った鉱石を、アスヴァレンとブラッキーはそれぞれ手に取り、撫でたり眺めたりして観察した。


「この石、中心は固いけど、周りは脆くて埃っぽいね~」


ブラッキーは鉱石をこねくり回している。
少女の言うとおり、謎の鉱石は周りが脆く、灰を固めたような手触りだ。こすると埃が立つ。子供の頃、遊びで作った泥だんごを乾かしたような、そんな感触だった。


アスヴァレンの方も、似たようなことをしていた。
「石以外には?」


「さっき話した装置ぐらいしかなかったわ」


「なんとかそれを見ることができるといいのだが・・・」


「これと同じ石が、装置に入っているわ」


「うむ・・・しかしお前だけが通れるとはな・・・」


「あたしにもさっぱり」
彼女はお手上げ、というそぶりを示した。


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「キルクモアの住人ゆえ、というのは考えにくいな・・・ううむ。え? ブラッキーおまえ、何をやっているのだ?」

既に飽きてしまったブラッキーは、手持無沙汰からか無意識に、床に落ちているレンガや、剥がれ落ちた鉱石の破片を、光の壁に向かって放りはじめていた。


「まだ何かあるの? もう島に戻ったほうが良いんじゃない?」


ブラッキーが放った屑は、光の歪みを通過することはなく、背後の壁に当たって地面に落ちていた。手慰みになるものがなくなって、少女は最後に残った鉱石の芯を見つめた。


「こ~んな石っころ、収穫にはならないよね」


つぶやくと、壁に向かってぽいっと放る。遺跡の研究者から見たらとんでもない所業だ。
アスヴァレンは思わず非難を浴びせようと口を開きかけたが、少女の引き起こした結果をみて息をのんだ。


「それだ!」


普段物静かなダンマーの大声に、二人の女性がびっくりして振り返る。
ブラッキーの放った鉱石の芯は、壁に当たることなく光の歪みに吸い込まれていた。


「え? あんちゃん。何? 何?」


「お前のおかげで少しわかったぞ、ブラッキー。最後に投げたやつ、この鉱石は壁を通過できるらしい!」


ブラッキーは慌てて、自分が鉱石を投げ込んだ壁を目で追った。


「え? あんちゃん、それじゃぁ・・・」


「試してみる」


アスヴァレンはぼんやりと光る鉱石を手に持ち、壁に向き合うと、その手を差し伸べた。


「やはりな」


その腕がスルッと埋まった。壁に跳ね返されることなく、彼の腕は障壁を越えたのだ。
そのまま一歩を踏み出すと、アスヴァレンの身体は壁の向こうに消えた。


「すごい! 通れるんだ!」


ブラッキーは、イェアメリスの持ち出した最後の一つを掴むと、ダンマーに続いて、・・・先ほど頭をぶつけていたので・・・おそるおそる壁に入っていった。
イェアメリスも後に続く。彼女は最初と同じ、手ぶらだった。


・・・空洞はひんやりとしている。


最初に入ったときに感じたのと同じ、一通りの感想を2人が述べるのをイェアメリスは上の空で聞きながら、わずかに頭をもたげてきた眠気と戦っていた。この壁を通り抜けると、やけに疲れるのだ。気を取り直して彼女は、装置の前に立つアスヴァレンに並んだ。


「これ・・・何なのかしら?」


アスヴァレンの顔は装置の出す光に照らされて、輝いていた。
「確かに、お前の言うように、この鉱石が置かれてるな・・・」


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「分かる?」

錬金術師は首を振ると、装置の前にしゃがみこんだ。更に顔を近づける。
「この台座の部分はドゥーマーの様式に近い。材料もドゥーマーの金属だ・・・。だが、この上の部分の半透明のドームは違う、これは俺もよく知っている」


「ドゥーマーが作ったものだというの?」


「いや、それはないと思うが・・・ドゥーマーは種族ごと消滅する前、タムリエル北部一体の地下に暮らしていたというが、東はモロウィンド、西はロスガリアン山脈の地下までで、こんな西の方、しかもヨクーダの道半ばまで進出していた記録は残っていない」


「でも、レッドガードたちの伝説には、よくドゥーマーの話出てくるじゃない? ストロス・エムカイのハンディング湾にも、彼らの”墜ちた星船”が残されているくらいだし・・・彼らの伝説では、レッドカードは故郷でドゥーマーの都市を利用していたとも言われているわ」


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「ふむ・・・よく勉強しているじゃないか」


「一応あたしも、学問の徒ですからね」
彼女はアスヴァレンに手招きされて、横から装置を覗き込んだ。


「しかしこれは違うな。見てみろ」
彼はドゥーマーの金属でできている台座を指さした。
「これは一度、インゴッドにしたものを人間が鋳造したものだ。ドゥーマー特有の測ったような、一部の隙も無い均一さがない。合わせ目が少し甘いように思う」


「新しく作られたもの?」


「・・・そうだな。そんなに歴史的に古い連中・・・ドゥーマーが作ったものではない、ということだ。しかも上に載っている仕掛けはスタルリム製だ。我々ダンマーがよく使う素材だ。つまり、ふむ・・・興味深いな」


「あんちゃん、スタルリムって何?」
辺りをきょろきょろ見回していたブラッキーも、2人の会話に参加してきた。


「ん? ああ、これはな・・・」
アスヴァレンはあまり知られていないこの鉱石について、ブラッキーに教えてやった。
スタルリムはスカイリムやモロウィンドの北方に存在する鉱石で、古代ノルドの棺の周辺で見られる、魔法的に鉱物化した氷だといわれている。200年前にスコールの部族で採掘と加工の方法が確立されてから、武器や防具の秘伝の材料と技術として、ソルスセイムで希少量が取り扱われるようになったものだ。
アスヴァレンの持つ弓と、氷の剣”アトモーラのくさび”も、スタルリム製であった。


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「で、肝心の、これの役目は何なの?」


「分からん。そもそも、ドゥーマーの技術とスタルリムの秘伝は時代が全く違う。離れすぎていて接点がない」


「ふ~ん。だから最近作られたんじゃないかって思ったんだね」


「うむ」


アスヴァレンは生命探知を使ってみたが、生物とも、死者とも反応は出なかった。純粋な”モノ”であるのは確からしい。計る術はないが、手に持つ謎の鉱石から装置に向かって、緩やかなマジカの流れのようなものが感じられた。
イェアメリスは話を聞きながら、先ほどより襲ってきた眠気と戦っていた。


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「凄そうなものを見つけたことは確かなんだけどね~」
ブラッキーは空洞の中に落ちている、光る石を改めて数個手に取った。


「じゃあ、この石は、なんなんだろ? 魂石とかとも違いそうだけど… 粉っぽいよ」


「灰を固めた物のようにも見えるが…近くに火山もないようだし。どこかで見たことのあるようにも思えるのだが・・・まさかレッドマウンテンの火山灰ではないだろうし・・・」


「でも、分かったこともあるよね。この石っころは、この部屋に入るための鍵のようなものなんでしょ?」


「うむ。俺もお前も最初は壁に阻まれた、この石を持っていたから通過できた、と考えられるな。しかもこれ見よがしに、装置にもはまっている・・・」
アスヴァレンはまた一つメモを取ると、思いついたように、ブラッキーと目を見合わせた。
ブラッキーもダンマーを見る。何か言いたそうだ。


「あんちゃんやメリスねえちゃんみたいに頭は良くないけど、ボクでも気が付くよ」
少女は首をかしげて口を開いた。


「お前もそう思うか。俺もだ」


2人は、揃ってイェアメリスを見た。
「となると・・・」


「え? なに?急に」
居眠りしかけていたイェアメリスは、急に注意が自分に向けられると、あわてて上ずった声を出してしまった。居心地の悪い思いをしながら、彼女はアスヴァレンが口を開くのを待った。


「この部屋は・・・、装置は、なんだか分からんが、お前のためのモノだということだ」


「どうしてそういうことになるの? あたしはこんな装置も部屋も知らないわ」


「この石っころを持っていると入れる部屋が、ここだよね」
ブラッキーは鉱石を目の前に持ち上げて見せた。


「ええ」


「でもこの石っころは、部屋の中に、こっち側にあったでしょ? ・・・つまり、外からは入れないんだよ。少なくともボクやあんちゃんには」


「お前は入れた。この石が鍵だとすれば、お前は特別扱いされているとしか言いようがない」


「え・・・でも? じゃあ、一体だれが」
心当たりのないイェアメリスは、ただただ困惑するだけだった。


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「理屈は分かぬが、この装置を作って、しかも条件付き転移門を仕掛けられるような人物は、相当な魔術師に違いない。例えばマスター・ネロスといった」


「おじいさん? ・・・それはないわ。この島に訪ねてきたことは一度もないわよ」


装置の部屋から戻ってくると、3人はこれからどうするか話し合った。
しかし、しばし考察してみたが、装置の働きについて結論は出るはずもなく、行き止まりだった。


「・・・まあ、考えていても答えは出ないだろうし、装置の特徴は記した。後はここで出来ることをやって、いったん戻るしかないな」


「ここで出来ることって?」


「脱げ」


「え?」
思わず、イェアメリスは聞き返した。


「だから、脱げと言った」


アスヴァレンは、イェアメリスを上から下まで一瞥すると、思わぬことを言った。
早朝の浜辺での出来事を思い出して、彼女は顔が熱くなるのを感じた


「ちょっとあんた! なに言ってるの? なんであたしがこんなところで脱がなきゃならないのよ!」


「なぜお前だけがここを通過できるのか、調べねばならんだろう?」


「分からないわよ。わたしにもわかるように言ってちょうだい」
眠気が吹っ飛んで、彼女は錬金術師に食ってかかった。


「・・・つまり・・・お前が身に着けている何かが、鍵になっていないかを知りたいのだ」


「ねえちゃんの装備があやしいかも、ってことだね」

そう言われてみれば確かにそうだ。
彼女は首をひねって少し思案してみたが、確かに理にかなっている。


(なぜあたしは通れるんだろう?)


「とりあえず、外せるものを順に外して、向こうと行き来してみろ」


彼女は天を仰いだ。尤も、ここは地下室なので、低い天井しか見えなかったが。
「どうせ・・・嫌だといってもダメなんでしょ?」


「そうだ」


「はいはい・・・研究者は事実に基づいて判断するんでしたよね」
あきらめたように、イェアメリスは同意するのだった。


・・・そこから、彼らの実験が始まった。


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彼女はまず、いつも身に着けているイヤリングと母の形見の指輪を外してブラッキーに預けた。結果・・・普通に出入りできた。次に、ベルトと小手、小物入れを外してみる。それでも・・・出入りできた。


「もういいでしょ?」
そろそろ脱ぐものがなくなってきて、彼女は不安そうにアスヴァレンを見た。


「いや、まだだ」
アスヴァレンはかぶりを振って、続けさせた。


「ちょっとあっち向いていてよね!」


彼女は胴着のバックルを外すと、下着姿になった。確か今日の胴着には付呪が施されている。もしかしたらこれが影響しているかもしれない。
そう思って壁に踏み出したが、結果・・・またもや出入りできてしまった。
アスヴァレンは、地下室の壁にもたれたまま、黙って実験の様子を窺っている。


「無理。これ以上は・・・もう無理よ」


イェアメリスは懇願したが、ダンマーは取り付くしまもない。


「まだ残っている」


「裸になれっていうの?!!」


「何か問題でも?」


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「ちょっ・・・!」
下着姿の彼女はさすがに腹を立てて、アスヴァレンに詰め寄った。

「これも、脱げ、と?」


「当然だ。できることなら、目や歯、爪や髪の毛など、外せるものはすべて外して試したいぐらいだ」
とんでもないことを言いだしたが、アスヴァレンは大真面目。完全に研究者の目になっていた。


ブラッキーが慌てて割り込む。
「ちょ、ちょ、ちょ・・・あんちゃん、普通の人は目とか歯とか、外れないと思うけど・・・?」
物騒な目をして睨んでいるイェアメリスを見て、ブラッキーはさらに言いつのる。


「じゃ、じゃあこうしよう。ボクがここに残るから、あんちゃんは地上に出てて。ボクがちゃんと、おねえちゃんの様子を確認して、あとで報告するから」


「俺はここで構わんが?」
ダンマーは何が問題なのか理解できない、というように目の前の下着姿の女性を見ている。


「あたしが構うのよっ!!」


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「わー! 行こ、行こっ!」
イェアメリスが爆発した。それを見て、ブラッキーは急き立てるようにアスヴァレンを落し蓋に押し込み、地上に追いやったのだった。


「ふぅ・・・、もう大丈夫だよ」


「まったく・・・テルヴァンニの男って、どうしてあんな風なのかしら!」


「ふ~・・・ねえちゃん、ボクにまで怖い顔しないでよ~。・・・と、とりあえず、済ませちゃお」


ブラッキーに促されて、イェアメリスは渋々一糸まとわぬ姿となり、光の壁に向かったのだった。




・・・




しばらくして、3人は小島の浜辺から船に乗り込んだ。
日は中天を過ぎ、午後も半ばに差し掛かっている。


帰りの船上、イェアメリスは疲れた宣言をして、操船を残りの2人に任せ、船底に寝てしまった。
アスヴァレンは、船の中央で不貞寝ともとれるイェアメリスを一瞥すると、ブラッキーと交互に船を操った。


・・・結局、裸になっても、イェアメリスは身一つで障壁を越えることができてしまった。
そうなると、身に着けている何かが鍵になって通行が許可されているのではなく、彼女自身が許可されている、そう結論付けざるを得なかった。


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小船は、少し風の出てきた島の周りを、来た通りに戻って、日暮れごろには小屋の前の海岸に帰り着いた。
ブラッキーはイェアメリスを起こすと、寝ぼけている彼女をからかった。


「ねえちゃん。子供の頃ふざけて、この石飲み込んだんでしょ? ・・・白状しちゃいなよ」
ブラッキーは持ち帰ってきた光る鉱石を、小船の収納から取り出して運んでいた。


ブンブン・・・と彼女は大きく首を振る。


「そんなわけないじゃない。こんな石、今日初めて見たのよ?」


「う~ん、なんか、大した収穫なかった割には、わからないこと増えちゃったね」
アスヴァレンは、また、船の後ろの方に陣取っている。
「哨戒任務はこんなのでよかったのかなぁ」


「まあでも、東の海岸一帯には特に異常はなかったわよね」


「他の方面に行った船はどうだったんだろうね」


「さあ・・・あした聞いてみましょ。とにかく、なんだか今日は疲れたわ」


「ねえちゃん、帰り寝てたじゃん。まだ足りないの?」


(むぐっ・・・)


アスヴァレンの方をちらっと見る。彼はなぜか満足そうだ。
「あら? 素材採れなかった割には楽しそうじゃない?」


「収穫? 素材はどこでも手に入る。だが、船の乗り換え待ちをする間の楽しみは、なかなか手に入らんからな。取り組むに値する退屈しのぎが一つ増えたというわけだ」


「あたしとしては、なんだか楽しみとは思えないけど・・・あんたは、かなり目の色変わってたものね」


「研究者だからな」


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3人は、また明日集まることにした。
即席の小隊第一日目は、こうして解散となったのだった。




・・・




翌朝、イェアメリスとブラッキーはキルクモアの酒場に来ていた。
アスヴァレンは既にどこかに出かけたらしく、定位置の席にはいなかった。女将のフィーリアによれば、早い時間に素材採りに出かけたらしい。


(・・・明日また集まろうとか言ってたくせに、勝手なものね)


ペースの合わなささはいつものことだ。もはや腹も立たなくなっていた。


しばらく雑談をしていると、顔役のエドウィンが入ってきた。
イェアメリスとブラッキーは、昨日の様子をエドウィンに報告するために酒場にやってきていたのだった。


「おお、2人ともきておったか」


「クモ退治、ちゃんとやっておいたよ」


「ああ、アガルドから聞いとる。助かったって、感謝しておったぞ」


「そんで、沿岸のほうはね・・・」


言いかけてブラッキーはエドウィンに遮られた。


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「嬢ちゃんすまんが、時間が無くなってしまってな。これからすぐ港に行かなきゃならんのだ。もしよければ、話は歩きながら聞かせてくれるか?」
そういうと、一杯のエールもひっかけることもなく、彼は外に出た。少女たちはフィーリアにあいさつすると、慌ただしく後に続いた。


2人はエドウィンについて、港に向かって歩く。町と港の短い間で、何人もの人とすれ違った。船が付いた日はいつもこんな感じだが、今日はちょっとあわただしさの感じが違うように感じられた。


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クモ退治の様子、東沿岸部にいまのところ異常はないこと。北の小島に差し掛かった時、遠くに東帝都社の船らしきものを見かけたこと。そんなことを話していると、双子の塔が見えてきた。
港の桟橋には、船が到着していた。巡回交易船にはまだ早い。臨時の入港のようだ。
すでに船員らしきものたちが何人か、港の労働者とやりとりを交わしている。


「あら! あの船。こんなところに来てたのね」
港には昨日、北の小島で見かけた船が停泊していた。東帝都社の・・・武装艦だ。


「用もないのに港まで付き合わせて済まなんだ。ワシはちょっと話してくる」


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甲板に立っている指揮官らしき男に手招きされて、エドウィンは行ってしまった。
こんな船が訪れるのは珍しい。領主に大事な連絡があるか、または要人でも訪れたのか。このまま帰るのももったいないので、2人は手近な船員を捉まえて、興味津々で情報収集することにした。


「おじさん、ちょっと品物見てくれない?」
ブラッキーとイェアメリスが寄って行くと、警備をしていた船員が、めんどくさそうに2人を見る。


「悪いね、あまっこ達。俺は商人じゃないよ。見て分かんないかい?」


「ええ、兵士さんでしょ? 見てほしい物があるんだ」


「買えるかな? 任務だから、そんなに金持ってきてねえぞ?」


「違うよ、これ見て。どこのか分かる?」
そう言ってブラッキーが差し出したのは、刃の先が先が変な方向に曲がっている短剣だった。
難破船・・・奴隷船あさりをしていた時の戦利品の一つだ。


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「何だこれ? 変な形だな。どこで手に入れた?」


「ボク、この前島に流れ着いた難破船の生き残りなんだけど、その船、奴隷船だったんだ」


急に水兵の顔色が変わった。
彼は手招きをすると、甲板にいた別の水兵たちも、わらわらと集まってきた。


「詳しく聴かせてくれ」


水兵たちに囲まれてブラッキーは一瞬身構えたが、イェアメリスが自分も社員であることを明かすと、両者の緊張は解けた。その後、ブラッキーとイェアメリスは、水兵たちと一緒に甲板で円座になって、即席の情報交換会が始まったのだった。


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「逃げるときに、奴隷商人の奴が持ってたのを拝借したんだけどね、何か手掛かりになるかなと思って」
ブラッキーは、微妙なところをうまくはぐらかしながら、船乗りたちと話をしている。


「お前さんの言う奴隷商人と、関係あるかは分からねえんだが・・・」


水兵たちによると、私掠船が出没を始めており、アズリアン海・エルセリック海周辺で被害が増えているらしい。
帝国の武装船を使って臨検を装い、乗り込んだ後、途中で豹変してくるという手口だ。ハンマーフェル国籍の船ばかりが狙われているようで、サルモールの関与が疑われているが、いまのところ証拠がないため、周辺国は警戒を強めていたのだった。


「おっちゃんたち、東帝都社だよね? ターバンとか巻いちゃって、どう見てもブレトンじゃなさそうだけど、どこの国の人?」


「俺らはヘガーテ出身だよ」


「ハンマーフェルじゃん!」


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白金協定のあと帝国と袂を分かったとはいえ、ハンマーフェルの沿岸都市は今でも東帝都社との結びつきが強い。
スカイリムの内戦でアリクル~エリンヒル~ファルクリースを抜けてコロヴィアに出る内陸の物流も安全ではなくなっている。直接目的地の近くに荷降ろしできる海路のほうが、最近では好まれていた。


「嬢ちゃんはどこで捕まったんだい?」


「クロスワイチの近く。引っ立てられて船に載せられちゃったんだけど、そいつらが持ってた短剣がこれなんだ」


「ああ、キャムローンの外れの村ね。あんまみねぇ形だな・・・離れてるけど、リーチの連中が使うやつに似てるな。フォースウォーンとかが儀式に使う・・・」


「うぇ~・・・そういったやつなの?」


「っぽいけどな・・・あ、でも、どこかその流れをくむ山賊団が、ロスガリアンのこっち側にもいるって噂だぜ」


「ウィッチマンって言ったっけな?」別の船員が答える


「陸地も安全じゃねぇんだな・・・」


「・・・そういえば、この船なんでキルクモアに来たの?」


「話すと長いんだが・・・」船員は、自分の知る情報を元に、近海の状況を2人に話して聞かせた。


仮想敵国であるドミニオン・・・アルドメリ自治領も、国家や組織は、兵役、租税、思想の3つにおいてサルモールの意思に従っていれば基本的に自治を認められている。ドミニオンの領内では、第4紀15年の大虐殺完了以降、基本的にマン(人)は奴隷としてしか存在を許されていないはずだったが、連合各国では特区などを作り、東帝都社などを通じて人間国家との接点という矛盾をカバーしているのだった。


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そんなわけで、アズリアン海、エルセリック海は敵対する3つの国家の緩衝地帯という危険な海域だが、一方で互いに貿易で依存しあう微妙な共生関係を保っているのだった。ストロス・エムカイの総督府・・・東帝都社の拠点が、その中心的な役割を担っており、いわば国土を持たない海の王国の首都の役割を担っていた。


内地の人間が聞いたら到底信じられないだろうが、この時代にありながら、ヘガーテ、ストロス・エムカイといったハンマーフェル諸国を中心に、キャムローン、ダガーフォールといったハイロック諸国、リランドリル、アリノールといったドミニオン諸国が、巡回航路で結ばれているのである。


船員は話を括ると、最後に付け加えた。
「ま、一言で言うと、不審船に対する示威行為ってやつさ」


この微妙な関係が成り立つには、売買の契約という名のもとに、海上での安全が保たれている必要がある。・・・そんな海域で一番嫌われるのが不審船だ。盟主ともいえる東帝都社が、その排除に本腰を入れ始めたというわけだ。


「で、お前さんはどこに運ばれる最中だったんだい?」
いま、総督府では度重なる不審船の出所、行き先を必死にになって探しているところだった。


「う~ん・・・サルモールが途中で乗り込んできて、船買い取っちゃったみたいなんだ。ここで座礁したから、どこに向かうつもりだったのかは分かんない」


「ああ。あの胸糞悪い耳長が一枚咬んでいやがるんだな、やっぱり」


「しっぽを掴ませねえんだよ、あいつら」


別の船員が付け足した。
「先週も、ヨクーダからのが一隻やられてる。レッドガードの船だ。ここを経由するはずだったらしいが・・・」


「その船はどうなったの?!」
イェアメリスが乗り出した。

今頃、キャムローン沖の海底に沈んでるさ。船員には本土やこの島の出身者もいたらしい。行く先々でそれを知らせて回るのも、おれたちの役目さ。嫌な仕事だが」


「じゃあ、ヨクーダ行きの船はもう来ないの?」


「ああ、航路の安全が確保されるまで、しばらくは運休だろうな」


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ストロス・エムカイの総督府ではかなり警戒を強めており、強硬論者の中にはアリノール航路の閉鎖を唱える者もいる。しかし、アルドメリ外しを実行してしまうと、微妙な力関係の均衡が崩れる。サマラン・ニース総括はそれは避けるべきとの判断を下していた。
代わりに、輸送に使う船を武装化したり、帝国の護衛艦をはじめからつけて、臨検拒否の姿勢を取って対策を始めた。安全には代えられないが、その分輸送のコストが上がって、沿岸諸国の外来品物価が上がり始めているらしい。


イェアメリスはアスヴァレンの顔を思い浮かべた。
ヨクーダ行きの船がないと分かった時、彼はどうするだろう? 


・・・船員たちとの情報交換のあと、イェアメリス達は町に戻ってきた。
しばらくすると、エドウィンも戻ってきて、3人は同じ卓で昼食をとりながら話していた。


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「どう、おっちゃん。ボクたち、役に立ちそう?」
ホーカーのシチューを頬張りながら、ブラッキーが尋ねる。シチューとパン、昼から食べるには豪華な食事をエドウィンに御馳走になり、少女は上機嫌だった。


「いろんなことを、進んでやってくれる者がおるというのは、実に便利なもんじゃな。助かっとるよ」
禿げあがった頭に手を置くと、彼は2人の娘を交互に見やった。
「大蜘蛛は、女子供の手に余るから・・・あの依頼は失敗かなと思っとったんじゃ。だのに、あっさり退治してくれて驚いとるよ」


「へへ~ん、後見人獲得まで頑張っちゃうからね」


「その、へへ~んついでにもう2つほど、仕事頼んでいいかね?」


「まっかしときなさい」

「・・・1つじゃないのね」


イェアメリスは元気よく答えた妹を、呆れたように見た。
「ま~た、そんなこと言って。おじさん容赦ないわよ」


「これこれ、力仕事ばかりは頼まんよ」エドウィンは真面目な顔になった。
「・・・ヨクーダの船のことは何か聞いておるかね?」


彼が話した内容は、彼女たちが港で集めた情報とほぼ同じものだ。
島内のならず者探索は行き詰まりを見せており、若干、気の緩みが見え始めていた。その一方で、島を取り囲むアズリアン海の緊張は予想以上に高まっていた。


「あの・・・沈められたって話かしら」


「そう、それだ。あの船に、カイラの兄が乗っておったようでの・・・ほら、モック村の農家の。・・・もちろん、死んだと決まったわけではないんじゃが・・・絶望的なことに変わりはない。状況を伝えてきてほしいんじゃ」


「そう・・・残念ね・・・」

あまり気持ちのいい役目ではないが、誰かが伝えなくてはならない。イェアメリスは快く受けることにした。
「それで、もう一つの仕事というのは?」


「ファイズ鉱山じゃ。ここ数日ほど、鉄鉱石の産出が止まっているんじゃ。ファーガスたち鉱夫は何も言ってよこさんので、ちょっと様子を見てきてほしいんじゃ」
エールを飲んで、一息つく。
「鍛冶屋のウンガーが心配しとってな。ほら、ならず者共のこともあるから、武器の準備が必要だということで頼んでおったのじゃが、材料が届かないらしいんじゃよ」


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「わかったわ。食べたらさっそく行ってくるわね」


「すまんの、頼りにしておるよ」




・・・




モック村を後にしたイェアメリスら2人は、街道の分岐点まで戻ってきていた。
エドウィンに頼まれた、ヨクーダ船の沈没事件を伝えた帰りだ。


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兄が消息不明になった報告を聞き、カイラは泣き崩れたが、彼女たちにはうまい励ましの言葉が浮かんでこなかった。少し重い足取りで次の目的地に向かう途中、彼女たちは巡回商人と出会って、しばし足をとめた。


商人はこれから、キルクモアの町に仕入れに行く途中らしい。
不穏な周辺海域の件、輸入品の価格高騰、ならず者の姿をまだ確認できていないことなど、彼女たちは町や港で仕入れた最新情報を伝えてやった。


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お礼にもらったキルクモア・チーズをかじりながら、2人は次の目的地に向かって歩いて向かった。


ファイズ鉱山は、ちょうど昨日彼女たちが探索した北の小島、その近くにある。小島の対岸を少し内陸に入ったあたり、山に囲まれたところに入口がある。その手前にあるのがファイズ・クライグ・・・鉱山労働者たちの村だ。


キルクモアには珍しい、内陸の村。
カンテラに入れるろうそくが減ってきていたので、彼女たちは鉱山に向かう前に、村に寄って補充することにした。小さい居住地では酒場が雑貨や、食料品、宿など大体なんでも兼ねている。そこに行けば必要なものは大体手に入るという寸法だ。


鉱山に入る準備をしているとき、イェアメリスは奥にあるテーブルに見たことのある者たちがいるのに気が付いた。本来ならばここには居ない筈の人たち。鉱山で働いているファーガスとケイラン、そしてライアン少年だった。


「あれ? ファーガスさん、今日は鉱山に入ってないの?」


たくましい腕を持つ鉱夫は、昼から酒を浴びていた。
ファーガスは島への移住者で、事故にあった兄の息子ライアンを引き取り、相棒のケイランと共に、このファイズ・クライグの鉱山を切り盛りしている。


「お~、メリスじゃねえか、こんなところに珍しい」
どんよりした目が彼女の姿を認め、声を上げたが、焦点があっているように見えない。


「おじさん、酔ってるの?」

イェアメリスは床に転がるボトルに目をしかめながら、鉱夫に尋ねた。


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「これが酔わずにいられるかよ・・・」
そう言って、テーブルに突っ伏してしまう。相棒のケイランの方はもっとひどく、床の上で鼾をかいている。・・・これでは話を聞けそうにない。


「あ、おねえちゃん!」


息子のライアンが彼女を認めて、目を輝かせた。


「ねえライアン、どういうこと? お養父さん達どうしちゃったの? まだ夜になってないじゃない。鉱山にもいかないでこんなところで飲んでいるなんて。町で心配されてるわよ」


鉱山で生産される鉄と鋼は、鍛冶屋ウンガーの手にかかり、武器や防具、建材に生まれ変わってキルクモア中で使われている。この鉱山は島の生命線の一つだった。


「行きたくても行けないんだよ」


「どういうこと?」

ライアンが説明してくれた。
数日前、いつものように村を出て鉱山に入ると、落盤が発生していて、鉄の鉱床に繋がる坑道入り口が塞がれてしまったというのだ。彼らも手をこまねいているわけではなく、岩をどけたり砕いたり、鉱夫なりのやり方で対処しているのだが、まだまだ復旧の目途は立っていない状態だった。


「おねえちゃん、見に行く? あ、そっちのおねえちゃんも」


「そうね、エドウィンさんに伝えるにしても、自分の目で見ておいたほうが良いわね」


「でもこのおっさんたち、まともに歩けそうにないよ?」
ブラッキーは飲んだくれたちを指差したが、ライアンが進み出た。


「父さんのかわりに、ボクが案内してあげる」


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ファイズ鉱山は村のすぐ近くだ。


「・・・この頃、毎日地面の下にもぐっている気がするわね」


「いわれてみればそうだね」
ブラッキーは、故郷のクロスワイチのオークの鉱山で、戦いがないときはオリハルコンの採掘を手伝っていた。そのため鉱山にはちょっと詳しかった。きょろきょろ見回しながら、内部の構造を把握しようとする。


ライアンは、手慣れた様子で2人を地下深くへと導いていった。
詰め所を通り過ぎて、奥に降りていく。坑道は埃っぽいが、奥に進むと少しひんやりしてきて、湿り気が感じられるようになってきた。


「ほら、ここだよ」


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少年が指差した先で、道が塞がれていた。
「本当はここに扉があって、鉱床に繋がっていたんだけど、崩れちゃったみたいなんだ」


「確かに、これはすぐには無理そうね・・・」


「これでも、かなり片付けたんだけどね。最後の岩が大きすぎて・・・」


ライアンによれば、坑道の奥は複雑に掘り進められ、一部は自然の洞窟とも繋がっているらしい。ブラッキーは扉をふさいでいる大岩を調べていたが、竪穴の少し上のほうに上って、下から見上げるライアンにどなった。


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「取り残された人は?」


「いないよ。僕とファーガス義父さん、ケイランさんの3人だけで仕事してたから」


「おかしいなぁ・・・なんかそこに落ちている岩、ここにあったっぽいんだけど」


「3日前、仕事終わるときにはこんなことになってなかったけど、おととい入ったらこうなってたんだ。夜の間、僕と父さんたちは村に戻って休むし・・・」
ライアンも、首をかしげている。
「そんなバランス悪い石、あったかなぁ」


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「どうかしたの? 何か問題でも?」
岩の表面に指を這わせていたイェアメリスも、興味を引かれて上を見た。


ブラッキーは2人のところに降りてくると、今度は指を立てると空気の流れを調べてみた。いつもの仕種だ。
「ちょっとだけど風があるね。奥の方で、どこか地上とつながってるんだね」


「え~、僕そんな場所見たことないよ」


「ま、人が通れる穴とは限らないから・・・ん、まって。何か聞こえたような・・・?」


「・・・あ、たまにあるんだ。トンネルを回りこんで、上の詰め所の物音や声が聞こえたりすることが。それじゃないかな。面白いよね」


「ふ~ん」


頑張ってどうにかなる状態ではなかったので、何らかの助けをエドウィンに相談することを約束すると、報告に戻ることにした。彼女たちは鉱山をあとにし、ファイズ・クライグの村の入口でライアン少年と別れた。


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「なんかあの岩、人の手で落とされたように見えたんだよね~」


「考えすぎじゃない?」


「重労働が嫌になって、わざとやったとか」


「それはないと思うけどなぁ。鉄を掘るのは確かに重労働だけど、ファーガスさん自身が始めた鉱山だから」
ファーガスは、ノースポイントとキャムローンの間にあったカラ・プラエで狩人をしていたが、仕事の口が悪くて、新生活を立ち上げるためにキルクモアに引っ越してきた男だった。


「そっかぁ・・・」


他愛もない話をしながら街道を戻る。
湧き水によってできた池を越えると、街道の合流点だ。


「今日は特に、事件らしい事件はなかったね、ねえちゃん」


ブラッキーは道端に腰かけて一息ついた。
小物入れから木の実を取り出し、寂しい口を紛らわせるために放り込む。この島特産の、最近お気に入りになったやつだ。


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「そうね、まあ、そうそう毎日事件があったら身が持たないわ。あんたを拾ってから、休まる暇もなかったから」


「な~んか、そう言う言い方って、ひどくない?」


「おあいこさま」


馬をゆっくりと歩かせる巡回兵が通り過ぎる。
島の奥地のここら辺は港と違って慌ただしさもなく、のどかそのものだ。ならず者も影も形もない。
水袋から飲み干し、立ち上がると、イェアメリスは反対側から歩いてくる人影を見つけた。


「アスヴァレンじゃない」
「あ、隊員はっけ~ん!」
ブラッキーも目ざとく気づき、手を振った。


ダンマーの錬金術師は西の方・・・キルクモアの領主が住む砦の方から歩いてきた。


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「お前たち、ここで何をしている?」


「それはこっちの台詞よ。・・・あなたが来ないから、エドウィンおじさんのお遣いをしてきたところ。今から町に帰るの」
イェアメリスは、ダンマーの手が土で汚れているのに気が付いた。
「今日も集まるって言ってなかった? 穴掘りにでも夢中になってたの?」


「すまん、朝一で素材集めたら戻ろうと思っていたのだが・・・」


「また、テルヴァンニ式集中力ってやつ?」


「茶化すな。お前たちに見せたいものがあるんだ」


そういうと、アスヴァレンは彼女たちを手招きした。砦の方角だ。
町に帰る向きとは逆方向だが、ここは小さな島だ、多少の寄り道をしても大した時間にはならない。2人は錬金術師について、街道を逆に歩き始めた。


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程なく、領主の砦が見えてきた。
キルクモアの居住地からは少し離れた、西のはずれ、海にほど近い崖の上に砦は建っている。
辺境の小島ゆえ、砦というよりは大きめの塔と言った方が近かったかもしれないが、一応城壁を備えている。ハイロック全土で、一番西に位置する砦だ。


領主であるロデヴィル3世はノースポイント王族の一人で、代々この領地を継承してきた一族の末裔だった。


「まさか、お城に入ろうっていうんじゃないでしょうね?」


「ん? 城には用はない。こっちだ」


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アスヴァレンは左に折れると、草をかき分けて、城門から少し離れた崖のふちを、裏手の方に回っていった。
城壁上の兵士が不審そうに見下ろしたが、3人の中の一人をイェアメリスと認めると、特に咎めるでもなく持ち場に戻っていった。


「こんなところで何しようっていうの? 怪しまれてたわよ」
イェアメリスはぶつぶつ言いながら付いていったが、アスヴァレンが足を止めると「あっ」と声を上げた。


砦の裏手、城壁の陰になる場所に、石柱が立っていた。
昨日見つけたものと同じ、日時計だ。


「これって・・・!」


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「うむ。数日前に見つけた石柱だ。・・・その時は気にも留めなかったが、昨日のあれを思い出してな・・・」


「ということは・・・」
ブラッキーが進み出て、石柱の間を見る。すでにアスヴァレンが草土をどかしており、少女の想像通りのものが顔をのぞかせていた。
「やっぱりある!」落し蓋だ。


今度は躊躇なく開ける。
3人は、昨日見つけた北の小島の地下室とそっくりの部屋に降りたった。


「ここにも・・・」


壁の一つが発光している。

イェアメリスは壁の感触を確かめるように手を差し伸べる。同じだ。

伸ばした腕はすんなりと壁の向こうに飲み込まれた。


「もう入ってみたの?」


「ああ、同じだった。見てみるといい」


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仕掛けも配置も、昨日の地下室と同じだ。
それ以上の収穫を得ることもできなかったが、アスヴァレンは何メモを取っているようだ。


「風邪でも引いたかしら・・・」イェアメリスは寒気を感じて、自分で自分の肩を抱いた。「最近疲れているのか、やたら眠いのよね・・・」


2つめの謎の装置を前にして、彼女はつぶやいた。
無意識にアスヴァレンにもたれかかる。


地上に戻ると3人は、他のものに見つかりにくいように、落し蓋を埋め戻した。
日は西に傾きかけている。イェアメリスはそろそろ戻ることを提案しようとしたとき、アスヴァレンが驚くべきことを言った。


「実は、もう一つ見つけた」


イェアメリスとブラッキーは目を見合わせた。


「なんですって?!」


「島の南だ。お前の小屋から下ると、浜辺に出るだろう。そのはずれだ」


「前に小舟を見つけた辺りかしら。そんなところ、あったかなぁ・・・?」


「行ってみるか?」


「そうね。また遠回りになるけど、このまま下っていきましょ」


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領主の砦の裏は崖だ。岩棚を伝っていけば下まで降りることができる。

3人は砦の裏手の磯に降り、海岸線に沿って最後の移動を始めた。




・・・




1時間と少し歩いて、彼女たちは南の浜辺に到着した。
浜から少し上がった丘陵に、アスヴァレンの言う石柱が並んでいる。


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最初に見つけたもの、2番目のものと全く同じ配列だ。地下室があるところも同じ。
念のために降りてみたが、内部の構造も寸分たがわず同じだった。
アスヴァレンはまた何かメモを取っているが、何がそんなに面白いんだろう。


イェアメリスとブラッキーにはもはや、最初の頃の興奮や感動は無くなっていた。半分マンネリになってきて、イェアメリスなどは光の壁を通り抜けもせず、地下室の側から顔だけ出して観察する手の抜き様だ。


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「こっち来たらどうだ?」


「もういいわ。ここくぐると、なんだかとても疲れる気がするの。あなたたちは平気なの?」


ブラッキーは、しんどそうな姉を見ると、部屋に戻るようアスヴァレンをついて促した。
「ボクらは全然平気だけど、ねえちゃんちょっと顔色悪いね。もう戻ったほうが良いよ」


「そうね、ごめんなさい。ちょっと今日は歩き過ぎたかしら」


「メリスねえちゃん、やっぱり風邪ひいたんじゃない?」
ブラッキーは姉に寄り添って支えようとしたが、イェアメリスは大丈夫、と一人で落し蓋に上り、地上に這い上がった。


「昨日だれかさんに散々脱がされたから、風邪引いたのかも・・・」
彼女は言ったはいいが、いつもの元気がなく弱々しく笑う感じにしか見えなかった。


「今日はすごいね。ボクら島を一周してるよ。そりゃ疲れるわけだ」


「そうね・・・ちょっと休むわ。それから家に帰りましょ」


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イェアメリスは2人から少し離れたところで、海を眺めるように、座り込んだ。
それを見てブラッキーも、手近の石柱を背にして座り込む。アスヴァレンはまだ何か書き物をしている。
ちょうど日没の時間。太陽は遠くヨクーダの方角に沈んでゆく最中だった。


ブラッキーは、すぐそばで長い影を伸ばすダンマーを見上げた。
「あんちゃん、研究熱心なのはいいけど、時々損してるよ」


アスヴァレンはパタンと大きな音を立てて、メモを閉じ、横に座った。
「ん? ブラッキー。何か発見したのか?」


少女はため息をつくと、海の方を指差した。
「ふぅ・・・違うって。せっかくこんなに綺麗な夕日なのに、見逃しちゃうでしょ」


「ん? ああ・・・」
余り気にかけていない生返事が帰ってきた。


「それとも、もう見飽きるほど見てきてるのかな?」
話しかけるとも、独り言とも取れる呟きだ。


「・・・200年も生きるって、どんな感じなんだろ。そういう人から見たら、一瞬一瞬の出来事なんて、気にも留めないものなのかなって」


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アスヴァレンは少し興味をひかれたように、横に座る少女を見た。

「どういう意味だ?」


「あんちゃんとは違う意味で、ボクは周りを見てこなかったんだ」


ダンマーの返事を待たず、ブラッキーはひとりごとを続けた。
「ボクは孤児だって言ったよね。・・・拾ってくれたオークたちは、親とはぐれて泣いているボクを見つけて保護したっていうんだけど。わかるんだ。はぐれたんじゃなくて、置き去りにされたんだよ」


口減らしのために子供を売ったり置き去りにしたりする、この時代、寒村などでは別に珍しくない光景だった。・・・尤も、珍しくないというだけで、その境遇に見舞われた子供たちの運命は過酷なものであったが。


「とにかく生きることに必死だったから、・・・役に立つところを見せなくちゃならなかったし、それは戦士になってからも同じだった。たぶん、この先もね。でも・・・ここにきて、ねえちゃんやあんちゃんと会って、ちょっと一息ついたら、急に怖くなったんだ」


「怖い?」


「うん。ボクこのままじゃ、オークでなくなっちゃう」
ブラッキーは遠くを見た。


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「あんちゃん物知りだから知ってると思うけど、オークは短命なんだ。マラキャスの掟に従いながら、常に名誉のある死に場所を求めてる。戦うのは嫌いじゃない・・・弱肉強食で単純なのはむしろボクは好きだけど。あと長くて数十年、短ければすぐにどこかの戦いで命を落とすかもしれないよね」
ブラッキーは引っこ抜いた草の束を、宙に放ってみせた。


「もしかしたらこの前溺れ死んでいたかもしれないし、下手すれば、魂石に入れられちゃったり、もっとひどい終わり方も考えられるよね。・・・いずれにせよ、ボクの存在はハイ、そこで終わり」


「生きるために生きて、何もしないまま終わっちゃうのかな、って考えたら怖くなったんだ。今までそんなこと考えたこともなかったのに」

少女は自分の心に問いかけるように、確かめるようにそう言ったのだった。


「あんちゃんは、自分が死ぬことなんて全くこれっぽっちも考えてないでしょ? 毎日を自分のために、したいことのために生きてる」


「・・・どう答えたらよいのか困る質問だな。確かに否定はすまい」


「責めてるわけじゃないよ。研究だか何だか知らないけど、そのためだけに向かって、他は無視・・・というか気にしてないだけかな。生きるためだけを考えて他の事全く見てこなかったボクと、境遇は逆だけど、周り見てないってとこは、すごい似てるなって・・・」


「あ、ごめんねあんちゃん。僕なんかよりもはるかに長く生きてるから、いろいろ見てきてないわけないか。失礼な言い方だったね。怒った?」ブラッキーは笑いながら、思いつくままの持論を撤回した。


「ふっ・・・」


アスヴァレンは薄く笑うと、少し遠くを見る目になった。


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「俺もな、ここ数日、お前やメリスと関わるようになって、違和感を感じていた」
珍しい独白に、ブラッキーもアスヴァレンを見返した。


「どういうこと?」


「俺はダンマーとノルドの混血、マンマーだ。幸いにして、寿命の方はマーの血が濃く出たようで、いまだにこうやって生きているわけだが、魂はマンの方を受け継いだのかもしれん。」


「それって、爺臭いってこと?」


「ひどい言い様だが・・・、まあそうだ」
アスヴァレンは、つい最近思い出したネロスとの遠征、自分が若かったころ、まだ血が滾り、心が熱かったころのことをかいつまんで語った。


「そんな時期もあったんだね」


「魂が老いているのかもしれん。生きてみて分かったが、人の心は数百年もの出来事に耐えられるようには出来ていないようだ。ここにいるのは研究心だけの抜け殻かもしれん」


「そんなことないよ。あんちゃん見かけも心もまだまだいけるよ」

ブラッキーは首をぶんぶん振った。
「鼻息荒かったころもあったんでしょ? 忘れてるだけだよ」そしてにやりと笑う。


「・・・そんなジジイがヨクーダくんだりまで、素材集めに旅してこないって」


「ふむ・・・」

アスヴァレンはしばし考え込むように、黙り込んだ。
ブラッキーは彼が口を開くのを、じっと待った。


「本当に恐ろしい爺々もまあ、居るがな・・・」


そういいかけて、彼は気がついたように頷いた。
「そうか・・・マスター・ネロスが偉大なのは、俺よりもはるかに年上だからというからではなく、見かけと違う、若い心・・・老いることのないものを持っているからなのだろうな・・・」


「あ、メリスのおじいさんだね」


「いい例が見つかったはいいが・・・若いと言ってもな・・・しかし・・・、鼻息荒い俺を想像できるか?」
アスヴァレンもつられて、にやりと笑った。


「あはは、そうだね。まあ、どっちかというと、あんちゃんは澄ましている方がかっこいいね」
「・・・メリスねえちゃんをもっと振り回してやればいいよ」


「メリスと何か関係あるか?」


「あはは・・・ダメダメだね。あんちゃんにはもうちょっと、魂のリハビリが必要だよ。」

ブラッキーはそう言うとまた笑った。


「ところで・・・え~っとね。怖くなっちゃったのも確かだけど、逆に楽しいこともできたんだ。そう・・・、ボクはしたいことができたの」

まっすぐアスヴァレンを見つめてくる。いつもなら避けているところだが、彼も応えて見返した。


「この島でちょっと休んだら、旅に出るよ。話に聞くセロって人にもあってみたいし。自分の目でも、もっといろいろなところを見てみたい。生きるためじゃなくて、自分のためにね」


「確かにこの世界は決して生き易い場所ではない」
アスヴァレンは少し溜めてつづけた。「だが・・・お前はまだ若い。勇敢で力もあり、生き抜くすべを心得ている。しかも今は何ものにも縛られていない。恐れる必要があるか?」


「できるかな?」


「できるさ」


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ブラッキーは少し照れくさそうに、付け加えた。
「あ、こんなこと言ったのはねえちゃんには内緒だからね。代わりにあんちゃんのジジイ観も黙っといてあげるから」


「うむ・・・、その・・・もう少しましな表現を探してくれ」


「ムリムリ・・・ボクは何だっけ?あれ・・・そうそう、ガクモンの徒?じゃないから。思ったことを知ってる言葉で口に出すだけさ」


どうやら日が落ちたようだ。
陽が消えると、草のこすれる音、虫の音が目立ち始める。
ブラッキーは話題を変えるように、伸びをした。


「それにしても・・・セロって、すっごく強くて、有名な傭兵なんでしょ? ねえちゃん、せっかくその人に育てられたんだったら、戦い方教えてもらえばよかったのに。勿体ないよね」


「それに関しては同感だな」


「しばらくこの島にいたら、またメリスねえちゃんのところに来るかな?」


「かもしれんが、数年後かも知れんぞ」


「う~ん・・・やっぱり自分で探す方が早いかな、旅だね、旅」


ブラッキーは立ち上がると、浜辺の方に一人離れているイェアメリスに目を向けた。
「さて・・・と。ねえちゃん、そろそろ帰ろう」


「ねえちゃん?」


返事がない。


ブラッキーは慌てて駆け寄った。
イェアメリスは、座っていられずに、砂の上に横たわっていた。息が少し荒い


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「ねえちゃん? ・・・! 大変だ、すごい熱だ!」


アスヴァレンも駆け寄ってくる。額に手を当てると、かなりの熱であった。


「とりあえず、小屋まで運ばなくっちゃ」


「俺が背負おう。荷物の方を頼めるか?」


「うん。急いで!」


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アスヴァレンはぐったりとしたイェアメリスを抱えると、日の落ちた浜辺を小屋に向かって歩き始めた。




(つづく・・・)






※使用mod


・カイラに訃報を届けるくだりは、modに含まれているクエストの中の一つをそのまま利用しました。

 また、鉱山の様子を調べるのもmodクエストです(本来は坑道の魔物退治がクエストですが、本RPでは内容を変更しています)


・Men of Winter - Neloth ・・・前回紹介し忘れた、ネロスのリプレイサーです。カッコイイ!


・Summerset Isle ・・・アリノールの空中宮殿はこのmodで訪れることができます。
 新鮮な緑と太陽の島で、小クエスト群も実装されています。

・(WIP alpha) Nafaalilargus - Visit the Island of Stros M'kai  ・・・ストロス・エムカイの地形を追加するmod
 ロケーションとして見どころがいっぱい詰まってます。

・謎の装置は、skyrim本編に含まれるリソースを組み合わせてあの形にしています^^
 Jaxon's Positioner すげ~( ゚Д゚)


・KNN Headtracking ・・・会話中に相手の方向を向くmod
 SSのセッティングを邪魔されちゃうこともありますが、普段の何気ないシーンが自然になるので、プレイにもSSにもお勧めです。


・Female Facial Animation ・・・NPC女性が表情豊かになります
 ↑のmodやFace to Face Conversationと併せて使うと、いい感じに^^


・Mead Quantum ・・・何やら危険そうな飲み物ですね~w
 ボトルがきれいなので、アクセントに出しちゃいました^^;
 ちなみに、ゲーム中では”放射性飲料”というふざけた名前に訳して遊んでますw



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2 Comments

Nadia  

Nadiaでございますଘ(੭ˊ꒳​ˋ)੭✧

Nadiaでございますぅଘ(੭ˊ꒳​ˋ)੭✧
眠れないので、途中までだったのを一気読みฅ(๑*д*๑)ฅ!!
キルクモアは小さい島なりにトラブルがイッパイありそう(⊙◞౪◟⊙)
ナディアはやっぱりあの不可解な装置が気になるのだ( •᷄⌓•᷅ )??
メリスちゃんは通れるけど、後の2人は石が無いと通れない。しかも島の三点に入口があるφ(`д´)カキカキ...っと
名探偵っすか?ナディアちゃんもこの謎に迫るのだ(´◉ω◉`)
(∂ω∂)ムムムっ!
きっとクマキチくんが、犯人に違いない(⊙◞౪◟⊙)ギョキョ
っとおフザケはここまでなのだଘ(੭ˊ꒳​ˋ)੭✧
マスター・ネロスはきっとココに来ているのだ(∂ω∂)
キルクモアには来た事は無いけど、この装置で何かをする為に...
でもどうやって?
ナディアは解ってしまったのだ(∂ω∂)!
問題なのは、光る壁の向こう側が、いったい何処なのか?
なのだ(∂ω∂)フフフ
そしてあの装置は、メリスちゃんを改造する為の(ꉺ▿ꉺ)キャーーーー!
っと、勝手に解釈してしまいましたが、カナリ適当でございますm(_ _;)m
次回を楽しみにしておりますなのだ
ଘ(੭ˊ꒳​ˋ)੭✧

2016/12/28 (Wed) 04:56 | EDIT | REPLY |   

もきゅ  

あけました~

Nadiaさん、あけましておめでとうございます~。
コメントバック遅くなってすいません(。。)

意外とボリュームあるでしょ?w
今の時点でだいたい23万5000文字ぐらいあるんですよ~。
原稿用紙だと580枚、文庫本だと350ページなのでちょうど1冊分ぐらいですね^^
次の話書くのに多少読み返すんですけど、この時間も結構馬鹿にならなかったりします。
しかも読むと手直ししたくなるところいっぱいで、ぐっと我慢しながらw

ナディアさんのところは群像・戦記物になっていて、それぞれの場面の理由付けがしっかりしているので、楽しませていただいてます^^ それにキャラの扱いが自分がスカイリムやったときの肩入れの仕方と真逆なので、そこもいつも楽しみにしてます(*≧∪≦)

ネロスさん・・・の出番はもちろんあるんだけど、3部ぐらいかな~^^;
どこかで書いたかもしれないけど、昔ながらのハイ・ファンタジーの外伝ぐらいのボリュームで、今風の読みやすさに仕上げられたらいいな~と考えてます。

1部はそろそろ伏線回収~2部へのフラグ立てに向かって加速させていきたいと思ってます。
またお付き合いいただけたら嬉しいです(*´ω`*)

2017/01/04 (Wed) 21:00 | EDIT | REPLY |   

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